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【大賞作家】天使と悪魔が交われば、世界が滅ぶ。それでも、1万年越しの愛を貫く。  作者: 花澄そう
先入観

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33/120

先入観?3

 

 処刑の時、『やはり術式も悪魔のもので間違いなかった!』って言っていたけど……



「術式?」

 彼は少し考えるように眉をひそめた。


「確か、『風の悪魔術式で間違いないだろう』って結論だったはずだ。それがどうした?」


「えっ……! なんで!?」

 あの時、違う箇所を明確に伝えたのに!


「確か、君は違うって言ってたんだよね。確かに、俺も少し形が違う所はあったようには見えた。でも、ベースはどう見ても悪魔の術式だから、どちらにしても悪魔の物には間違いない。

 それに、あの青年が一人であの場に向かうところを見たと言う者が何人もいた。そしてあの青年以外、あの場に行った悪魔は者はいない」


「でも、彼は否定していたわ」

「犯人は皆自分のしたことを否定するもんなんだよ。すんなり認める奴なんていない」


 それでも……

 だとして、認めてもいないのに命まで奪うなんて……!!



 でも、ここで彼に反論しても、意味なんてない。

 彼に決定権もないし、あの悪魔も戻ってはこないんだから。



「……そう、なんですね。教えてくださって、ありがとうございました」

 私は頭を下げると、その場を離れた。



 …………


 ……



 私は、静かな庭でキラキラと星が輝く夜空を見上げていた。



 あの術式は、絶対に悪魔の風魔法なんかじゃない。

 それだけは断言できる。


 なのに、風魔法だという事にされていただなんて……




 やっぱり、あの彼はえん罪で命を落としてしまったの?


 でも、あの時間帯、悪魔は彼しかいなかったと言った。

 それが本当なら、やっぱり彼が犯人というのが自然。



 でも、私の記憶の中にある術式は、天使の旧式術式と酷似していた。

 これは、一体どういうことなの?



 他の証拠でも見つけられればいいのに、いくら調べても、あれ以上の情報なんて出てこない。





 せめて、揺るぎない証拠があれば――



 そんなの……

「どこにあるの?」


 あの本の事を打ち明けたとしても、誰も信じてくれないと思う。

 あの衝撃の記事を目にしてから何日か経った私も、未だに信じ切れない。



 そらそうよ。

 もし、本に書かれていたことが本当なら――犯人は、天使。

 しかも悪魔に罪を着せた。



 そんなの……誰が信じれる?

 親友のルミナにすら言える気がしない。幼い頃から一緒に育った親友なのに。



 あの術式を実際に見たのは、検証班数名と私だけだった。

 あの時点でメモを残した訳じゃないから、『記憶違いじゃないか』と言われても否定しきれない。


 だからもし、規約を破ってあの本を持ち出して証言したとしても、『見間違いだろ。天使がそんなことをするわけがない』で終わるはずだ。






 これ以上私の力では無理なのかも。


 もう終わったこと。

 荒波を立てない方が、学院の為なのかもしれない。



 でも、やっぱり……




 その時、ふと近くから視線を感じた。

 目を向けると、学院の柱の影に、腕を組んで寄りかかる黒髪の悪魔がいた。



 ――ダリウス。


 私は思わず息を呑んで目を見開いた。



 今朝、明らかに冷たい目を向けてきたダリウスが、今はただじっと私を見つめている。


 何を考えているのか、その瞳からは読み取れない。


 私は警戒しながら彼の動きを見守った。


 すると、ダリウスがゆっくりと口を開いた。

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