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脳筋不器用元貴族のやり直し  作者: ゆめのなかのねこ
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【第23話】カピ狩り!

「明日から、薬草採取に加えて、カピ狩りを始める」


夜ご飯を頂いたあと、俺はみんなにそう宣言した。


ちび達の一部はぽけっ?とし、既にカピ狩りに行くことが決まっている4人は顔に緊張をにじませた。


「クレアとククイは交代で1日ごとに家の留守番兼子守りと、薬草採取への同行をお願いしたい」


「それって、明日は私、あさってはククイという感じね?」


「そうだ、1人づつになるが、問題ないか?」


「「はい」」


2人はうなづきあってから元気よく返事を返してくれた。



「うむ、助かる」


「俺はしばらくは狩りの方に同行する」


「「「「はい」」」」


最近はずっと家にいて子供の面倒を見たりごはんの巨大魚を獲るくらいしかしていなかったが、これからは狩りに同行することとする。


「みんな無理せず頑張ってね。お兄ちゃんも、クロードさんの言うことちゃんと聞くのよ」


「分かってるさ、お前もちびの面倒頼んだぞ、あまり目を離すなよ?

 お前最近考え事がお・・」


「やめて。」


妹のクレアと兄のホームズのそんなやり取りを聴きながら明日の事を考える。


メンバーは、年長組のエドワード、ホームズ、そして年中組のトーマとレスタの4人だ。

トーマとレスタは2人とも10歳くらいらしい。


メンバー決めの際、最初は年長組4人の予定だったが、トーマとレスタが強く希望し、クレアとククイがそういう事ならと身を引いたためこうなった。


「じゃあ明日もよろしく頼む」


「「「「はい」」」」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



次の日。


いつもの訓練を行った後に、カピ狩りに出る4人は鎧を着込んだ。

そしてそれぞれの手には俺が森の木から切り出し加工したヤリを、背中にはリュックを背負っている。


この木製のヤリは訓練用とは違い、先端をナタでしっかりと尖らせている。


本当は本番の狩りには本物をと考えていたが、よくよく考えたらカピという最弱のモンスター相手にはいらなかった。

無駄に使うお金もないので、いったん見送っている。

ダメだったら買うが、まあいらないだろう。


俺が切り出した槍は多少歪んではいるものの、おおむね真っ直ぐで強度は十分、更にスキルで補強しているので今から行う狩りに使う分には十分だ。

ちなみに先がつぶれたら、スキルを解除してからナタでとがらせて、数回は使う予定だ。



俺も同じヤリをもち、クワを持った。


「よし行こう」


「クロードさん、気を付けて!」


「ああ」


「お兄ちゃん、がんば!」


「おう!」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



5人で森に入り歩いていくと、所々に木に彫られた目印がある。


これは俺が事前に一人で入って見つけたポイントへの道を示したものだ。


「疲れていないか?」


足を止め4人に確認をする。


「まだ大丈夫です」


「俺も」


「もう少ししたら休憩して、その後本番だ」


「「「「はい」」」」


森に入って1時間ほど歩いたくらいからモンスターの気配が濃くなり始める。

その直前で休憩をとるのだ。



「ここから更に進んだ先に、3つのカピがエサを食べに来るポイントを見つけてある。

 そこへの道順と、あとは一定間隔に迷ったときに森の外への方向を示す目印をつけてある。

 カピ狩りもだが、これもしっかりと覚えてもらいたい」


「「「はい」」」


子供たちは声を抑えて返事をした。



「よし、この木だ」


しばらく歩いてから、俺は休憩の為に腰を下ろす。


「ふう・・・」


「なんか滅茶苦茶疲れた」


「緊張で体が無駄に力んでいるんだろうな」


俺の言葉にレスタがトマの肩をもんで(りき)みをとる。


「・・・みんなこれを見ろ」


俺は巨木の根に掘られたしるしを指さす。


「いいか、これがしるしだ」


「「「「はい」」」」



俺が指さした木の根を子供たちが囲む。


「この矢印の始まっている真ん中が、今いるここだ」


俺は真ん中を指でとんとんと叩く。


「で、この家のマークが俺たちの家だ。この矢印の方向に歩いていけばたどり着ける」



「今俺たちが来た道ですね」


「そうだ」


「そしてこの3つの動物の絵に向かう矢印が、ポイントになる」


「これ、全部クロードさんが調べたんですか?」


「そうだ」


「え、すごい・・・」



これも兵士時代に、付近の森でよくやっていた。

その経験が生きている。


「わかりやすいです」


「それとここには書いていないんだが、この木を過ぎたあたりからモンスターの気配が濃くなる。

 ここを1つの区切りとして考えて、必ずここで一息入れるようにしてくれ」



「「「「はい」」」」



「よし。1つ目のポイントはあっちの茂みの向こうだ。行くぞ」


4人の緊張が最大限に上がる。

