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脳筋不器用元貴族のやり直し  作者: ゆめのなかのねこ
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【第29話】スタンピード後

スタンピードを撃破した後、いろんな人が家を訪ねて来た。


まずは町の人たちの各代表。

たとえば道具屋とか、服屋とかから代表者が各1名、早朝に連れだって、わざわざお礼を言いに来た。


たくさんの食料やお菓子が山のように届けられ雑魚寝部屋に置かれる。

もっと早くほしかったなと思ってしまったが、これはスタンピードから町を救ってくれたことに対するお礼であり、施しではないと思い直した。



「布の原価分だけ貰えれば、採寸からすべて、弟子たちの練習という事で服を作ってやれるがどうだ?

 もちろん今回の1回限りだが」


一通りのやり取りが終わった後に、ちょっと気難しそうな職人からが前に出てきて、そんなありがたい提案を貰った。


「ぜひ頼みたい」


「分かった。では後日こちらから人をよこすから、5人づつ店に来てもらいたい」


「分かった、順番はこちらで考えておく」




次に町の大工さんや家具職人がやって来て、家の補修工事をしてくれた。


ボロボロだった建物はきれいに生まれ変わり、音がしていた廊下は音がしなくなり、デコボコやグラツキも直った。

食堂の長テーブル、長イスも同じ寸法で作り直され、家にあるいくつかのカマドもレンガの立派なものにして貰った。

これ全て無料だった。


比較的マシなテーブルとイスは応接室に、ダメなものは薪になった。

ある子供が大工の仕事に興味を持ったようで、ずっとついて回っていた。


大工は悪い気はしないようで時々仕事について説明をしてくれたようだ。


もしかしたら彼は将来、大工になりたいというかもしれない。

そのときは笑顔で行ってこいと言おうと心の中で決めた。




その次に冒険者ギルドのギルド長、副ギルド長が2人でやって来た。


「副ギルド長だったんですね」


「ええ」


自己紹介を受けた後に俺は思わず聞いてしまった。

ギルド長のとなりに居たのは、俺の冒険者再登録をしてくれた受付のおばちゃんだった。


「なんじゃ、知らんかったのか」


「はい」


「まあ進んで言わないようにしているからね。でも古くからいる人たちはみんな知っているよ」


「副ギルド長になった時には、職員と冒険者たちみんなでお祝いしたんじゃったな」


「ええ・・・で、子供たちが待ってますよ」


「ん? いやしかし」


「実は練習を見れるようにこの時間に来たんじゃ。

 良かったらわしらはここで見させてもらおうかな?」


「クロードさん、そういうことだから」


「わかった、少し時間がかかるが待っていてくれ」


俺は2人にそう言い残し、子供たちの方へ向かう。


「クロードさん、並び終りました」


「よし。

 みんな、今日は見学者がいるが、気にしなくていい。

 いつも通りにやるぞ」


「「「「はい!」」」」


「よし、やるぞ!」


「「「「おー!」」」」



「構え! ・・・1!」



「「「「1!」」」」



ギルドの2人は訓練風景を真剣に最後まで見ていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「お待たせしました」


