天の裁き4
ついさっきまでそこにいたはずの、悪魔の姿は跡形もなく消え去っていた。
ほんの、一瞬の出来事だった。
『何もやっていない』と泣きながら訴えた悪魔は、誰にも聞き入れられることなく、この世から消されてしまった。
辺りは、恐ろしいほどに静かだった。
心臓が、ドクドクと嫌な脈を打つ。
『悪』である悪魔が処刑された。
信頼ある天使の検証班が調査をし、証拠をつかみ、その結果……正しく裁かれた。
天使の誰もが信じる『正義』。
なのに――胸が痛い。
「どうして……? どうして、また、こんなふうに裁くの……?」
つい口から出てしまった言葉に、不思議に思った。
……また?
今、私『また』って言った?
処刑なんて、初めて見たはずなのに……
でも、昔どこかでこういうのがあったような気がする。
思い出せそうなのに、いくら考えても思い出せない。
私は頭に手を当てた。
あの術式に違和感を持たなければ、こんな気持ちにはならなかった……?
今では分かるはずもない疑問が頭を駆け抜ける。
私は手を強く握り、せめて安らかにと祈らずにはいられなかった。
すると、奥側からすすり泣くような声が聞こえてきた。
声先を見ると、先ほどつくられた光の壁の向こうで泣き崩れる悪魔や、目を吊り上げて怒りを露わにする様子が目に入った。
近くの天使たちは『当然の結果だ』と言わんばかりに話をしている。
「これでやっと安心出来るわ」と、微笑む天使までいた。
私は何かが喉につかえたような感覚を抱えながら、その場を後にした。
その日の夜――
寮の中は、まるで戦場のような有様だった。
至る所で罵声が飛び交い、物は壊れ、床には割れた皿の破片が散らばっていた。
天使と悪魔の溝は、今まで以上に深まり、ついに大勢の怪我人まで出てしまった。
そして学院は、一時的に封鎖されることとなってしまった。
天の裁きはここまでになります(^^)/
次はリシェルが走り回る「真実への追及」になります。
↓少しでも面白いって思っていただけましたら、☆5を頂けると泣いて喜びます;;評価なさ過ぎて……




