秘密の関係12
「……きっと、さっき変な感じであの場を去ったから、心配しているのかもしれないし……」
「いいだろ。心配させとけ」
「よくないよ!それに、二人して居ないと、ルヴェルに余計に怪しまれるよ?とりあえず私だけ先に出るから、あとからダリウスは上手く抜け出……えっ!?」
その手を振り払おうとした瞬間、両手首を強く掴まれた。
次の瞬間、背中が壁に押し付けられる。
「なっ……何して……っ!」
私は思わず小声で叫んで目を大きくする。
ダリウスは私の両手を束ねるように掴むと、私の頭上で固定した。
強引な行動に驚いていると、ダリウスの顔が目の前に迫ってきて――
唇が重なった。
「……んっ!?」
目を見開いたまま、私はただ息を呑む。
視界いっぱいに映るのは――さっきと同じ色。
焼けるような、独占欲の熱だった。
「んぅ……!」
ドアのすぐ向こうにルヴェルがいる。
なのに、こんなこと……!
「リシェルー?」
ルヴェルの声が聞こえる。
横目でちらりと見えたすりガラスに、ルヴェルの影が映ってドキっと胸が鳴る。
さっき『バレたらダメな事は分かってる』って、言ってくれたところなのに……っ!!なんでこうなってるのよ!
そんな事を心の中で叫んだ時、ダリウスが低く囁いた。
「あいつを見るな」
直後、目元を片手で塞がれ、視界が真っ暗になった。
そして、またもや唇を塞がれる。
すぐに唇を割るように舌が侵入してくる。
舌が熱く、ぬめった感触が、口内の奥深くまで蹂躙する。
息までも奪われるのではないかと、不安に思うほどの激しいキス。
こんな深いキスなんて初めてで、戸惑いが隠せない。
「んっ……んぅっ……!」
絡み合う舌先。
水音が、静かな室内に響いて、恥ずかしくて頭が沸騰しそうになる。
息が上がる。
思考までも溶かされていく。
「本当に、どこに行ったんだろ?医務室にも居なかったし……」
再びルヴェルの声が、今にもドアを開けそうな距離で聞こえてくる。
あまりの近さに、ビクっと体が震えた。
すると唇が離れ、小さく舌打ちが聞こえた。
続いて、耳元に息を落とすように囁かれる。
「……お前は、俺の事だけ考えてろ」
「ダリウス……。離して。ルヴェルがもしドアを開けたら……っ!」
「ルヴェルルヴェルって、煩いんだよ!」
そして、再び唇が塞がれる。
今度は、さらに深く、容赦ない熱が押し寄せてきた。
「……ふっ……っ」
どうしよう……
『ドアを開けられたら一巻の終わり』なのに……
そんな不安に押しつぶされそうになった時、膝が割られるような感覚がした。
「……っ!?」