「いやご苦労ご苦労。

 少し、中で話はできるかの?」


「では応接室に」


「あるのか」


「一応はな・・・。

 ギルドのと比べられても困るが」


「そんなことはせんよ」


子供が働きアリのように道具を応接室にしまっていく列に入るとギルドの二人は驚く。


「さあ奥へ」


「なんと、応接室は用具入れと兼用か」


応接室は横長になっており、手前部分が用具置き場、奥側が応接スペースとなっている。

子供たちは部屋の奥に移動した俺とギルドの二人を、

ガチャガチャと木剣、木の盾、槍(を模したもの)を置いてはちらりとこちらを見てから出ていく。


「ギルド長の部屋にも剣が置かれているだろ」


「これと一緒にするな。全然違うわい」


ギルド長の部屋には立派な剣が飾られている。

もちろんこことは全く違うのは分かってたが、ひやかすつもりでそう言った。


「ここは普段使わないからな。用具入れとしては毎日活躍しているが」


「ふむ、テーブルもシミだらけだし、イスもグラグラするのう。・・・ついたても送ってやるか」


「それがよろしいかと」


「ん? 何かくれるのか?」


「ああ、ワシ個人からの贈り物じゃよ」


「そうか、ありがたく頂戴するよ」


普段使わないと言ったのに、応接セットをくれるらしい。

まあギルド長が言うように、かなりみすぼらしいからもらえる分には貰っておこう。


「しかし先程の訓練風景、統率が取れていて、さながら傭兵団のようじゃったな」


「そうですね」


「兵士式なんだが、まあ似たようなものか」


「そうじゃったな。

 彼らは礼儀も知っておるし、進んで塩漬けになっているクエストもやってくれて、とても助かっている」


塩漬けクエストは、何かしらうまくない部分があり、誰も受けてくれずに残ってしまったクエストのことを言う。


何とか受けてもらうために貢献ポイントが少しプラスされているが、それなりに面倒なものが多い。


冒険者にとって重要なポイントである報奨金は依頼者の懐事情が絡んでくるので多くなることはなく、面倒だったり辛い割に実入りが少ないため不人気だ。

しかしウチは自給自足で食が保証されている上に頭数が多いのでお金を気にする必要がない。

なので一般の冒険者のように他の依頼書と比較したりせずに、リターンを考えずに経験を積ませるためにあえてそういう依頼を受けさせている。


「こちらにも都合がいい部分はあるからな」


「そうか、ではこれからも良好な関係を築いて行ければと思う」


「ギルド長からそう言って貰えたら心強い。こちらこそよろしくお願いする」


「うむうむ。よかった。何か不便があれば気軽に言ってくれ。力になれることもあろうからな」


「そうか。・・・そういうことなら」


「うむ?」



俺は最近倒したモンスターの肉を泣く泣く捨てて帰ってくることが多くなっており、これがなんとかならないか、と聞いてみた。


「なるほど、武勇じゃな。モンスターを倒しすぎて、その肉の消費が追い付いておらんとは」


「倒しているのは最底辺のモンスターだけどな」


「最底辺であるからこそ生まれる数がとても多い。

 数が多すぎて食料が足りずに森から出てきて畑が荒らされる。

 そういう別の脅威が生まれておるんじゃ、とても助かっておる」


農家がカピから甚大な被害を受けているという話を思い出す。

商品が食い荒らされ、売り上げが無いのにその状態で冒険者を雇う分のお金を払わないといけない。


しかし冒険者も自分が食べて行かないといけないのでボランティアは出来ない。

結果、農家がうまくいかないままになるので、人が食べる物が無くて、人間全体が困窮するという脅威だ。


「ではそちらについては私が考えてみますね」


「うむ、たのんだ」とギルド長


「難しければ言ってくれ。でもよろしく頼む」


「はい」




招かれざる客も来た。

町中にある孤児院の女院長だ。

ふくよかで、どこか質のいい服を着ていて、高価そうなアクセサリーを付けた強烈なおばちゃんだった。


一人で乗り込んで来てとても態度が悪い。


うちの子供たちを乱暴者のような目や態度で拒絶し、俺を見るなり笑顔になる。



「ぜひうちの子供たちも戦えるように指導をして欲しいんです」



「何故うちなんだ?

 同じ町中にあるギルドでも訓練をやっているだろ」


「いえいえ、ギルドの訓練ってあれ、お金がいるでしょ?

 お互い同じことをやっているじゃないですか。経営も苦しい。でしょ?」


「? そうだな」


「だからギルドよりは質が落ちるのはこの際・・・ゴホゴホ。

 未来の子供たちのために、ぜひ一肌脱いでくれませんか?

 もちろん、あなたがの都合に任せますが、2日に1回は来てほしいかしらね?」


「いや、経営が苦しいからこそ、金を欲しがるものじゃないか?」


「はい?」


「あんたが逆の立場なら、相手に何かしら求めようとするんじゃないか?

 例えはお金だ」


「・・・それは・・・まあ・・・でも」


「暇そうに見えるかもしれないが、暇じゃないんだ。貧乏暇なしというだろ?」


そういうと扉の向こうから子供たちの歓声が上がった。


「あいつら・・・」


どうやら盗み聞きをしているようだ。

まあ気になる気持ちはわかるが。


「私にこんな仕打ちをして! 覚えておきなさい!」


実はあの孤児院には現在スパイがいる。

情報によると、うちの子供たちが稼ぐ能力を得て、その稼ぎを家に丸々いれているという話を聞き羨ましく思い、

ならば自分のところの子供たちも、と思ってのことらしい。


この話を聞いていなくても受けるつもりはなかったが。

というのは、よその子供たちに教える際にちょっと不都合があるのだ。


それは強化(スキル)だ。


どういうことかというと、素振りをした場合、子供の手は皮も薄く痛みに弱い。

しかし俺が強化のスキルを使った子供の手は、薄い革の手袋をしたくらいの強度になっているので、

手のひらが痛くなりにくくなっており、限界まで訓練が出来たり、打ち合いをしたとしても大きな怪我をしづらいので毎日訓練が続けられるというものだ。


じゃあそのスキルをかけてやればいいだろうと思われるかもしれないが、このスキルをかけすぎると俺にマイナスの影響がある。


目の前の院長を見る。


この人の経営している孤児院だけが領主からの支援金を貰い経営していることに不満がないわけでもないが、

同じ孤児を育てている仲間ならそれを領主などに伝えて手を差しのべてくれる事だって出来なくはなかったはずだ。


なのにそれをしないのはなぜかといえば、自分が貰えるお金が減るかもしれないからだそうだ(スパイ情報)


それともう一つ、破竹の勢いで裕福になりつつある、こちらに行きたいという希望だす子供はいないそうだ。

と言うのも、そこの子供たちもこっち側の方が下といつも馬鹿にしていた負い目があるからだろうとのこと。


そんな子を受け入れたら、うちの子たちが嫌な思いをしてしまうかもしれない。


「私は忘れませんからね!」


(帰れ、帰れ)


子供たちが嬉しそうに走り回っている。


リーダーが一矢報いてくれた。

おそらくそういう気持ちなんだろう。


と、こういう疲れる訪問もあった。

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