水ダンジョン 第三層〜第四層
水ダンジョンの第三層では、俺たちのレベルが更に上がった。
そして魔物の数が異常に多かった。
調子に乗って、第三層の魔物を大量討伐してしまった。
なんやかんやで残業になったが、楽しかったな。
ドロップした物は、ほとんど魔石だった。
それでも儲けは中々のものだ。
スライムから出る、魔法の水筒の価値が異常なだけだ。
今は1本80万円弱くらいになっている。
ゴブリンに兎にスライムと、たくさん狩りまくった後に協会に一報を入れた。
西条の水ダンジョンは不人気ダンジョンだし、それがモンスターの大量発生の原因な気もする。
レベルアップの速さが異次元だ。
これで大丈夫か?
昨日は連携が取れてなかった部分があったので、反省会を最後にした。
予め、パターンを決めておいた方が混乱は無いだろう。
連携が完璧になるまでは時間がかかりそうだけど。
俺は若くない。
◇
さて、本日は休みだ。
現実逃避をしている暇も無い。
さっきレポートも提出できたし、あとは買い出しだ。
明日から泊まりがけでダンジョン攻略だ。
ということで、中古のコンテナハウスを準備した。
今日の午後は、これをアイテムボックスで運搬だ。
大きなベットとテーブルに椅子、魔導コンロ付きのキッチンを装備して、お値段100万円弱。
魔道コンロも貰い物だし、これ一つで100万円する。
なんて安上がりなのだろう。
オラの預金は激ヤバだけど。
帰ったら中の装飾を桜花と桃花に任せて、俺はハンター協会へ行く。
田中さんは専門外らしく、若い子に対応してもらったが、手続きが大変だった。
これでコンテナハウスの分を儲けようという算段だ。
午前に手続き、調整してもらって午後から手続き。
正直言って疲れた。
帰ったらコンテナハウスが凄かった。
半日でどうやって、ここまで綺麗になるんだ?
アイテムボックスに収納して明日に備えた。
もっとゆっくりしたいんだけど、俺の情報が凄い勢いで拡散しているみたいだ。
協会から漏れてる?
それとも、嗅ぎ回っている奴が居る?
◇
「オッケー。ダンジョン配信」
「はじまるよ〜!」
「ぱふーぱふー」
と言うわけで始まりました。
金のなる木。
じゃなくてダンジョン攻略生配信。
情報が独り歩きをするくらいならって意味もあるが、リスナーと楽しく攻略できるらしい。
金儲けもあるし、仲間募集のとっかかりにならないかとも考えている。
配信をしてどのようは反応があるか見物だ。
昨日頑張った甲斐がある。
仕組みについては後で説明するが、目の前には立方体の魔道具が浮いており、魔石で起動している。
[おはようございます]
[8時からやってるなんて珍しいですね]
[本当に美人!]
[彼が日本最弱?]
コメントも流れている。
バッチリだな。
少し字が小さくて見にくい。
「一応、日本最弱らしい」
「今日はその名前を覆すわよ!」
「ん。汚名挽回」
桜花はテンション高いな。
桃花は日本語間違っているぞ。
[それを言うなら名誉挽回]
[日本最弱のどこが名誉なの?]
