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千咲と果苗の日常4

6月24日。私たちは登校した。選択授業では京香に笑顔が戻り、私たちは安堵した。今どき折伏至上主義では庶民のココロは掴めない。彼女はお盆休みのイベントに来てくれることが決まった。当日は秋服の試着しかなく、アンケートの景品にも力を入れる予定。抽選で女性3名にアンティークコイン。男性2名に抽象画をプレゼントする。7月にイベントがないため景品がより豪華になった。かと言って当選者にしつっこい勧誘は全くなく、このあたりが法華との違い。無料で出す缶コーヒーは安物だが、洋菓子には力を入れた。BGMは私たちがAI作曲したイメージソングを流す。会場は栄のど真ん中だし、お盆休みは来場者が増えそう。次回の参戦者は最低時給2500円だが、参戦経験があれば3000円に増額された。異世界では1度でも殿方と矛を交えれば結果を問わず経験者とみなされる。たとえ後半1分と持たなくても立派な魔法戦士なのだ。お盆休みはカップルが狙い目だが、いざ参戦となれば話が別。思春期の女の子と三十路の母親が理想だが、実際には8歳児と20代後半の母親だったりする。参戦は満10歳を超えないとダメだから2年後が楽しみ。安夫はいい父親に戻り、春奈は作女流家として円熟。となれば母娘戦士は厳しいが、春奈の妹の麻美がいた。まだ28歳独身だから名字は姉の旧姓の石垣のまま。石垣麻美は実家暮らしで本業はスーパーのパートだが、なぜかどこに行ってもイジメに遭う。かと言って性格は悪くなく、おっとりした優しい女性。彼女は京香にも優しいから麻美とのカップリングが急浮上した。「大丈夫?」「平気よ。麻美さんは姉みたいな人だから」叔母とのカップリングは珍しいように見えるが、実はそうでもない。身内は心強いし、頼れる存在なのだ。しかも麻美は気持ちが若く色白でスタイルも悪くない。子どもを産んでいないからからだの線が綺麗なのだ。「麻美さんはステキな出逢いを求めてるわ」「じゃあまずはお盆休みね」お盆休みなら少しはお休みがあるはず。叔母は元文学少女で佐々木丸美や三浦綾子を読んでいた。麻美は女流作家を目指した時期があるし、独自の世界観の持ち主。母親の仕事が増える一方だから9月以降に春奈を担ぎ出すのは厳しい状況にある。だがパート勤務の叔母ならそこまで多忙ではないし、京香と呼吸が合いそう。まず麻美をイベントに連れ出し、全てはそこからだ。皮肉な話だが、家族仲が深まるにつれて娘の参戦意欲がムクムクと湧き上がった。だが戦友となるはずの母親が超多忙になり、母娘コンビを組みにくい状況になった。となれば叔母を担ぎ出すしかないが、麻美さんの世界観はどうなのか?「元文学少女だからね。そこはきっと大丈夫」「だといいけどね」叔母は自己肯定感が低い人だからいち早く異世界の世界観に順応できそうな気がする。自己肯定感が高い人ほど順応に時間を要するが、麻美さんみたいな人は割と早く順応する傾向が強い。なまじプライドの高い京香とは対照的なコンビになりそうね。実は叔母も実家暮らしを窮屈に感じている一面があった。でも経済力がないから自立できないというジレンマがあり、参戦すれば最低時給2500円が保証される。時給830円のパートからすればあり得ない高待遇。万が一リタイヤしても、1度でも殿方と矛を交えれば次回からは最低時給3000円が保証されるのだから悪くない。今どき縁談のひとつも来なければ独身女性の実家暮らしはキツい。「麻美さんは苦労してるわね」「そりゃあね。まだ1度も殿方とお付き合いしたことがないもの」春奈と麻美は麗華女学院出身だが、姉は出世し大作家になった。かたや妹はいまだに実家暮らしでパート勤務だから内心忸怩たる思いがあるに違いない。[なろう]への小説投稿をやめて久しいが、麻美はいまだに女流作家への未練を持ち続けているようだ。「小説投稿は麻美さんの方が早かったわ」「いつしか逆転しちゃったのね」「特異な実体験が積めればなぁ」が叔母の口ぐせだが、最近ノベルバである小説を読んだ。「もしかしてアレ?」「そうよ」[真夏のエルニーニョ]の第1話を読んだ麻美は主人公の女の子になあんにも感じなかった。ビッチが学校やめた理由なんてあんなに勿体ぶって言うほどたいそうなもんでもない。あまりにも下らなすぎて2秒で忘れちゃった。しかも学校やめたのがたまたま6月なだけでタイトルのエルニーニョと全然絡まない。更に不可解なのはジャンル。現代ドラマらしいけどいったい何が始まるのか。まだ私が書いた方がマシ。麻美はさっそくリメイクを考えた。私ならきっと怪談かミステリー仕立てにするわ。そもそも6月から始まるビッチの汗臭ぁい現代ドラマにワクワクする人がリアルにいるわけないからね。タイトルは[真夏の怪人ベラ]。6月に学校やめたビッチが謎の怪人ベラに狙われる。ビッチはベラに荒療治され、真人間として生まれ変わる。

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