疑いの目6
「さすがに俺の部屋なら、誰に見られる心配もないし、あいつも追ってこられないだろ」
「確かに、それはそうだけど……」
それって……
いやいや、私の考えすぎ!?
……だよね?
これはただ人目を避けるため。
『誰に見られる心配もないし』って言ってるんだし!きっと、それだけの理由!
……きっと……
そう、深い意味なんて……ない、はず……
そう言い聞かせてから目を上げると、熱を宿したダリウスの瞳が視界に入る。
その一瞬に、胸がドキっと跳ねた。
ほ……本当に……?
もし、万が一の事があったら……
『滅ぼしの子』――
一万年以上前、天使と悪魔が愛し合い、関係を持ったせいでこの世に生まれ落ちたとされる、禁忌の存在。
でも、詳しい記述はどこにも残っていない。
天界で当たり前みたいに語り継がれるその話を肯定することはできないけど、それと同じように完全に否定も出来ない。
だからこそ……
一線を越えるような可能性は、避けるべきだわ。
私は断るつもりで彼を見た。
すると、まっすぐな視線が突き刺さる。
彼は私の頬にそっと触れた。
「リシェル……こんなふうに、ずっと離れたままなんて、もう耐えられそうにない」
ダリウスの苦しげに掠れた声に、ぐっと胸が苦しくなった。
ルヴェルが言った『諦めない』という言葉は、本気だった。
ダリウスと付き合ってはいないけど、良い感じだと思ってるんだろう。
だから、必死になって引き離そうと……
このままだと、次はいつダリウスと会えるかも分からない。
そんなの……私も耐えられない。
そう思った瞬間、私は静かに頷いてしまった。
「私も……だよ……」
心臓がうるさいくらいに鳴ってる。
戸惑いも、葛藤も、不安も、酷いくらいに全部あった。
けど――この気持ちは、もう止められなかった。
「もう、離れたままなんて……嫌……」
そう言った後も、本当にそれでいいのかと、何度も何度も自分に問いかけた。
そしてその度に、『大丈夫』と、根拠のない言い訳のようなものを自分に向けて吐き続けた。
…………
……
次は『許されぬ恋のはじまり~序章~』です(^^)/




