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宇宙人を轢いた友人

作者: 雉白書屋

 ある夏の夜。アパートの自室でテレビを見ながら涼んでいた男は、インターホンが鳴ると部屋の時計に目をやり、そして億劫そうにソファーから立ち上がり玄関に向かった。


「……おい。結局、来るならそう連絡しろよ。まあ、風呂あがったところだったから良かったけどよ」


「ああ……悪い」


「なんだよ、元気ないな。まあ入れよ」


「ああ……」


 と、ドアを開けた彼は友人に中に入るよう促した。そして冷蔵庫から取り出した二本の缶ビールのうちの一本を床に座った友人の近く、テーブルの上に置くと先程から強まっていく疑念を口にした。と、言ってもこの時点ではまだ大したことではないと思っていたが。


「……なあ、なにかあったか? 飲むどころか手に取りもしないし、顔が青いぞ」


「ああ……その……聞いてくれるか?」


「ん? ああ。まあ気になるからな。連絡が途絶えて、結局今日は呑みに来るのやめたのかと思ったよ」


 彼はそう言い、缶ビールを開けた。子気味のいい音に心躍る。しかし、友人がまだ見もしないことに顔を顰めた。

 もしかしたら事態は深刻なのかもしれない。緊張で喉が鳴る。


「なぁ……」


「実は……ここ来る途中、その……轢いちまったんだ」


「ひい……た? 轢いた? え、あ、動物とかだよな、ははっ……」


「あいつ、急に、急に横から車の前に出てきたんだ……俺、アクセルを踏み込んじまった……」


「ああ……そんな、そうか……でも、さ、急に飛び出してきたのなら仕方ないんじゃないか……?」


「いや……それでもブレーキを踏んでいれば間に合っていたと思う……でも、俺、驚いて……怖くて……」


「そう……か……うぅん……」


「まさか、宇宙人と出くわすなんて……」


「そう……ん?」


「ほんと、キモい見た目でさ、俺、思わず殺さなきゃって」


「んん?」


「一度轢いた後、バックしてもう一回轢いてさ」


「んんん?」


「で、車から降りてもまだ、そいつ生きててさ、で何か喋ってたんだけど口から、血みたいなの飛ばしてさ。キモくて、イラッときたんでぶん殴ってやろうかと思ったんだけど、でも毒があるかもわからないだろ? だから踏んだり、落ちてた太い木の枝とか、あ、あと石とかでとどめを刺してさぁ。いやー、参ったよホント」


「いや、お前、途中から武勇伝みたいな感じで話してるけど、え、宇宙人?」


「ああ……俺、俺、殺しちまった……」


「いや、いまさらその暗い顔に戻られても無理だよ。お前の弾けるような笑顔を見ちまったんだから」


「未だに体が震えているよ……へへへ……」


「それ、興奮してるだけじゃ……。いやまあ、つらいはつらいか。命を奪ったんだもんな。で、その口振りだと、俺らと似てるタイプの宇宙人だよな?

四足歩行とかじゃなく、よくあるあれ、あの目撃談みたいな。まあ、あれは嘘だろうけど。いや、でもお前の話が本当なら、あれも本当だってことか……?」


「ああ……あのやつさ。ホント、こう、とどめを刺そうとしている間にさ何て言うかな、いろんな表情、変化を見せてくれてさ。それに服を毟りとってやったらさ、え、そんなとこにそれがあるの!? なんて発見もあったり、もう限界かな? と思ったらまだまだ全然行けるよ! なんて思わせてくれたりとにかく、もう興奮しっぱなしだったよ!」


「いや、そんなただの大食いメニューかと思ったら、意外と味とかこだわりとか隠し玉があって最後まで食えましたみたいな感じで言われてもさ……」


「ああ……可哀そうなことしちまったよ……毒があるかもわからないから食って供養なんてこともできないしなぁ……うぅ……」


「感情の起伏が激しいなお前は」


「でも、自分がしたことに怖くなっちまったのは本当なんだ」


「俺も怖いよ。さっきのお前には狂気を感じた」


「だってさ、連中の仲間が復讐に来るかもわからないし、それにみんなに知られたら、そんな希少なものを殺すなんて! って責められるかもしれないじゃないか」


「ああ、まあ確かになぁ……」


「だからさ、俺もうパニックになっちゃって車のトランクに宇宙人を詰め込んで家まで引き返してさ。

で、今年の冬のストーブの燃料がまだ残ってたから、それとあと適当に燃えやすそうな物を持って家近くの林に行って、掘った穴の中で燃やしたんだよ。燃えやすいよう、残っていた服を全部脱がせて、あと骨も石で砕いてさ」


「結構、冷静だなお前」


「いやー、疲れたよ。で、連絡もつかずに遅くなったわけさ。ふぅー全部話したらすっきりしたよ! おなかすいた。なんかツマミないの?」


「ふてぶてしいなぁ、お前は」


「ははははっ。あ、おい。全部本当の話なんだぞ。信じてないだろお前」


「うーん、まあ、どっちでもいいかな」


「おいおいおい。まったく……。多分、道路に血は残ってるから今から見に行くか?」


「いいよ。大体、雨降って来たし」


「あ、ほんとだ。証拠が消えるなぁへへへへ」


「もう、完全に犯人の思考だな」


「おいおい人聞きが悪いなぁ。あ、まさか、お前。俺が本当は宇宙人じゃなく、人間を轢いたと思ってないか? 俺の現実逃避だってさ」


「まあ、その可能性を考えなくはなかったけど、まあ信じるよ。だってほら、顔についてるのそれ、宇宙人の血だろ?」


「え、マジ!? うわ、ばっちいなぁ」


「ほら、とってやるよ。へぇ、やっぱり俺らとは血の色が違うんだな。ああほら、触覚にもついてるぞ」


「おお、サンキュ」


「で、そいつ何て喋ってたんだ? まあ、わからないか」


「うーん、まあ助けてとかそういう意味じゃないかなぁ。『ヤメローワタシハチキュウジンダ! アイアムジャパニース!』てさ! はははははははっ!」

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