水ダンジョン 第四層〜第六層
ゴブリンは燃え盛る。
コウモリは雨の様に降り落ちる。
ウサギは殴り飛ばされ、スライムは瞬時に消滅する。
第四層もあまり変わり映えがしない。
敵を屠ってドロップを集めていく。
[敵の数多ww]
[流石に異常ww]
[ウォーターラビットがお星様になっちゃった]
遮蔽物が無いので会敵率が高く、ほとんどのモンスターが一直線に俺たちのところに向かってくる。
第五層の階段を発見したのは、探索開始から3時間が経過したところだった。
「水分補給したら次に行くぞ」
「「はい」」
俺はステータスを確認する。
装備は非表示とした。
【トウヤ ツカサ】
【Lv30】
【鑑定ⅩⅩⅩ・アイテムボックスⅩⅩⅩ・幸運ⅩⅩⅩ・直感Ⅶ・物理攻撃補正ⅩⅩⅩ、魔法防御補正ⅩⅩⅩ、剣技Ⅹ、物理防御補正ⅩⅣ、生活魔法Ⅴ、パティー編成Ⅰ、スライム特効ⅩⅩⅩⅡ】
【ステータス】
体力:580
魔力:245
物理攻撃:245(+147)
魔法攻撃:245
物理防御:580 (+162)
魔法防御:245(+147)
器用:240
回復効率:240
俊敏:240
幸運:50 (+120)
【伊藤 桜花】
【Lv30】
【スキル:物理防御補正ⅩⅩⅩ、魔法防御補正ⅩⅩⅩ、治癒魔法ⅩⅩⅩ、魔力補正ⅩⅩⅨ、棒術Ⅴ、スライム特効ⅩⅩⅩⅠ】
体力:562
魔力:400 (+232)
物理攻撃:242
魔法攻撃:242
物理防御:614 (+368)
魔法防御:242(+145)
器用:242
回復効率:637 (+382)
俊敏:242
幸運:24
【伊藤 桃花】
【Lv30】
【スキル:魔法攻撃補正ⅩⅩⅩ、魔法防御補正ⅩⅩⅩ、火魔法ⅩⅩⅩ、魔力補正ⅩⅩⅨ、スライム特効ⅩⅩⅩⅠ】
体力:581
魔力:242 (+140)
物理攻撃:339
魔法攻撃:339(+203)
物理防御:581
魔法防御:339 (+203)
器用:242
回復効率:310
俊敏:242
幸運:43
明らかにオーバースペックだ。
レベルアップの速さも普通ではない。
リスナーに見せたら反応をくれるだろうが、情報を公開しすぎるのも良くないだろう。
これなら五層のバスも軽く倒せる。
「じゃあ、行こうか」
第五階層は水没区画だ。
スキル【水中呼吸】を取得したのもこれの為だ。
いや、貰ってて良かった。
もらった時は宝の持ち腐れだと思ったんだ。
貰い物を売るのは忍びなくて倉庫の肥やしになってたんだけど、よく売らないで置いていたことだ。
あと五個もスクロールがあるんだぜ?
[水中はゴブも兎も蝙蝠も出ないんだ]
[じゃあ、なんで狼は出るんだ?]
俺もそう思ったんだ。
で、実際見てみるとだな。
「あぶびばびぶばば」
「おおばびばべばばばば」
「ばびぶべべばばばばん」
狼にエラが付いているんだ。
だから狼だけが登場する。
「ぶべべべばべ」
水中では壊滅的に会話ができない。
意思疎通が非常に困難だ。
単純に進む速度も遅いし、身体が疲れる。
[言語ww]
[さすが水中]
[水中での会話は慣れが必要らしい]
我々は狼との戦闘で忙しい。
水中戦はやりにくい。
尺が長い。
やりにくい。
そりゃ、配信でも不人気だ。
特に火魔法が使えないから、桃花はウォーハンマーの穴の部分で狼の首を上手いこと傷つけている。
打撃武器が使えないな。
[メイちゃん2号登場]
[大きなトンカチ]
[トウカちゃんに似合う]
桜花とメイスで応戦しているが、水中では威力が減衰しているみたいだ。
おかしいな。なんで効くんだ?
スキルを使って頭を粉砕しているのか。
バーサクヒーラーここに健在だ。
俺は剣でブッ刺してゆく。
[日本最弱が強い]
[何? あの剣]
[普通に戦えてる]
[誰だ弱いって言った奴]
誰だよ! すっとぼけている奴は。
これだけのステータスがありながら苦戦とまでは行かないが、先程までの余裕が無くなるのがこの水ダンジョンだ。
[いよいよ、本番ですな]
[伊予だけに]
[伊予西条ですからな]
[座布団3枚!]
