0話 ダンジョンとハンターについて
世界各地にダンジョンが現れて11年が経った。
ダンジョンのモンスターから得られる魔石がクリーンなエネルギー源となることが判明すると、世界各国はこぞってダンジョン探索を推し進めた。
探索をする者達をハンターと呼び、魔石や鉱石、食糧や薬など、社会構造に大きな変革を齎している。
ハンターは危険と隣り合わせの職業だ。
それでいて、最近の低レベルでは赤字となる。
低レベルハンターでの低収入は、近年で特に顕著になってきている。
アルバイト以下と揶揄されることもある程だ。
ダンジョン出現初期は魔石の買取価格も高かったが、今ではレアドロップを運良く引き当てない限り、命をかけるに見合った報酬は無い。
そのレアドロップも低階層では見込めない程の低確率だ。
そういう実情があるのでアルバイトとの掛け持ちのハンターが一定数は居る。
初期にレベルが上がりにくく、ハンターが育ち難いのは、こういった事情もある。
その生活が長期に渡ると、アルバイトから就職にフェードアウトする人が多いのも確かだ。
要因は他にも色々あるが、ハンターの絶対数が中々増えない事情がある。
しかし、高レベルハンターは高給であるのも事実だ。
レベル30台になると10階層くらいまで潜れるダンジョンが多く、8時間労働では時給3000円を超える程度のダンジョンも存在する。
この段階へ至るに要する最短の時間は2ヶ月と言われている。
レベル100を超えると月収の手取りが100万円を超え、レベル500では月収で数十億になる。
条件によって異なる結果にはなるが、実に夢がある額だ。
魔物の種類とドロップアイテムは各ダンジョン毎に異なるが、通常ダンジョンによる同階層でのモンスターの強さは世界共通である。
多少の誤差はあれど、同じ階層で特別難易度が高いダンジョンは存在しないのだ。
難易度が少し低い階層は存在する。
また、あまり階層が深くなりすぎると環境の影響も大きく受けて、階層とモンスターの強さの関係はアテにならなくなるが。
当然だが、探索できるハンターも少なく、また相性にもよる為にデータが少ないというのが実状だ。
ダンジョンは深層になればなるほど、モンスターの強さも上がってゆく。
環境による難易度の他に、大規模ダンジョンの階層の深さで難易度が生まれる。
小規模ダンジョンは20または30階層のものである。
ダンジョン誕生初期には小規模ダンジョンが多かったが、大抵が中規模ダンジョンに変化している。
目安として、レベル100程度なら最下層を攻略できる。
中規模ダンジョンは50または60階層のものである。
レベル900程度で最下層を攻略できる。
そのため、未攻略ダンジョンは少なくない。
大規模ダンジョンはそれ以上のものを指し、階層数は不明である。
世界に7箇所あり、そのうち日本の硫黄島ダンジョンはあまりに有名だ。
日本国内トップのハンターはレベル2100と言われている。
ステータスは公開されていないが、大まかな推測値は出ている。
それもどこまで正しいかは疑問である。
ステータスの伸びは個人差が大きいからだ。
ステータスの基本は10項目だ。
体力、魔力、物理攻撃、魔法攻撃、物理防御、魔法防御、器用、回復効率、俊敏、幸運で構成されている。
他に、隠しステータスがあるとも言われているが、それについて後述することにする。
ステータス10項目は人によって伸びが様々だ。
自己にて振り分けるポイントなどは無く、全てが自動で強くなってゆく形だ。
では、レベルが1上がる毎に伸びる項目の数値について説明をしてゆこう。
体力は伸びやすく、平均20と言われている。
生産職は低い傾向だ。
魔力は魔導士や魔法戦士系で平均20の伸びだ。
生産職のほか、物理特化のハンターは伸びが低い傾向にある。
物理攻撃力と魔法攻撃力は平均10だ。
過去最高は45を記録したとも言われているが、物理・魔法のどちらか片方は伸びが悪い項目である。
稀に例外は存在する。
体力の自然回復は30分で1回復。
魔力は8時間で全体量が回復する。
体力は地上での回復力が変化するが、魔力は変化しない。
物理防御と魔法防御は平均17.5の上昇率である。
共に伸びが良い項目であり、タンク系は特に伸びが良いとされている。
生産職は伸びが悪い。
器用は生産職なら40ほどの伸びだ。
その他は平均7.3である。
回復効率は白魔導士なら高く平均22だ。
その他は平均4.9となっている。
俊敏値は個人差が特に目立つ。
生産職は平均3となっている。
過去最高は42を記録している。
幸運値は最も個人差が目立つ。
平均は0.31である。
このように、ステータスは個人差が出る。
このステータスが装備やスキルの影響し合っている。
ステータスの伸びもタイプが存在する。
早熟タイプはダンジョン登場初期から活躍したハンターに多いとされている。
六年程前からは均一成長タイプと呼ばれるハンターが頭角を伸ばしてきている。
晩成タイプも居ると考えられているが、もう少し時間が必要だと考えられている。主張する研究者がそう言っているだけだが、可能性は未知数だ。
装備品でステータスが上がるのは勿論だが、ステータスが未熟だと装備できないものがある。
鑑定では装備の可否が確認できず、相互関係を世界中で研究中である。
スキルも相互に影響している。
ステータス系のスキルがステータスを補完している。
同じスキルでも補正値には個人差があると言われている。
ステータスの伸びが良くなっただけ、という意見もある。
一部においては都市伝説だと言われているが、スキルを身につけるとステータスの伸びが良くなるのは、統計的に間違い無いとされる。
技能系のスキルは器用値が影響しているとされる。
技能系とは魔法や剣技などであるが、器用値が良いと魔力消費が少なかったり、手数が多くなったり、熟練度が上がりやすくなったりする。
これも統計的に、おそらく合っている、という程度だ。
魔法や剣技のスキルは謎が多い。
スキルの技を使っていく内に、使える手数が増えてゆく。
隠しステータスが反映されていると言われている。
技については個人差が大きい。
同程度の技量と思われるハンター同士でも、使える技は一緒にはならないのだ。
魔法は呪文がある訳では無い。
無詠唱でも使うことができる。
具体的なイメージで魔法が発動するため流派も存在しない。
スキルには一同に土魔法なり火魔法なりと現れる。
しかし、同じ魔法スキルでも個人差が激しいのだ。
故に皆が我流なのである。
魔法を使う個人が最もイメージし易い方法で魔法を行使しているのが実状だ。
その方が効果的だったりする。
パーティの場合、魔法を行使する合図にもなるしね。
誤射は怖い。
同じ魔法スキル、同規模の魔法、同規模のステータスで敵を攻撃した実験がある。
この実験で個人によってバラツキが出たのだ。
当たりどころによってもダメージは異なるため、何度もテストしたが、攻撃力が飛び抜けている人が何人か居た。
これも隠しステータスが影響していると言われている。
とにかく、11年で分かったことは多くない。
ダンジョンから資源が得られ、ハンターがそれを取りに行く。ハンターはモンスターを倒して強くなり、資源を得て帰る。
日々それの繰り返しである。