【第27話】スタンピード発生(3)
「おじさん」
「ん?」
台から下りると、朝に送り出したうちの子供たちが集まってきた。
3つのパーティに分けて行動するよう伝えていたが、先ほど家に戻ってきた子を除き、その全員が目の前に集合していた。
「ジルは俺の代わりに家を守ってもらっている」
「そうだったんですね」
「まあ、その方がいいよな」
「・・・お前たち、無理はするなよ」
「「「「はい」」」」
「ここにはプロの冒険者たちや、騎士団もいる。
危なくなったら、ちゃんと助けを求めろ。」
「「「「はい」」」」
「前に出すぎるとモンスターに狙い撃ちにされるかもしれない。
ほかの人と足並みをそろえろ。
もし誰か前に出ているようなら声をかけて下がらせろ
そして、声を掛けられたら何を置いても必ず後ろへ下がれ」
「「「「はい!」」」」
「タイプ別対処法を意識しろ」
「「「「はい!」」」」
子供たち全員の頭を優しくポンポンと叩きながらも過保護に指示を出していく。
というか口を出し始めたら止まらなくなってきた。
しかしいつまでもこうはしていられないので、がまんして口を閉じる。
周りがこちらを見ており、その視線がちょっとむずがゆい。
「ギルド長、上からスタンピードを見たい」
「壁際の住人に話をして入らせてもらうか。 おい」
「はい」
ギルド長に選ばれたギルドの職員さんについていくと、住人さんと話をしてくれ、ちょうどスタンピードが見える方向にあるベランダに通された。
そこには数人の家族と、おやつ、飲み物などが用意されており、どうやらここからスタンピードを見学するつもりだったようだ。
「どうぞ」
「助かる」
住人が双眼鏡を貸してくれた。
これでよく外を見ているそうだ。
「・・・確かにこちらへ向かっているな」
住人が教えてくれた方向を見ると、表情がおかしいモンスターの大群がこちらへ向かってゆっくり移動してきている。
モンスターの構成などで毎回形が変わるが今回はカピが多い。
ゴブリンなどの人型などもいるようだ。
テックテックと普段はしないようなスムーズじゃない、変な歩き方をしている。
次にスタンピードを全体で見てルートを考える。
「1つ目はスタンピードのほぼ真後ろにあるな」
「2つ目は・・・こちらから見て右側が少しだけ手薄になっているな」
となると、まず真後ろから入って、中央の左側につけ、そこから中に入る感じとなりそうだ。
「何がですか?」と住人。
「モンスターのいる場所だ」
そういって双眼鏡を返す。
住宅を出たところ騎士団の人からトゲハンマーを渡された。
「おお、そいえば肝心なこれを忘れていた」
前にも使っていたなじみの武器だ。
安い鋳造品だが、核は鉱石系のモンスターなのでこれが一番有効なのだ。
重さを確かめていると・・・
「こちらもどうぞ」
「ああ、助かった」
トゲハンマーを下ろし、聖水を3本受け取る。
ふと周りに目を向けると前列にうちの子供たち、その後ろに大人の冒険者たちが立っていた。
距離的にまだ時間がありそうなので・・・。
「いいか?核の叩き方だ。
狭い場所になるから、大降りが出来ないので、短く持って、何度も叩くんだ」
「こう?」
急に始まったレクチャーに、気後れすることなくみんなが手にトゲハンマーを持った想定で素振りを始めた。
「左手は柄の一番はじ、右手は中央より少しだけ上を持つ。
あとは核が壊れるまで叩くだけだ」
「なるほど、気合いだな」
「反撃はないが、ゆっくりしていると周りのモンスターにちょっかいを出される。
囲んでいるモンスターは外側のモンスターと違い、ボーっとしているが、視界には入っているからな」
「ほうほう」
「なるべく早くやるが、途中でバテてしまわないように続けられるペース配分もするんだ」
「いつ壊れるか分からないのに、ペース配分は難しそうだな」
「もしばててしまった場合は?」
「そうなったら少し休むしかないな」
騎士団長がやってきた。
「どうだ?」
「そうだな、見たところモンスターは単体で脅威となりそうなのはいない。
あとはカピが多いぐらいだな」
「作物に影響を出しているらしいな。
これを機に少し減らすことが出来そうだ」
「そうだな。
・・・じゃあ、そろそろ行ってくる」
「わかった、健闘を祈る」
作戦開始だ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
子供を含む冒険者たちの声援を受けて町を出る。
子供たちが1人で出ていく俺を見ている。
しっかりとした目で行く末を見逃さないといった気迫を感じた。
これには感心してしまい、涙ぐんでしまった。
しばらく歩いて振り返る。
子供たちと冒険者、騎士団はそのまま壁の外でやってくるモンスターを待ち受けるべくパーティーごとに横並びになっていた。
「む?」
最近一人きりになることがなかったので少しムズムズした気持ちとなる。
「今はあれだ」
今からあのモンスターの大群に飛び込むのだ。
感傷的になっている場合ではない。
気持ちを切り替え、余計な思考をしないようにする。
作戦通りにまずはスタンピードを見送って、後ろに回り込むところからだ。
スタンピードの連中に気づかれない程度に距離を取り、すれ違った。
やはりスタンピードのモンスターはいつもと様子が違う。
通常なら気づかれる距離だが、まったく鼻すら効いていないようだ。
(うお)
後ろのカピの大群がやばい。
地面を埋め尽くしている。
しかしやはり後ろの方に偏りがあり、モンスターのいない空間がある。
聖水を1本づつゆっくり頭に、服にしみこませていくように掛け、手で伸ばしていく。
3本目を頭からゆっくり流してびしょ濡れ状態となった。
冬じゃなくて良かった。
すでに強化のスキルは最大まで重ね掛けしてある。
「よし、行くか」
俺は中腰になり、目の前の邪魔なカピを手で優しくかき分けながらスタンピードの中心からやや左側に潜り込んだ。
除けられたカピは気にした様子もなく、となりのカピにぶつかるが、ぶつかられたカピの方もほぼ無反応で前へと歩いている。
時々聖水をもろに嗅いだカピが前足を上げ、後ろにひっくり返る、という事が起きた以外は平和だった。
足音のおおかげで少々大きな音が出ても平気そうだった。
中腰のまま半ば走るようにしてあっという間に核がある、モンスターの塊の左側にたどり着いた。
ここからが正念場だ。




