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【大賞作家】天使と悪魔が交われば、世界が滅ぶ。それでも、1万年越しの愛を貫く。  作者: 花澄そう
手とり足とり

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18/120

手とり足とり3

 

「ついでに言うと、羽の動かし方も甘い」


 悔しいけど、それも大正解だった。

 それは十分に自覚してる。でも、上手くできない。


 私は言い返すことも出来ずに視線を落とすと、ダリウスがため息をついた。



「ったく、仕方ねぇな」


 ダリウスは私のすぐ隣に並んで軽く腕を掴んできた。


「な、……何!?」

 驚き目を見開いた瞬間、私は彼に引っ張られるような形で、再び上空に戻された。



「きゃぁあーー!!」

 空中でピタっと動きを止めたダリウスは、突然パッと掴んでいた腕を離した。


「ほら、俺の動きに合わせて飛んでみろ」

「動き……?」

「で、風の流れに乗る感覚を覚えろ。多分それが1番早い」

「風の……流れ?」


 そんなの、意識した事ないわ。


 指示された不満を感じながらも、私は渋々彼の飛行に合わせて動いた。


 ダリウスは、まるで風と一体化するように滑らかに飛んでる。

 不思議と彼の動きに合わせていると、風に乗る感覚が分かってきたような感じがした。



 そんな頃――

「やっとマシになったな」

 ダリウスは満足げに微笑んだ。


 その笑顔を見た瞬間、なぜか頬に熱が灯った。



「別に、あなたのおかげで飛べたわけじゃないから!」

 私の言葉を聞いた彼は、彼はからかうように笑う。


「はいはい」


 そんな態度に、余計に負けたような気持ちになった。

「なによ……」



 彼のお陰で初めて風の流れを読めるようになってきたのに、また余計な事を言っちゃった……

 こうやって飛べるようになったのは、確実にダリウスのおかげなのに。


 彼の前だと、どうしても素直じゃない言葉ばかり口にして、意地を張ってしまう。


 でも、ここで素直になったら、きっとからかわれるに決まってる。



 ……けど、それでも……

 してもらったことには、ちゃんと感謝を言うべきだわ。


 これは天使としての『正しさ』よ。



 だから、言わなきゃ。



「ダ、ダリウス……」

「ん?」

 彼は振り返ると風に乱される前髪をかき上げた。

 そして、ルビーのような瞳を私に向ける。


 私は、思わず彼から視線を逸らして口を開けた。

「あ……ありがとう」

 その言葉は、風に溶け込むように小さくなった。


「何? 聞こえなかったんだけど」


「えっ……っ!? 嘘っ!」

 精一杯伝えた言葉が全く伝わっていなかったという予想外の事態に、困惑してしまう。


 すると、ダリウスの方からクッと笑うような声が聞こえる。


 まさか。


 ――また騙された。



「だ、騙したわね!」

「なんの話?」

 彼は、小さく首を傾げて悪戯っぽく笑った。


「もう、からかわな……!」

 真っ赤になって抗議しようとした瞬間、彼は私の頭にぽんと手を置いた。


 なぜか、その瞬間から私は何も言えなくなった。



「ほら、行くぞ」

 そう言ってくるりと背を向けるダリウス。


 手の温もりが、まだ頭の上に残ってる気がして、ふと自分の頭に手を乗せた。

 胸の奥が、少しくすぐったく感じた。





「これで本日の授業は終わりだ。解散してよし」

 講師の声が響くと、天使も悪魔も、それぞれの方向へと散っていく。


 私が落下しかけた時は周囲も一瞬ざわついたけれど、今は何事もなかったかのように、いつもの学院に戻っていた。


 でも、私はどこか落ち着かなかった。

 ダリウスが、私を抱き寄せた時の感覚が――未だに抜けなくて……


 思い出すと、なぜか顔が熱くなった。

 熱くなった頬をそっと押さえながら、私は足早に歩き出した。



 そんな日常の中で、誰も知らない間に『世界を揺るがす事件』は、すぐそこまで忍び寄っていた。




 …………


 ……

次は「リシェルが見たもの」になります(^^)/いつもお読み頂きありがとうございます♪

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