ダリウスって何者!?2
本当の犯人は別にいる。
そしてそれは、上級天使。
衝撃的な事実に心が追いつかない。
ふと目をやると、ダリウスが妙に落ち着いていて、それが不思議に思った。
「ダリウスは、驚かないの?」
「ん?」
「犯人が天使だったって、はっきりしたのよ!?無実の悪魔が、処刑されてたって分かったのに、なんでそんなに落ち着いていられるの?」
彼は顎に手を当てながら、軽く考えるように視線を上げる。
「……ある程度は予想通りだったしな」
その声が妙に落ち着いていて、かえって怖かった。
予想通りって……仲間である悪魔を庇護したくなる気持ちから来たのかな?
それなら最初から、犯人が悪魔じゃないって思ってたってことだよね。
「ふぅん……」
ダリウスは顎に手を当てたまま本に目をやっている。
「この術式の内容をちゃんと読んだか?」
「ううん」
私は首を振った。
以前の私は、『天使しか使えない術式』という衝撃の事実に気が動転し、慌ててここを飛び出した。
だから詳しい内容なんて読む余裕はなかった。
ダリウスは指先である一文をなぞる。
「この術式は『浄化の術』らしい」
「浄化?じゃあ、なんで彼女は気を失ったままなの?」
「それは分からない。でも……」
ダリウスはページに目を戻すと、静かに本文を読み上げ始める。
「浄化の術式の使用には注意が必要。なぜなら、出力が強すぎると――対象を焼き払う効果が出てしまう為」
「……えっ?焼き払うって……まさかっ!!」
私は信じられない気持ちで口元を覆った。
「制御が難しいがゆえに被害者が出てしまい、近年は、効果が少ないが安全に使用できる術式を使用するようになって来た……と記載がある。ここにある日付は何百年も前のものだな」
「それって……、彼女の服や周りに少し焦げた跡があったのって、もしかして……」
「多分、出力が強すぎたんだろう。ってことは、高出力を出せる上級天使が犯人ということになるな」
「何のために、そんな古い浄化の術式なんて使ったのかしら」
「……さあな。何か狙いがあったんだろうな。偶然じゃありえない。それに、こんな古い術式を知ってる奴も限られてそうだな」
「そう、よね……」
ここを出入りできるのは、基本的に天界の政治に携わる天使と、教授や著名人のみだと思うけど、私みたいに許可があれば入る事は可能。
一体誰が……
その時、ダリウスはハッと顔を上げ、ドアの方を向いた。
「……どうしたの?」
そんな動きにドキッとしてしまう。




