表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【大賞作家】天使と悪魔が交われば、世界が滅ぶ。それでも、1万年越しの愛を貫く。  作者: 花澄そう
ダリウスって何者!?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/119

ダリウスって何者!?4

「そんな事をしたら、お前の命がいくつあっても足りなくなる」



 リシェルが俺の言葉を聞いた途端、キョトンとした顔を向けてくるから驚いた。

 おい、首席候補がそれで大丈夫かよ……



「あの夜のこと、忘れてないよな?」

「書庫で影に襲われたこと?」


「ああ……あれは偶然なんかじゃない。

 犯人は、疑いの目を向けるお前をうとましく思って、口封じしようとしたんだろう。

 上級天使が犯人なら、そう捉えるのが一番自然だ」


 リシェルは俺の言葉に、悔し気に眉をひそめた。


 分かってはいるが、認めたくなかったという感じか。

『正義』を重んじる天使が、罪のない天使を狙った挙句、えん罪を疑うリシェルの命を狙ったんだしな。そうなるのも無理はないんだろう。



 ああ、そうだ。

「その刺客の事なんだけど……あれは、術式で出された刺客だと思う」

「……えっ」


「お前が襲われたあと、俺なりに記憶の整理をして気付いたんだ。寮からお前の姿が見えた時は、後ろに影なんて付いてなかったって」

「えぇ!?じゃあ、途中から現れたってこと?」

「だな。俺の記憶だと……術式制限エリアを抜けたあたりから、ふっと影が現れたように見えた」


 リシェルは、俺の言葉に目を大きくする。



 寮の敷地内には、術式の使用を制限する結界が張られている。

 術式を使う理由なんて日常じゃほとんどないし、それよりも余計なトラブルを防ぐ方が大事だってことで、学院が制限をかけているらしい。




「み、見間違いとかじゃないないよね?」

「ないと思うが……だとしても、あの影は生きている奴じゃなかった」


 操っている誰かが、あの時すぐ傍にいたはず――



「なんでそんな事が分かるの?暗くてよく見えなかったのに」

 そう聞かれて、『しまった』という文字が浮かぶ。



「……えっ。あー」

 つい口が滑ってしまった。

 不思議そうな碧い目が向き、俺は思わず目を逸らす。


「刺し返した時に、刺した感覚が酷く薄かったんだ。それに、血すら出てなかっただろ」

 咄嗟にそれらしいことを口にすると、「確かに……」と納得したようだった。


 俺は心の中でホッとため息をつく。



「とにかく、もしお前に危険が及ばなかったとしても、その方法だと上手くいくとは思えない」

「どうして?」


「本当に犯人なら、素直に真実なんて言うわけがない。巧妙こうみょうに隠すに決まってる。

 しかも相手は上級天使だ。立場も金もある。アリバイなんていくらでも用意できる。それを、俺ら素人がどうやって見破るっていうんだ?」


「そ、そうだよね……」



 リシェルは手元のメモをぎゅっと握りしめ、視線を伏せたまま沈黙した。



 その様子を見つめながら、俺は心の中であの事件の日のことを思い返し始めた。







 事件があった頃、俺は他の悪魔の生徒たちと食堂へ向かうところだった。




 外から聞こえる騒がしさに気付き、ふと窓の外を見ると、中庭のあたりに人だかりができているのが目に入った。




 嫌な予感がして出向くと、前も同じ学校だった小柄な悪魔、ポルトが話しかけて来た。




「ダリウス!」



 ポルトは、本来なら俺らが通うような学校に通える身分じゃないが、努力を重ね、知識と魔法の実力でここまでのし上がってきた珍しい悪魔だ。

 昔は身分や小さな体のせいで虐められもしたが、俺と親しくなってからはそんなことはなくなった。




「なんの騒ぎだ?」


「それが、よく分からないんだ。検証班達が悪魔は絶対通るなって、通してくれなくて……」




「は?検証班?」


 見ると、検証班の服を着た天使らが出口に光の壁を張り、立ち入りを制限していた。





 そんな時――


「待ってください!」


 リシェルの声が光の壁の奥にいる、天使たちの中から響いた。




 目をやると、沢山の天使たちに囲まれながらも、怯まず立ち向かうリシェルの姿。


 リシェルの足元には天使の生徒が倒れていて、検証班が魔法のようなものをかけていた。




 ――何が起きたんだ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