思いだせないメロディ3
ダリウスはベンチに腰掛け、夜空に向かって静かに口ずさんでいる。
どうやら、まだ私には気づいていないようだ。
入学して間もない頃から、頻繁に衝突してしまっている彼。
今まで誰かと衝突するなんて、なかったのに。
本当に相性が最悪なんだわ!
そう思っていると、突然メロディが止まった。
ハッとすると、なぜか私は彼の目の前にいた。
「……っ!」
どうやら、私は知らないうちに、ここへと吸い寄せられていたようだ。
そんな事に気付いた時、彼はすっと顔を上げた。
私を赤い瞳に映した彼は、少し驚いた顔をした。
けど、すぐにいつもの目に戻った。
「なんだ、お前か」
「なんだって、何よ」
私はムッとしながらも、気になりすぎて、思わず聞いた。
「その歌……何?」
「……歌? ああ、さっき俺が歌ってたやつか」
それ以外に何があるのよ。
「そうよ。それ、どこで覚えたの?」
「さあな。なんとなく昔から知ってる気がする」
「へ……? そう、なんだ……?」
そんなことって、ある?
「お前、寝れないのか? 結構な時間だぞ」
「そっちこそ」
「俺はいいんだよ」
「なにそれ」
夜の静けさが2人を包む。
やっぱりここから立ち去ろう。
こんな夜更けに、悪魔と並んでいるなんて……冗談でもあり得ない。
そう思った時、彼は、再びあのメロディーを口ずさみ始めた。
まただ……
近いからか、余計に感じる。
そのメロディーを聞いていると、懐かしくて、胸が熱くて、思わず泣いてしまいそうな程の――
『何か』を……
私はその『何か』を探るように、目を閉じて耳を澄ませた。
すると――
頭の奥に、突然ある言葉が響いた。
『……私たちが、もし生まれ変わったら、今度こそ……』




