表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【大賞作家】天使と悪魔が交われば、世界が滅ぶ。それでも、1万年越しの愛を貫く。  作者: 花澄そう
先入観

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/120

先入観?2

 

 突然目の前が揺らいでよろめいた。


 思わず目を強く閉じ、顔を手で覆う。

 けれど、倒れはしなかった。足裏には確かな地の感覚があった。




 気付けば、肩を支えてくれているような感覚が伝わっていた。


「大丈夫?」


 耳元で心配するようなルヴェルの声がした。


「……う、うん……ちょっと、目が回っちゃっただけ……」

 最近、ちゃんと寝てなかったからかな? あの事件のことばかり考えてたし……


 そう考えながら恐る恐る手を下ろし、目を開ける。


「もう大丈……」


 視界いっぱいに映り込んだのは、ルヴェルの端正な顔。

 あまりに近い距離に、心臓が一瞬跳ねて、慌てて一歩下がった。


 すると、ルヴェルは猫のような綺麗な目を細め、ふっと優しく微笑んだ。


「気をつけないと駄目だよ」




 その次の瞬間――

「偽善者ですって!?」

「お前たちは善者の皮を被ってるだけだ! だから信用できないって言ってんだよ!!」

「何てこと言うの!! 悪魔のくせに!!」


 火花が散るような激しい言い争いは、更に激しさが増しているよう。

 お互いに睨み合い、今にも掴みかからんばかりの勢いだ。



「リシェル、こんな所にいない方がいい」

 そう言うと、ルヴェルは迷いなく私の手を取った。


「で、でも……」

「行こう。ここは危険だ」

 強くはないけれど、拒めない力で引かれていく。




 そんな時、ふと視線を感じ目をやると、悪魔用に振り分けられた教室の中にいるダリウスと目が合った。


 なぜか私を見るなり、目を細め睨んでくる。

 その目に触れた瞬間、なぜか私の心が冷たくなっていくような感覚がした。



 私は思わず目を伏せる。

 そして恐る恐る再び目を上げると、もう彼は私の方を見ていなかった。


 ダリウスは、挑発的な笑みを浮かべながら、周囲の天使を見つめていた。


 その瞳は、どこか冷たかった。


 きっと彼も仲間を処刑されて、天使を恨んでるんだわ。当然よね。

 私でもそうしていたかも……



 退学は免れたけど、もう……彼と前みたいに話す事も、私に微笑む事もないのかもしれない。


 そう思うだけで、胸が酷く傷んだ。



「リシェル? 大丈夫?」

 その声に気付くと、ルヴェルは私を心配そうに覗き込んでいた。


「……うん」

「何あったら言って。僕でよければ、いつでも相談に乗るから」

「ありがとう」





 天使は『正しさ』を疑わず、悪魔は『怒り』を隠さない。

 学院にある景色は、私の知っている光景じゃなかった。



 天界の上層部と魔界の上層部は、一応の話し合いを終えたらしいけど、問題は何も解決していない。


 でも、いつまでも学院を閉鎖しておくわけにはいかず、『安全は確保されている』と無理やり再開された。



 当然、生徒たちはそんなのでは納得できない。


 悪魔側は無実を主張した友人が殺されたと感じ、天使側は仲間が襲われたという恐怖が消えない。



 当たり前だけど、一時閉鎖は、生徒たちの関係を修復する時間にはならなかった。


 この学院は、完全に分断されているように感じた。





 結局、その後はすれ違うだけで言い争いが起こり、学院はやむなく天使と悪魔を別々の建物に分ける処置を取った。



 もう、前のような雰囲気には戻れないんだろうと思った。



 …………


 ……



 授業が終わったあと、私は廊下を歩いていた。


 するとふと視界の端に、あの時、事件の時に居た検証班の姿が見えた。


「……あっ」

 もしかして、今なら、聞けるかもしれない。


 私は迷わず彼の元に行き、声をかけた。



「あの、すみません」


 彼は私に気づくと、少し驚いたように振り返る。


「ん? ああ、あの時、現場にいた……」

「突然すみません。少しだけ、聞きたいことがあって」


「どうかしたか?」

「この前の事件のことなんですけど……術式って、結局どの術式だと判断されたんですか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