アナザーストーリー〜エレナ編〜1
閲覧ありがとうございます。
エレナの前世のお話です。なぜ、彼女が恋に臆病になったかを描いております。
最後までお付き合いいただければ幸いです。
昔から、少女漫画やお姫様が出てくる童話が好きだった。
大人になれば、それが現実じゃないってわかっていたはずなのに、それでも心のどこかで夢見ていた。
いつか、理想の王子様が現れて、私だけを選んでくれるって。
中学、高校、大学と進むにつれて、女友達と話す“恋バナ”がどんどん増えていった。
誰かに好きって言われて、頬を赤らめて、ちょっとした仕草に胸がときめいて。
私もいつか、そんな風に恋の話をできる日が来るのかなって、心のどこかでずっと思っていた。
でも、結局そんな日は訪れなかった。
中学時代、初めて告白されて付き合った彼は、すぐに私に飽きてしまった。
何度もデートをドタキャンされて、待ちぼうけばかり。
それでも「私が我慢すればいい」って思い込んで、ずっと待っていた。
ある日、デート中に彼の友達と偶然会って、「ちょっと話してくる」って言われたまま、6時間。
彼は結局、帰ってくることはなかった。
大雨のカフェで、冷めた飲み物を前に泣くこともできなかった。
あの日のことは、今でも夢に出るくらい忘れられない。
高校時代、気になる男子にデートに誘われた。
「俺たち気が合うな!」って楽しそうに言ってくれたから、すごく嬉しかった。
でも、デートが終わった瞬間に「次はゆみちゃんと一緒に行こう」って、私の当時仲良かった女友達を名指しして、笑顔でそう言われて。
気がつけば、彼はゆみちゃんと付き合っていた。
お昼休み、ゆみちゃんの幸せそうな惚気話を聞くのが、本当に辛かった。
友達としてニコニコその話を楽しそうに聞くふりをして、心はどこか遠くに追いやっていた。
数年後に届いた「俺のこと、好きだったろ?ごめんな」なんてメッセージに、昔の自分も今の自分も馬鹿にされたような気がして泣いた。
大学時代。言い寄ってきた人に、恋がしたいと思った。
でも、それは全部嘘で、結局身体だけが目的だった。
「誰でもいいんだよ」って言われたとき、自分がどんなにちっぽけな存在なのか思い知らされた。
それからは、男の人との話し方がわからなくて、ずっとニコニコして、顔色ばかり窺っていた。
いつからか、男の人と話すと、裏では「ビッチだ」って囁かれて。
誰も、私の気持ちなんて知らないし、知ろうともしてくれなかった。
社会人になって、久しぶりに心を許せるかもしれないと思った彼。
誕生日に旅行へ連れて行ってくれて、特別な日だと思っていたのに。
夜が明けて誕生日が終わった瞬間に、「はい、割り勘」って誕生日に払ってくれた分の割り勘を請求された。
まるで夢から醒めるように、全部が嘘だったと突きつけられた気がして。
結局、その後、彼は職場の後輩と浮気してたことがわかって。
偶然、街で見かけた時、二人はお揃いのネックレスをしていて、彼女は幸せそうで、それがやけに目についてーーああ、彼にとっての1番は彼女なんだって思い知らされた。
自分の価値なんて、どこにもないんだって、ただ虚しく笑った。
恋をするたびに、どんどん自己肯定感がすり減っていった。
好きになるたびに、夢見て、でも裏切られる。
傷つくのが怖くて、恋をするのが怖くなった。
友達が「彼がサプライズで指輪をくれたの!」って嬉しそうに話す横で、私は心の中だけで泣いていた。
乙女ゲームや少女漫画の世界にしか、私の“幸せな恋”はないのかもしれない。
そんな風に思うようになっていった。
恋に幻想を抱きすぎたのかもしれない。
でも、どうして私だけが、選ばれないんだろう。
私が悪いんだ。私が可愛くないから、ちゃんと向き合えないから。
もう、恋なんてしたくない――。
寂しいって思いながら、誰にも言えないまま。
気づかないふりをして、心のどこかでずっと泣いていた。
いつしか、大好きな乙女ゲームをしていても、時折虚しく感じるようになることもあった。
結局、病気を拗らせて、そのまま人生を終えた。
ほんの少しでも「幸せだった」って思いたかったのに。
……そして今、私はエレナとして生まれ変わった。
「おい、大丈夫か? うなされてたぞ。」
目を覚ますと、心配そうに私を見つめるルイがいた。
夢から覚めたばかりの私は、まだ現実の感覚を取り戻せなくて、目を瞬かせた。
「……うん、大丈夫。嫌な夢を見てただけ。」
「そっか。」
体を起こすと、ルイは何も言わずにそっと抱きしめてくれた。
そのぬくもりが、胸に沁みて、涙がにじんだ。
「……どうしたの?」
「……なんか、オマエがすごく辛そうな顔してたから。」
「ふふ……ありがとう。」
前世の記憶は、思い出さなくてもよかったのかもしれない。
思い出さなければ、あんなに臆病にならずに済んだかもしれない。
でも、全部思い出して、それでも今、目の前にいるルイが私を見つめてくれている。
前世では、夢を叶えられなかった。
幸せになれなかった。
でも、今この世界で、私はルイに出会って、ルイに愛されている。
それが、どれだけ奇跡みたいなことかを、私は知っている。
(どうか、もう二度と、この人の手を離さないでいられますように。)
私はそっとルイを抱きしめ返す。
怖い記憶も、不安も、まだ消えない。
でも、前世で見られなかった夢の続きを、今度こそ叶えたいと思う。
そして、願わくば、私を選んでくれたルイを幸せにしたい。
もう、モブキャラだなんて思わない。
誰かの一番になれる世界を、ちゃんと信じたい。
この想いを、もう二度と手放さないと決めた。
――それが、私の新しい恋のはじまり。
そして、私が私を信じる物語の続きだ。
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