天の裁き2
外から飛び込んできた大声に、私は足を止め、息を呑んだ。
「……えっ?」
慌てて窓の外を見る。
すると、生徒たちの中心で、黒い制服を着た小柄な悪魔が検証班に捕らえられ、無理やり引きずり出されていた。
「な、何……?」
周りの天使や悪魔たちが、一斉に騒ぎの元へと向かっていく。
「何!? なんの騒ぎ!?」
「犯人が見つかったらしいぞ!」
「本当に? 誰なの……?」
私はなんとも言えない不安を覚えながら外へと飛び出した。
到着するなり、拘束されるように後ろ手をまとめられた悪魔が、涙目で必死に訴えている様子が目に入った。
「違う……っ! 僕はやってない!!」
反論する悪魔を、検証班が二人がかりで押さえつけている。
「うるさい! 証拠はそろってるんだ! あの事件の少し前、お前があの場にいるのを見たという証言が複数ある! 他に誰もその場を見ていなかったんだ!」
「だから、それはさっきも言ったように、待ち合わせをしていたんです!」
「そんな話を信じられるか!」
「本当です! あの日、帰宅したら僕の部屋に手紙が届いていて、開けたら名前もなくて……でも、『夕方に庭に来てほしい』って書いてあったから……だから行ったんだ!」
「なら、その相手を連れてくるんだな!」
「無理だよ……だって、本当に誰なのか分からないんだ! 結局……いくら待っても誰も来なかったから……」
「はっ! 会っても居ないなんて、話にならない!」
「本当だよ! 信じて!」
「学院の履歴には、そんな手紙届けた履歴はない。その手紙はどこにある?」
「だから、それも無くなったんだ!」
「嘘つくなら、もっとマシな嘘をつけ!」
検証班の言葉に、悪魔は悔し気に唇を噛む。
「ほ、本当なのに……っ! なんで信じてくれないんだよっ!」
悪魔は必死に叫んでいた。
でも――
誰も、その言葉に耳を貸そうとしない。
「あんた達! 少しはまともに聞きなさいよ!」
「おい! それだけで証拠になんてなってねぇだろ!! 頭おかしいのかよ!!」
「本当にちゃんと調べたのか!? あまりにも早すぎるだろ!!」
悪魔たちが抗議するように叫ぶ。
けど、検証班の天使たちは、そんな悪魔たちを遮るように光の壁を作り出した。それは、昨日現場で見た壁と同じだった。
「くそっ! またこの壁かよ!」
「ふざけるな!」
壁を殴る悪魔たちを、天使たちは冷ややかに見下ろす。
「逆上して暴れるのか? やはり悪魔は野蛮だな……」
検証班は、光の壁に阻まれている悪魔の方を見て、そう呟いた。
再び小柄な悪魔に目をやる。
「他にも、お前だという証拠は揃ってる。それに、やはり術式も悪魔のもので間違いなかったしな」
……えっ? そうなの?
じゃあ、風の術式じゃなく、他の悪魔の術式だったって事?
「そ、そんな……」
検証班の前で、悪魔は尻もちをついたまま、震える手で地面を押さえていた。
立ち上がろうとする気配もなく、ただ怯えたように見上げている。
「天使を殺そうとした悪魔に慈悲はない」
検証班は、顎を上げ、悪魔を見下し続ける。
「処刑の許可は、すでに下りている」
その言葉に、周囲がざわめいた。
「この場で――執行する!」