伊予西条の水ダンジョン。
第五層から難易度が高くなることで知られており、攻略が進んでいないダンジョンなのである。
「誰だよ。上手いこと言った奴は…」
思わず反応してしまった。
ふう。
とにかく陸へ上がろう。
出口が見えてきた。
かれこれ1時間は潜っていたか。
かなりの狼を討伐した。
狼肉って美味しいのかな?
「「ぷはぁ〜」」
桜花も桃花も水から出てくる。
水も滴る良い女。
「では、一旦休憩しますので、1時間後に!」
配信を中断して生活魔法を発動した。
この階層、マジで大変。
温風最大出力!
◇
第五階層のボス部屋前はセーフティーゾーンになっている。
野営する時はここでするのが基本だ。
さて、ここでお昼ごはんだ。
腹が減っては戦はできぬ。
今日はハンバーガーです。
手も汚れないし良き。
きっかり1時間の休憩時間をとってからボス部屋に行く。
[はじまりましたー!]
[バス部屋騒動ー!]
リスナーも元気良いな。
うわ。
視聴者1000人超えてるんだけど。
「桜花。コメントちょうだい」
「え? えっと〜、今からバスを倒してきます!」
「桃花も」
「ウォーハンマーの鯖にしてくれる」
「ちゃんと手入れしろ」
桃花がノリノリでリスナーに受けている。
よしよし。
[手入れしろ(爆笑)]
[返しが秀逸(爆笑)]
投銭感謝。
さて、気を引き締めて、ボス部屋に突入する。
ボス部屋も水没区画だ。
[出たー!]
五階層のボスは『ボスブラックバス』である。
突撃してくるので、噛まれない様に避けながら叩いてゆくのが基本戦術だ。
[は?]
[日本最弱、バスに喰われる]
[事故動画?!]
[え? バスが真っ二つに?!]
俺は口の中から一刀両断してやった。
兜割り!
三枚おろし!
[ブラックバスの三枚おろし]
[ボスが瞬殺だった件]
[バスが瞬殺だった]
大分、魔力を使ったけどね。
剣術スキル10は伊達じゃなかった。
さて、ドロップアイテムは…
【勾玉の首飾り】
『装備品』『状態異常耐性』
【バスの肉】
『食用の肉。魔力の営業で臭みが無い』
【バスメイス】
『打撃武器』『水中でも威力減衰なし』『攻撃力+18』『命中率1.1倍』『売却額:40万円』
「お姉。これ、メイちゃん3号」
「先っぽがバスですね」
桜花の武器が更新された。
状態異常耐性の首飾りもヒーラー行きとなった。
桜花が状態異常にならなければ回復できるからね。
◇
少し休憩してから第六階層に進む。
第六階層に出現するのは水蟷螂と水蝙蝠だ。
蟷螂は昆虫系によくある防御力が高いモンスターだ。
攻撃力もあるので、推奨レベルは35以上である。
俺達はレベルアップに伴うステータスの増加量が多いから、推奨レベルもアテにならないけどね。
「水の魔物は火に強いけど、昆虫系は火に弱い」
ここでは桃花の火魔法が大活躍だ。
蟷螂も蝙蝠も苦戦することなく倒れ、俺も桜花もドロップ回収に追われた。
桜花がマジックバックで集めて、後で俺のアイテムボックスに収納する流れだ。
マジックバックだけでは、満タンになっていただろう。
アイテムボックスはまだ余裕がある。
「トウヤ。撃ち漏らした」
「あいよ!」
蟷螂野郎が躍り出たので剣を構える。
鎌で攻撃してくるが、剣で往なす。
膂力があるな。
首を跳ねて終わらせる。
関節部分は弱いな。
「あ、落ちた」
「え?」
「スキルスクロール?」
[出た!]
[本日二回目?!]
[奇跡!]
なんということでしょう。
スキルスクロールが落ちているではありませんか。
これにはリスナーも興奮を隠せない様子。
【スキルスクロール】
『物理防御補正Ⅴが習得できる』
[Vが出るとは、また珍しい]
はい。桃花行きです。
他の二人は大器晩成でトリプルエックス持ち。
唯一スキルを所持していないのが桃花だ。
「じゃあ、これは桃花ね」
「ん。覚えた」
「早っ!」
「桃花。躊躇いってものは無いのね」
「もち。物理防御補正だった」
桃花が配信魔道具に道向かってVサインをする。
コメント欄が盛り上がってるな。
バスが呆気なさすぎて短くなってしまいました…