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2-1 八百万のプロフィール帳神話 ~前編~

 プロフィール帳。それは、名前、星座、血液型、好きな物、心理テストや恋バナ的な質問の答えをページに書き込む手帳のことだ。


 書き込んだページは簡単に手帳から切り離せる。それを友達にあげたり、逆に友達からもらったりすることで、いろんな人のプロフィールをコレクションできるという遊びだ。


 あたしは、昔人間界でそういうのが流行ってたことを思い出す。そしたら無性にプロフィール帳で遊びたくなってしまった。


 でも、近所の店を巡って探し続けたのに、結局プロフィール帳は見つからなかった。


 だから諦めて帰路につくことにした。すっかり日が落ち、夜の闇が辺りを包み込む。見上げると雲一つない星空が広がっていた。


 疲れ果てて帰宅し、今日は早めに寝ようとお布団に入ったとき、ケータイ彼氏のダルオモちゃんから一通のメールが来た。


〔めぐ、起きてる?〕


 あたしはすぐに返信した。


〔何かあった?〕

〔今日、静野神社でお賽銭3万円入れた人いたよ〕

〔マ?〕

〔願いは『経営を立て直せますように』だって〕

〔はい来ました専門外案件、こちとら美容の神じゃい〕


 詳細は不明だし、その願いはどうやって解決すればいいか想像つかない。あたしは最近仕事をサボりぎみだったけど、今回は金額がでかい。こういうVIP客は確実に心願成就まで導かなきゃなので、めっちゃ責任を感じることになった。


 ふと、姉貴のことが頭をよぎった。姉貴に聞けば、こういうときどうしたら良いか教えてくれるかも。


 とりま明日朝イチで姉貴に会うべく天神館に行くわってことにして今日は寝ることにした。


 スヤァ……。


◇◇◇◇◇


 翌日。


 天神館は役所、図書館、食堂などがある公共施設。そして、『姉貴』というあだ名で呼ばれている天界で一番偉い女神が住まう場所でもある。


 自分のような未熟な神ではなく偉大な神なんだから、もしかしたら全知全能かもしれないと期待した。なお、あたしは姉貴に会うのは初めてだから緊張中の模様!


 あたしは階段を上り、無駄に大きく重そうな扉の前に立つ。


「姉貴いるー??」


 扉は勝手に開いた。この見た目で自動ドアなのかよ……。


「私だ。私が天界の姉貴こと晴風あかねだ。やあ、めぐちゃん。私の知恵が必要かい?」

「げっ、どーしてあたしの名前知ってるの?」

「『げっ』とはご挨拶じゃないかね? あ、名前のことは、この前『例の鏡』の件でテレビに出てたから知ってるさ。あんた何気に有名なんだから」


 姉貴は美しい白髪をいじりながらあたしに問う。


「で、用件は?」


 あたしは姉貴に事情を話した。


「要するに、自分を祀ってる神社の賽銭箱に大金ぶっこんだ人間がいるから、専門外の祈願だけどどーしても助けたいってことだな?」

「うん! そゆこと。で、あたし何したらいいかな?」

「分からん」

「え?」

「めぐちゃんって、もしかして世間知らず? この私をもってしても流石に全知全能じゃないよ」


 じゃあさっきまでの強者感は何だよ……でも、なんやかんや姉貴は優しいから、占い師を紹介してくれた。


「本当に世間知らずだなぁ、常識だからこの際教えてあげるよ。占い師の名はアマノコヤネ。天神館の最上階にいる。せっかくだから案内するわ」


 あたしは姉貴に連れられる。エレベーターが最上階に近づくと、ガチャガチャと機械音が聞こえてきた。姉貴が知らないことも知っているアマノコヤネってどんな神なんだろって思っていたが……。


「ここが最上階だ」


 扉が開いた途端、機械音はめっちゃ鮮明に聞こえるようになった。正直ちょっとうるさいレベルだ。


 部屋の入口には『天の小屋根』と書かれた立派な暖簾のれんがあった。それを潜ると、そこには金色の小さな歯車、ぜんまい、糸が組み合わさって動く謎の物体が視界一杯に広がっていた。フロアを埋め尽くすほどの大きさだ。姉貴は自慢げに口を開く。


「これが、私が2000年かけて製作した、からくり式スーパーコンピュータ《天の小屋根》だ」

「……は? アマノコヤネって神じゃなくて機械なん!?」


 占い師の正体は、まさかの精巧に建造された古代の機械だったってこと。アマノコヤネは割と物理的な意味でこの階に鎮座していた。


 あたしは姉貴に説明してもらいながら、


〔シズノジンジャ 3マンエン ダレ〕


 とタイプライターで打ち込んでパンチカードを作り、それを所定の位置にセットした。すると、パタパタと文字板が回転して文章が出てきた。


〔ミライニッキコウボウ シャチョウ〕


 未来日記工房っていう会社の社長らしい。あたしは、何これ超めんどくね? と思いつつも数十回質問を繰り返して結構色んなことを聞き出した。


 今回の参拝客は、ノートや手帳の製造業を営む一人社長、シイナ・ナツミという人物とのこと。


 この会社は現在、紙材の在庫を過剰なまでに大量に抱えており、資金不足に陥っている。紙材は狭い職場には入りきらず、そのほとんどを実家に置いているらしい。


 そして最後に姉貴は大事な話があると言った。


「で、こっからが肝心なんだが……アマノコヤネは、未来をシミュレートすることもできるんだ。しかも99%当たる」

「99パー!? もはやシミュレートっていうより、予言じゃね?」

「そうだ。そのまま放置してれば、アマノコヤネの言葉は現実になる」

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