リシェルが見たもの2
でも……
「あれ……?」
何か、違う……
すぐに違和感を感じた。
この線って、円から飛び出していたっけ?
他も、何か違う……
私は違いを探すように、術式の形式を目に焼き付けていると、ふと最悪の可能性が頭をよぎった。
待って!?
この子は、この術式によってこうなったのよね?
術式な光はそんなに長い時間残らない。
……ということは……
犯人はまだ近くにいる!?
それに気づいた瞬間、ゾクリと背筋を冷たいものが走る。
心臓が早鐘を打つのを、私は自分の手のひらで必死に押さえた。
怖い!
逃げなきゃ……!
あっ! ……でも、彼女を置いて行くなんて出来ない。
飛んで運ぶのも難しい。
じゃあ、一体どうしたら……
その時――
「おい!」
大きなその声に、一瞬で心臓が飛び上がった。
振り返ると、そこには私の悲鳴を聞いて駆けつける天使の検証班達が映った。
そんな光景に、すぐに安堵が広がっていく。
「何があった! さっき、この辺りから悲鳴が聞こえ……」
私が口を開くよりも早く、検証班の目が大きく見開かれる。
検証班の視線の先は、私の足元で倒れている天使。
「……っ!? 大丈夫か!」
慌てた様子で倒れている天使の女生徒に駆け寄り、治癒魔法をかけ始める。
私は邪魔にならないよう、少し後ろに下がった。
その時、周囲にはすでに野次馬が集まり始めていた。
別の検証班が私に近づき、真剣な表情で尋ねる。
「君が第一発見者か。何があったか教えてくれ」
「えっと……私が来た時には、もう彼女が倒れていて……」
そう話すと、明らかに疑いの目が濃くなった。
まさか、私がやったと思ってる!?
「他に誰かいなかったのか?」
「はい……誰も見てません」
私は小さく首を振る。
どうしよう。これだと、絶対私が怪しいってなってしまう。
でも、本当に他に誰もいなかったし……
「そうか……。持病持ちの発作とかか? まぁそれは意識が戻った後に聞くとしよう」
検証班は顎に手を当て、小さくため息をつく。
その時――
「駄目です! 意識は戻りません!」
治癒魔法をかけていた検証班が焦った声を上げた。
目の前の検証班は「何? 妙だな……」と眉を寄せ、私を横目で見た。
「おい! 見ろ! 術式があるぞ!」
「……え?」
駆け付ける検証班。
「本当だ……」
「え? じゃあ、彼女はまさか術式で……?」
焦げた地面に浮かび上がる複雑な紋様。
それは薄く消えかけているが、まだなんとか確認できるものだった。
検証班たちは慌ただしく魔法の痕跡の検証を始める。
「この形は……どう見ても悪魔の仕業、だよな」
その言葉に、周りの天使たちがざわつき始める。小さな悲鳴をあげる者もいた。
「だから共学は反対だったんだ」
「さすが悪魔。同じ生徒相手に術式を使うだなんて……」
その言葉に、私は静かに眉を寄せた。
すると……
「くっ……!なんてことだ!!」
術式を調べていた検証班の声に目をやる。
すると、術式が完全に消え去っていた。
「……でも、悪魔で間違いないだろうな。あの形は見たことあるし……」
検証班はそう呟く。
そんな声が飛び交う中――
「なんだなんだ、この騒ぎは何だ?」




