ダリウスって何者!?1
悪魔は絶対に立ち入れない、天界禁書庫。
その場に――堂々たる態度のダリウスが立っていた。
しかも手には、例の旧式術式の本まで……
……なんでこうなった!?
遡ること数時間前――
休日の朝、私はダリウスと裏庭で待ち合わせをしていた。
そこに現れたのは、金属音をチャラッと鳴らしながら登場するダリウス。
「おはよう」
手には、どこかで見たような……鍵?
「お、おは……」と返しつつ目を凝らした私は、思わずダリウスの手を掴み上げた。
「えぇ!?こ、これ!!」
「ああ、取ってきた」
ダリウスは後頭部をかきながら、まるで散歩帰りのように言う。
「とととと、取ってきたって……!これ、天界書庫の鍵じゃない!!」
「おい、声がでかい。誰かに聞かれたらどうするんだ」
その言葉に、私は慌てて口に手を当てた。
そして今に至る、というわけなんだけど……
ダリウスが『実家から鍵を取ってきた』って言っていたけど、そんなの誰が信じるっていうのよ!?
私がこの書庫に入る時だって、お父様の推薦と許可を得て、やっと足を踏み入れられた場所なのに!
しかも魔界じゃなく、天界の書庫なのよ!?
でも、ダリウスにはいくら聞いても『家にあったんだよ』って、全然本当の事を教えてくれない。
私は納得出来ない気持ちのまま口を尖らせると、ふと窓に淡く映る私達の姿が目に入り、ゴクリと唾を飲んだ。
運よく誰ともすれ違わずにここまでこれたけど……この状況が誰かにバレたら、どんな言い訳をしても私まで共犯扱いされてしまうわ。
ゾクっとする想像をしていた時、ダリウスが旧式術式の本を手に取った。
「これが、本物かどうか分からないって言ってた、例の本か……」
「う、うん」
ダリウスがパラっと数ページめくると、平然と呟いた。
「……この本は、正真正銘本物だな」
「えっ!?どうしてわかるの?」
ここに保管されている本だっていうのもあるだろうけど……そんな事だけで断言するのは難しいはず。
ダリウスは、背表紙にある金色の印を指差す。
「ここ」
「ここ?」
私はその印をのぞき込む。
「機密書庫に収められてる書物には、この印が押される決まりなんだ」
へぇ……そんなのがあるんだ。知らなかった。
「それと……」
ダリウスはパラっとページをめくり、裏表紙の右下にある赤い印を指差す。
「ここにもあるだろ」
赤い印を指差しながら、ダリウスは言った。
「これは天界が管理している証だ。イタズラで置かれた本じゃない。――だから、書いてある事に嘘偽りはない」
ということは……本当に、悪魔がやったんじゃなかったんだ……




