あなたのぬくもりの中で5
その瞬間、ダリウスの言葉が脳裏に蘇る。
『母上は、それでも俺を必死に守ってくれていた。
でも、8歳の時に亡くなって……そこからは、地獄みたいだった』
『今でも消えない傷が、何箇所か残ってる』
何も言えず、ただ眉をひそめる私に、ダリウスは静かに手を伸ばし、頭を撫でた。
「そんな顔するな」
まだ幼い頃に、こんな酷い傷を……
想像するだけで胸が張り裂けそうだ。
こんな傷が、彼の心の中にもきっとたくさん残ってるんだろう。
そう思えば思うほど、たまらなくなって……
私は、彼をそっと抱きしめた。
「リシェル?」
あなたがこれ以上、傷つくことのないように――
それからというもの、私たちは何度も愛し合った。
身体を重ねる度に、彼への気持ちに拍車をかけるようにどんどん膨らんでいった。
『禁忌』
――その言葉に気づかないふりをして。
一瞬でも考えたら、どうにかなってしまいそうだった。
伝説だと頭では割り切っている。けど、その証拠もないから。
だからもう、その事について調べるのもやめた。
いくら調べても、詳しい情報が書かれている本はなかったし。
きっとそんな過去なんてなかったんだわ。
ダリウスの言う通り、迷信的に決まってる。
だから……もう……気にしない。
したって仕方ない。
そう言い聞かせてみるけど、やっぱり考えてしまう。
これで何度目だろう?
「リシェル……好きだ」
「私も。……大好き……」
彼の指先が私をなぞる度に、心も体も彼に溶かされていく。
夜を重ねるほどに、離れられなくなる。
罪に溺れる私たちは……
もう、取り返しのつかない所まで来てしまったんだろうか?
もしそうだとしたら、私達はこの先、どうなるんだろう……
…………
……




