秘密の関係9
心臓が跳ねる。
「そ……そんなの、バレたらダメだから言ったに決まってるでしょ?」
私の言葉に、ダリウスが少し目を細めた。
「あいつは、お前の事が好きだって言ったよな?なのに、俺らの関係を言うなってか?」
「当たり前でしょ?私達は天使と悪魔なんだから!」
「ふざけんなよ!お前がそんなんだったら、今からでもここで全員にバラす!」
ダリウスは忌々《いまいま》しげに舌打ちし、部屋の一角を指差した。
その先にあったのは――マイク。
次の瞬間、全身から血の気が引いた。
「ま、まさか……ここって……!」
よく見ると、マイクの周囲にはダイヤルやスイッチが並ぶ操作パネルがあって、壁には注意書きのプレートも貼られている。
初めて入った部屋だけど、さすがに分かる。
ここは――放送室だ。
「なっ……!何言ってるの!?冗談でしょ!?」
「冗談な訳ないだろ。二度とルヴェルみたいな奴が寄ってこないよう、お前が誰のものかちゃんと……」
パシッ
マイクに向かおうとしたダリウスの頬を、私は迷わず打った。
ダリウスは驚いた表情をしている。
それでも、私は構わず声を張り上げた。
「馬鹿な事言わないで!!そんなことしたら、私たちだけじゃなくて家族だってどうなるか分からないのよ!?」
私の言葉に、ハッとしたように目を見開いただダリウス。
「そう………………だな」
そう呟くと、苦しげに視線を逸らした。
「……十分分かっていたのにな……。こんな事したら、お前の立場だって危うくなるってのも……」
悔しそうに眉を寄せると、私に目を戻す。
「悪かった……」
「ダリウス……」
「分かってても……止められなかった。お前がルヴェルに取られるかもって思った瞬間、頭ん中が真っ白になった」
悩ましげに額に手を当てると、ダリウスは再び口を開けた。
「俺はリシェルと居れるのなら、俺の家紋に傷がつくなんて……正直どうでもいいと思ってる。けど、お前の立場まで危うくなるのだけは絶対に避けたい。だからこそ、今までずっと我慢していた」
ダリウスは悔し気に奥歯を噛んだ。
「お前が俺以外の男と話してる時も……俺の周りの奴らが、お前を『可愛い』と話す時も、ずっと……ずっと……」
ダリウスは静かに息を吐く。
「俺、どんな時でも冷静に対応できる悪魔だと思っていた。けど……お前のことになると……ほんと駄目みたいだ。どうにもならなくなる。
毎日毎日、学院中の男どもに、『リシェルは俺の女だ!』って叫び周りたくなる」
ダリウスはその場でしゃがむと、髪をグシャっと掴む。




