忍び寄る影3
しかも、そんな前から!?
なんで私、全く気付かなかったの!?
指先の温度まで一気に下がっていく感じがした。
「気になってついて来てみたら……案の定、これだ」
ダリウスは呆れたように言う。
「で?こんな夜遅くに何してたんだ?」
ダリウスから、まるで今から尋問するかのような視線が飛んでくる。
「……し、調べものを……」
「は?こんな時間に?」
「最近、視線が痛くて……」
私がそう答えると、彼は眉をひそめた。
「視線が痛い?なんでだ?」
やっぱり知らないんだ。
私が、孤立している事……
天使や悪魔に事件当時のことを聞き回るうち、気づいてしまった。
天使たちの間では、私が『悪魔を庇っている』という噂だけが勝手に広がっていることを。
けれど、術式の記事を見つけたことまでは知られていない。
事件のせいで悪魔からも距離を置かれるようになったけど、天使側で流れている噂は悪魔には伝わっていないようだった。
それはきっと、教室も食堂も寮も、何から何まで分けられてしまったせい。その壁が、噂すら遮っているのかもしれない。
「……まぁいい。でもな、こんな時間に一人で出歩くのはもうやめろ」
「どうして?」
「こんな風に狙われるってことは、お前は何かで目をつけられてるんだろ」
やっぱりそうよね。
でも、心当たりは全くないんだけど。
一体、誰が……
「術式を調べてたのか?」
彼の言葉に、私は驚いて顔を上げた。
「なんで知ってるの!?」
そう口にしてしまった瞬間、慌てて口に手を当てる。
でも、彼は、「バレバレだ」と言って私の手元のメモを指先で弾いた。
視線を落とすと、あの時に見た術式の図や状況を、自分なりに書き残したメモが目に入った。
自分の二重のミスにサーッと血の気が引く。