[汚名返上だな]
[勉強して出直せ]
思わず笑ってしまった。
これは悪くないな。
なるほど、桃花はワザと間違えたか。
満足そうにしている。
「今日は17時まで、お昼休憩を挟んで9時間連続の生配信になっています」
「私の魔法に刮目せよ」
「じゃあ、第一層から進んでいくよ」
二人ともやる気満々だな。
俺はステータスを確認してから出発した。
【トウヤ ツカサ】
【Lv17】
【鑑定ⅩⅩⅩ・アイテムボックスⅩⅩⅩ・幸運ⅩⅩⅩ・直感Ⅶ・物理攻撃補正ⅩⅩⅩ、魔法防御補正ⅩⅩⅩ、剣技Ⅹ、物理防御補正Ⅰ、生活魔法Ⅴ、パティー編成Ⅰ、水中呼吸、スライム特効ⅩⅩⅩⅡ】
【ステータス】
体力:322
魔力:141
物理攻撃:141(+85)
魔法攻撃:141
物理防御:320 (+6)
魔法防御:141 (+85)
器用:139
回復効率:138
俊敏:165
幸運:30 (+120)
【伊藤 桜花】
【Lv17】
【スキル:物理防御補正ⅩⅩⅩ、魔法防御補正ⅩⅩⅩ、治癒魔法ⅩⅩⅩ、魔力補正ⅩⅥ、水中呼吸、スライム特効ⅩⅩⅩⅠ】
体力:302
魔力:138 (+44)
物理攻撃:138
魔法攻撃:138
物理防御:302 (+181)
魔法防御:138 (+83)
器用:138
回復効率:325 (+195)
俊敏:138
幸運:20
【伊藤 桃花】
【Lv17】
【スキル:魔法攻撃補正ⅩⅩⅩ、魔法防御補正ⅩⅩⅩ、火魔法ⅩⅩⅩ、魔力補正ⅩⅥ、水中呼吸、スライム特効ⅩⅩⅩⅠ】
体力:334
魔力:138 (+44)
物理攻撃:138
魔法攻撃:196 (+118)
物理防御:334
魔法防御:138 (+83)
器用:138
回復効率:180
俊敏:138
幸運:30
◆
さて、第一層はスライムだけだ。
但し、ドロップは多いし、経験値も多い。
[スライム特効は伊達じゃない]
[有名なだけある。それでも、異常なドロップ率だ]
[スターチ出過ぎだろ]
[やばすぎ]
だろう。
未だに64倍だからね。
しかも、幸運値は上がり続けている。
幸運値でもドロップ率が良くなるらしい。
[あ、魔法の水筒]
[初めてドロップ見た。最近オークションでよく見るけど]
[もしかして、大量出品は日本最弱氏が原因?]
[いきなり100万円!]
[今は70万ちょっとだよ]
どんどんマジックバックに収納、したと見せかけてアイテムボックスに入れていく。
すぐに第二層に入ってゆく。
「火よ」
「せーやっ!」
桃花の魔法と桜花のメイちゃん捌きがひかる。
ゴブリンがバタバタと倒れて、俺はドロップ回収に徹する。
[メイス使いちゃん、強い]
[普通のメイスだよな?]
[笑顔でゴブリンを撲殺していて引く]
[撲殺天使]
撲殺天使って。
だめだ。
それにしか見えなくなってきた。
[火魔法強すぎだろ。ゴブリン相手になってない]
[発動が速い]
[ベテラン魔法使いがコメントしてる?」
[凌辱不可能]
ゴブリンは女に向かいがちなんだ。
理由は繁殖目的だ。
[日本最弱氏、画面に映らなくなる]
[草]
[www]
第三層の階段がもう見えてきた。
さっさと突入だ。
ドロップ回収の方が大変かもしれない。
装備で俊敏+100なんだけどな…
「昨日程では無いわね」
「押して参る」
桃花はいつの時代の人だよ。
面白いから良いけど。
リスナーも受けてる。
「炎弾!」
「えい!」
炎の大爆発がそこら中で起こる。
漏れた敵をメイちゃんが始末する。
こっちにも来た。
[火魔法が強い]
[水属性と相性悪いのに]
[相性悪いのに、日本最弱氏は鬼畜w]
[本当に画面に映らんw]
リスナーが300人を超えている。
美女二人の効果は絶大だ。
「おっと、回収しないと…」
関心してばかりも居られない。
二人は楽しそうに撲殺&爆殺してるから、ドロップアイテムの魔石が散乱している。
画面外でアイテムボックスのスキルを使わないと間に合わないな。
[二人は強い。レベル30くらいありそう]
[結構、安全マージンは取ってるんだな]
[日本最弱氏に合わせてるだけでは?]
