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【大賞作家】天使と悪魔が交われば、世界が滅ぶ。それでも、1万年越しの愛を貫く。  作者: 花澄そう
真実の追及

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真実への追及2

 メイドの声に、私は慌てて体を起こした。


 メイドが静かに扉を開け、慎重に尋ねる。

「あと、お荷物をお持ちしましたが、どうなさいますか?」

「……そこに置いておいて」


 いよいよね。

 どうせ結論は決まってる。


 でも……だからこそ、足掻いてみせるわ!



「荷ほどきをいたしますか?」

「自分でやるわ」

「かしこまりました」

 メイドは軽く一礼し、静かに部屋を後にする。


 私は覚悟を決めてベッドから立ち上がった。





 書斎の前に立つと、自然と背筋が伸びる。

 深呼吸をひとつしてから扉をノックした。



「入りなさい」

 低く、威厳のある声が返ってきた。


 扉を開くと、予想していた通り、お父様は厳しい顔で待っていた。

 夕日を背景にしたお父様は、静かに机に肘を突くと、重い口を開く。


「学院長から、経緯などはすべて聞いた」

 お父様は一度、机にある書類に目をやってからこちらを見た。


「単刀直入に言う」

 来る……っ!


「……もう十分だ。お前は転校しなさい」


 やっぱり……!


「ですが……」

 私が口を開きかけた瞬間、お父様はすぐに言葉を被せてきた。




「約束したはずだ。何か問題があれば――すぐに退学すると」


 揺るがない意思を感じる眼光を向けられ、私は思わず目を伏せてしまった。



「見ただろう? 悪魔と共にいることが、どれほど危険なことか。

 天使の生徒が襲われた。運よく発見が早かったお陰で奇跡的に命はとりとめたが……それでもまだ目を覚まさしてはいないらしい」


 そう、なんだ……

 原因さえ分かれば、すぐに目を覚ますんだと思っていたのに。



 彼女の事を思い浮かべると、胸が苦しくなる。

 それと同時に、少しでも時間がズレていたら――私がその立場だったかもしれないと思うと、背筋が凍った。



 でも、本当にあの小柄な悪魔がやったのかな……?

 だとしたら、どの術式だったの?



「犯人は速やかに処刑された。だが、それでもお前をあの学院に通わせるには不安が残る。

 今回の件で酷く魔界側の反感を買っている。それはきっと生徒も同じじゃないか?」



 そう言われて蘇る、悪魔が私たちに向ける――憎悪の目。


「すぐに同じような事が起こるだろう。

 でも、そんな事件にリシェルを巻き込ませるわけにはいかない。今回の休暇期間中に、退学の手続きを進める」



 今の状況からして、お父様の言葉はもっともだ。

 でも……


「それでも……私はまだ、あの学院にいたいです」


「なんだと!? リシェル。今の状況が分かっているのか!?」

 お父様の眉間に、深いしわが刻まれる。




 処刑の光景が頭から離れない。

 なんであの時、もっと早くに声をあげなかったのかと、今でも悔やんで仕方ない。


 あの事件の光景を思い出すだけで、胸が苦しくなる。



 こんな状況なのに、私はまだ退学するだなんて嫌っ。



 それは、夢への道が絶たれる事。



 それに――ダリウス。

 そして優しくしてくれた、クラスメイト。



 楽しくなってきていた学院生活がここで終わるのなんて……

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