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【大賞作家】天使と悪魔が交われば、世界が滅ぶ。それでも、1万年越しの愛を貫く。  作者: 花澄そう
思い出せないメロディ

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思いだせないメロディ4

 今の女の人の声は、何……?


『……私たちが、もし生まれ変わったら、今度こそ……』


 こめかみに手を当てて意識を集中する。

 あの言葉が、まだ頭の奥で響いている。



「頭痛いのか?」

 そう言われて、さっき意識が飛びかけたことを思い出す。



「えっ……?」


 頭が混乱して黙り込むと、「リシェル」と、再び名前を呼ばれる。

 その瞬間、なんとも言えない気持ちになった。


「ちょっと! 名前で呼ばないでよ!」

「んだよ。じゃあなんて呼べばいいんだよ」


「分からないけど……でも、リシェルだなんて馴れ馴れしいのはやめてよ!」

 悪魔――私から首席の座を奪ったあなたにだけは、名前で呼ばれたくない!


 彼は目を細めて、じっと私を見つめた。


「な、なによ……」

「馴れ馴れしい、か……そうかよ」

 どこかスネたようにも映った。

 滑稽だわ。そんなわけないのに。


 と思っていると、突然クッと笑うダリウス。

「じゃあ、プリプリリシェル、なんてどうだ?」

 その言葉を聞いた瞬間、私はカッとなる。


「なっ……!! 誰がプリプリよ!!」

 怒りを露わにすると、「ほら。そうやってすぐ怒る」と鼻で笑われる。


「それなら、リシェルの方がマシだわ!」

 私がプイっとそっぽ向くと、彼はふっと目を細める。


「なら、呼ぶぞ。リシェル」


 その瞬間、私の顔はカッ熱くなり思わず叫ぶ。


「ちょっと!」

「そんなに怒れるのなら、本当にもう大丈夫そうだな」


 えっ? まさか心配、してくれてたの?


 ……ううん、そんなわけない。

 悪魔なんかに騙されちゃ駄目!



「ん」

 突然、目の前に手が差し伸べられた。

 その手を不思議な気持ちでじっと見つめ、それから彼を見上げる。



「いつまでしゃがんでんだ」

 私を見下ろす彼の表情は、どこか優しかった。


 さっきグラついたばかりだし……

 と、少しだけ迷いながら、その手を取る。



 すると、自分の手に彼のぬくもりが伝わった。

 その瞬間、酷く驚いてしまった。

 悪魔は、もっと冷たい手をしていると思っていたから。



 ゆっくりと引き上げられる感覚。

 なぜか自分の鼓動が早くなるのを感じた。


 彼を見上げると、さらに速くなりそうで――すぐに視線を逸らした。



 その瞬間、背筋に冷たい感覚が走った。


 すぐに振り返ったけど、そこには誰の姿もなかった。


 ただ、夜風が静かに木々を揺らしているだけ。



「……あれ?」

 首をひねりながら、もう一度彼の方を向き直る。

 すると、彼は私の顔をじっと見ていた。


「えっ……何?」

 私の顔に、何かついてる?


「別に」

 彼はそう呟くと、ふと目を逸らして続けた。


「妙な顔してるなって思っただけだ」

「みょ、妙な顔ですって!? 本当に失礼ね!!」


「出た、プリプリリシェル」

「なんですって!」

 怒ると、彼はククッと笑った。



 目を細めて笑うその姿にふいに私の心臓が跳ねた。

 胸の奥をギュっと掴まれたような感覚に、何かいけないものを感じた。



 あれ……?

 なんだろう。……この感覚。


 前にも、同じことがあったような…?


 私は小さく首を傾げた。


「寮に戻るぞ、リシェル」

「ちょっと! 名前!」

「あれ? プリプリリシェルの方が良かったのか?」

「違う!」



 …………


 ……

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