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【大賞作家】天使と悪魔が交われば、世界が滅ぶ。それでも、1万年越しの愛を貫く。  作者: 花澄そう
天の裁き

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22/120

天の裁き1

 その後、学院では緊急の対策として、食堂などの利用時間を天使と悪魔で分け、できるだけ顔を合わせないようにした。




 そして翌日――

 登校すると予想通り、学院内は騒然としていた。


 教室は、昨日までの穏やかな雰囲気はすっかり消え去り、そこには不穏な空気が漂っていた。



「ねぇ、本当に悪魔の仕業なの?」

「そうに決まってるじゃない」

「ほら。だって、あの術式は悪魔のものなんでしょ?」


 不安と憶測が入り混じり、皆、悪魔への疑いを止められないようだった。



 怒りを露わにする者、不安げに怯える者。

 事件のせいで、天使たちはみんなピリピリしていた。



「なんだよ。俺たち何もしてないのに……」

「天使たちの目、うぜぇ……」

「今までは表向き平和だったけど、あれが本音ってわけか?」

 悪魔の生徒たちは口を歪め、天使を睨み返していた。



 この場の誰もが、天使と悪魔の間にある見えない壁が、また一段と厚くなったことを感じ取っていた。



 そんな中、ふとダリウスが目に入った。


「あっ……」


 彼は教室の隅に立ち、天使たちの噂話を腕を組んで無言で聞いていた。

 その横顔は、今まで見たことがないほど静かで、張り詰めた空気をまとっている。



 ……ダリウスも、天使たちの態度に怒ってるんだろう。



 そう思ったけど、何も言えなかった。

 彼に声をかける理由も、言葉も見つからない。



 そうしている間に、ダリウスは踵を返し、静かに教室を出て行ってしまった。



 その時、突然学院内に放送が響いた。


「昨日の件について話しておきたい」

 それは、学院長の声だった。


「アルカディア学院は今回の事件を、非常に重く、世界をも揺るがしかねない事件だと認識している。

 現在、犯人の特定を進めており、すでに対応の準備に入っている。学院内での混乱は避け、冷静に行動するように。

 天使悪魔の共学である1年生は、今日から暫くの間、教室を分ける事とする。詳細は各教室で担当講師から説明がある」


 世界をも揺るがしかねないと言う事件の半日後にしては、とても落ち着いて聞こえた。



 そんな時、私はふとあることに引っかかった。



「すでに対応の準備に入っている……?」


 事件が起こってまだ半日しか経っていないのに、もう『対応』する段階なの?



 まるで……


 いや、考えすぎよね。






 その日の午後――



 授業が終わり、天使達と廊下を歩いていると話題を振られる。

「悪魔が教室にいないと、楽でいいわね」


「えっ……う、うん」


 昨日の放送の後、天使と悪魔の教室が分けられた。

 専門の教室以外は建物さえ違う。



 確かに、あんな息も詰まりそうな空気から解放されて、楽になった気がする。



「このままずっと悪魔と別教室ならいいのに。あんな事したんだし、学院から全悪魔追放でもいいと思うくらいなんだけど。リシェルはそう思わない?」


 そう聞かれて、事件が起こるまでは仲良くなりかけていた悪魔の女子、そしてダリウスの顔が浮かんだ。

 だからか、その言葉にすぐに答えることが出来なかった。


「……どう、かな?」

「リシェル?」

 不安そうに呼ばれて、私は小さく笑って誤魔化した。



 悪魔は『悪』で『自分勝手』で、『自分らの利益』しか考えない。

 そう教えられてきた。


 でも、実際に悪魔たちと話しているうちに、少しだけ……違う一面も見えてきた気がしていた。



 相手を思いやる心や……優しさも確かにあった。


 そう思うと、悪魔をむげにするような言葉は言えなかった。






 その時、突然外から騒がしい声が聞こえてきた。

 なんだろう? と思った時――


「犯人が見つかったぞ!」


 外から飛び込んできた大声に、私は足を止め、息を呑んだ。


「……えっ?」

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