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【大賞作家】天使と悪魔が交われば、世界が滅ぶ。それでも、1万年越しの愛を貫く。  作者: 花澄そう
先入観

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31/120

先入観?1

 

 ついに学院が再開され、私は久しぶりに学院の門をくぐった。


 その瞬間、違和感を感じた。

 門の先に広がる景色は、確かに見慣れた学院なのに……なぜか、少しだけ様子が違って見える。


 生徒の姿が、どことなく少ない。

 とくに……悪魔の制服を着た生徒の姿が、以前より明らかに減っているような……



 ここに通うのは、天界と魔界、それぞれのエリートたち。

 自分の子が危うくなるかもしれないと判断した親が、休みの間に転校させたのかもしれない。

 私だって、転校させられるところだったんだから。



 そんなことを考えていた時――


「リシェルおはよう」

 そんな声にふと視線を向けると、白い翼を羽ばたかせて浮かぶ、天使の制服を着た男子生徒がいた。



 少し長めの白銀の髪が、柔らかく光を受けて揺れている。

 整った顔立ちは端正でありながらも、どこか親しみやすさを感じる。


 この天使は同じクラスのルヴェル。

 私と同じ上級天使で、女生徒に絶大な人気がある。


「おはよう、ルヴェル」

 私の返事に、優しく微笑むルヴェル。


「学院の休み、思ったより長かったね」

「そうだね」

 半月ほど休んでいたかしら。


「休みの間、元気にしてた?」

「元気にしてたよ。といっても、本ばかり読んでいたけど」


 ほぼ今回の事件の調べものばかりだけど。


 あの本に書かれていたことが本当なのか、必死に調べた。

 けれど分かったのは「信ぴょう性が高そう」だという曖昧な結論だけ。

 他の本も片っ端からめくってみたけれど、同じ術式は一つも載っていなかった。



「リシェルは、セラフィエル様の補佐候補だったよね」

「うん。ルヴェルもでしょ」

「そうだよ」


 ルヴェルは貴族天使の中でも名門の血筋で、天帝候補にもなる家柄。

 その中で補佐を目指すのは当然のこと。


 天界で最も気高い職業は、言うまでもなく『天帝』。

 そしてその次に位置するのが『天帝の補佐』だ。


 天帝は1人しか存在できないが、補佐役は通常6~8人程度。

 現在の天帝セラフィエル様は、ここ何十年もその座に君臨している。


 だから、ルヴェルも補佐を目指すのは自然なことだ。



「ルヴェルは何してたの?」


 一瞬、ルヴェルは困ったような顔をして口を開けた。


「うーん……僕は……父にこき使われてたかな」

「えぇ!?」

「朝から晩まで、ずーっと天界の仕事を手伝わされて」

「そんなに?」


「『暇なら天界の勉強をしろ!』って。でも、そのおかげで天帝補佐の仕事がどんなものか、身をもって知れたけどね」

 ルヴェルは苦笑いを浮かべたけど、どこか慣れた様子もあった。


「そうなんだ……」



 ルヴェルのお父様も天帝補佐なのよね。


 そんな話をしながら、教室へ向かう廊下を通っていた時――



「近寄らないでよ!」

「また何か仕掛けるつもりでしょ!」


 そんな声に目をやると、廊下で天使たちが怒りの声を上げていた。

 その瞳には疑いと軽蔑が感じられた。


 天使たちの視線の先である悪魔たちは唇を歪め怒りを露わにしている。

「はっ、そっちこそ、今度はどんな罠を仕掛けるつもりだ?」

「なんですって!? 罠ってなによ!」



 私はその空気の重さに耐えきれず、思わず口を開いた。

「何してるの……?」


 すると、非難をしていた天使達は私を見るなり、こう言う。

「何って、仲間に酷い目に合わせた悪魔に言ってやってんのよ!

 リシェルも気をつけてよ! 悪魔たちは何を考えてるかわからないんだから!」



 そんな言葉に、複雑な気持ちが湧く。


 そう……よね。

 皆、あの悪魔がやったと、信じ切っているんだし。



「私たちは、もう悪魔なんか信用しないから!」

 と言う天使に、悪魔も負けじと返す。

「それは俺らもだ! 俺らを嵌めた偽善ぶった天使が!」



 まだ確信はないけど、『あの事件の犯人は、もしかして天使かもしれない』って、言った方がいい……?



 ……ううん。


 やっぱりまだ駄目。

 今、こんな混乱の中で、不確かな情報を出すのは余計に混乱を招くだけ。

 言うなら、もっと確信を得れるようになってからだわ。



 じゃあ、えん罪かもしれないと知っておきながら、私は、何も出来ずに指をくわえていないといけないの……?




 その時――

「うっ……」

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