[あ、そっか]
ここまででだいたい1時間半か。
かなりの好ペースだ。
[敵の数が多過ぎ]
[不人気ダンジョンらしい]
[新宿ダンジョンは奪い合い]
[流石は地方]
入ってくる経験値の量がおかしいんだ。
倒す数がおかしいからなんだけどね。
「第四層の階段がありましたよー!」
「慎重に行く」
「桃花、お前が言うか?」
「最初の時とは違う」
桃花が口を膨らませた。
可愛い過ぎるだろ。
[可愛い]
[やば。かわ]
[結婚して]
[鏡見ろ]
分かってくれるかリスナー達よ。
投銭ありがとうございます。
「第四層は水蝙蝠だ。飛ぶから気を付けて…」
直感に嫌な予感がビビッと来る。
なんか押し寄せて来ている。
「なんか飛んできたんですけど?!」
「火よ。対空戦闘」
桜花が逃げてきた。
水蝙蝠がすごい数で出てきた。
空に対する攻撃手段が無いからね。
[オウカさんも可愛い]
[脱兎のごとく]
[火魔法が対空砲火だ]
[弾幕を張れ!]
俺は剣で相手をする。
桃花が圧倒的な強さを発揮している。
[敵、多過ぎて草]
[それにしても異常]
[3人で対処する方も異常]
桃花もウォータラビットとかを処理してゆく。
なんか大混戦だな。
[メイスちゃん、回復魔法使ってる]
[バーサクヒーラーだった]
いや、バーサクヒーラーって。
本当だ。見た目、そんな感じだった。
撲殺天使バーサクヒーラー。
[あ、なんか出た]
[凄いの出たぞ!]
[スクロール!]
[何から落ちた?!]
リスナーの反応が早いな。
どれだ?
「とーや! コレ見て!」
水蝙蝠を殲滅した桃花がスクロールを持ってきた。
頭を撫でてやると嬉しそうにした。
[忠犬]
[犬っぽくて可愛い]
[日本最弱が彼氏?]
[いや、たぶんだけど身内でしょ?]
ファンが出来つつあってよし。
早速鑑定しておこう。
【スキルスクロール】
『棒術Ⅴが習得できる』
これはバーサクヒーラー行きだな。
メイスは棍棒だからね。
「桜花が使え」
「え? 私ですか?」
「俺と桃花はドロップを拾っておく」
桜花は迷っていたみたいだけど、リスナーに促されて使っていた。
その後、メイスをぶん回していた。
「お姉、楽しそう」
「桜花、バーサクヒーラーって言われてたぞ」
「的を射ている」
「そこ! イチャイチャしない!」
さて、回収したら第四階層だ。
水蝙蝠の襲撃で引き返したからな。
階層超えてくるとは思わなかったわ。
◇
スキルスクロール。
これを使うとスキルを覚えることができます。
スクロールを使うのは二度目ですが、スクロール一つで数百万円から数億円もするらしいです。
本当に私が使って良いんですか?
[オウカちゃん! 使っちゃえ!]
[これで益々、バーサクヒーラー]
[何のスキルだろう?]
[スクロールドロップの瞬間を捉えた放送なんて、限られている。初回にして神回が来ている]
「そうなんだ」
知らないことだらけですね。
皆さん物知りです。
「えっと、使いますね」
スクロールを開いて念じた。
前回と一緒だ。内容を知らないだけで。
ホワイトアウトして、すぐに収まる。
「なるほど。スキルを覚えましたよ」
[何のスキル?]
[ワクワク]
[ドキドキ]
何でしょう。
リスナーさんと一緒に楽しんでいる感じが良いですね。
「知りたいですか?」
[勿体ぶるなー]
[小悪魔ヒーラーだ]
[それも可愛い!]
反応はそれぞれ。
みんな面白い。
「仕方ないですね〜」
まあ、焦らすのはこれくらいで良いでしょう。
メイちゃんを振り回してみますが、動きが軽いです。
「私が習得したのは棒術です」
[あの動きで無スキルだったの?]
[オウカ、恐ろしい子]
さあ、次の敵を倒しに行きますよ!