ゆっくり音を立てないように進むと、地面に向かってなにかを一生懸命にやっているカピが6体ほどいるのが見えた。



「おい、モンスターを凝視(ぎょうし)するのはやめろ。一回家の方向をみて深呼吸だ」


「「「「は、はい」」」」


4人はスーハーと深呼吸をする。


「落ち着いたか?」


「「「「あんまり・・・」」」」


「そういえばお前らはまだ実物を見たことがないんだったな。

 まあそれは何度かやれば慣れるだろう」


「クロードさんは平気なんですか?」とトーマ。


「俺はあの獲物に逃げられないかが不安だ」


「はは・・・」


「じゃあ、もう一度説明するぞ」


「「「「「はい」」」」」


「カピ、正式な名前はフォレストカピバラ。

このモンスターはとても臆病(おくびょう)で、人の姿を見るとすぐに逃げ出してしまう。

それを追いかけると他のモンスターと鉢合わせる危険性があるから、絶対に追いかけるな、いいか?」


「「「「はい」」」」」


「逃げられたら次のポイントへ行けばいい」


「「「「はい」」」」」


「落ち着いたようだな。作戦は覚えているか」


「「「「はい」」」」」


「よし、では作戦開始だ。行け」


4人はお互いを見て静かに拳を会わせてから、事前に何度も説明した通りに動き始めた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



作戦は簡単だ。


カピは人をみると逃げ出す。

でもその方向をこちらの都合のよいように調整してしまえばいい。


今回で言えば子供達がカピを俺のいる方向に追い立てる。


カピは音がした方を凝視し、そこに人がいれば、人の反対方向に走り出す習性がある。

これを利用する。


少ししてからカピの向こう側に子供達がチラチラと見えた。

良い位置を取っている。


俺は木の影からヤリをゆっくりと振る。


“こちらはOK、そちらのタイミングで行動を開始せよ”


という合図だ。


一呼吸おいて左側のチームがガサガサと(しげ)みを揺らしながら声を上げた。


一瞬遅れて右側のチームも同じように(しげ)みを揺らしながら姿を見せた。


すると狙った通りにカピがこちらへ走り出す。

俺は自分のすぐ横を通りそうな一匹に狙いを定め、距離があと2メートルに迫ったタイミングで身体を半分だけ出した。


目の前のカピは一瞬身体を硬直させ、速度が落ちる。


「はっ!」


その一瞬の隙を狙い、斜め前よりカピのお腹にヤリをぐさりとやる。


カピが痛みに驚き暴れるが、ほんの少しのあいだ手を離さずに内蔵を傷つけるようにグリグリと動かす。

その間1~2秒。


(こんなもんか)


ヤリが深々と刺さったのを確認し手を離す。


カピはお腹にヤリが刺さったまま、時々コンコンと木々にヤリをぶつけながら走り去っていった。



「「「「クロードさん!」」」」


カピを見送っていると4人が駆け寄ってきた。


「お前ら、よくやった。

 あんな感じだ。見ていたか?」


「「「「はい!」」」」


「よし」


「クロードさん、早く追いましょう」とホームズ。


「そうだな」


他のモンスターに気を付けながら血の痕を辿ると200メートル先でヤリが刺さったまま動かなくなっているカピを見つけた。


5人で喜び、安堵(あんど)をした後に解体の説明を始める。

まず解体用のナイフを取り出し討伐(とうばつ)証明部位(しょうめいぶい)の尻尾を根本から切り取り、エドワードのリュックに入れる。


次にクワですばやく1メートルほどの深さの穴を掘る。

掘りなが、もしこのタイミングでモンスターが来たら、という話を聞かせる。


穴が掘り終わったらカピを横に置いてからおなかをさいて、内蔵を穴に捨てていく。


ちなみにモンスターは動物と違い血抜きの必要ない。

皮を剥いで頭や骨もどんどん穴に捨てていき、肉だけの状態にした。


「こ、これを食うのか?」


肉塊になったカピを見ながらトーマとレスタがドン引きしている。


「そのままじゃないだろ。さかなと一緒で焼くんだよ」


「へぇ」


「これ、罠で捕れる魚より食べる部分が多いけど、これがこの森に沢山いるんだな」


「そうだな」


俺は肉をホームズのリュックに詰めながらそう答えた。


モンスターの増えかたには2種類ある。

1つ目は交配して子供を産むこと。

2つ目はある一定数を下回ると、突然成体の個体が出現するというものだ。


この2つ目のお陰で人類はモンスターを完全には駆除(くじょ)できないのだ。


そして現在、この森のカピは天敵が不在のようで、人が立ち入らない森の深い場所で1つ目の方法で数を増やし続けてしまい、

溢れた個体がだんだんまわりに拡がるように移動してきているらしい。



「よし、では次だ」


「「「「はい!」」」」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



その日の夜ごはんは、雑草とはもう言いづらくなってきたスープと、塩、コショウを降った焼き肉(ヤグラは味付け無し)と、今までで一番贅沢なモノとなった。


子供達は感動して大きな声を出して怒られ、走り回って怒られた。

中にはあまりの美味しさに呆然としている子供までいた。


俺自身、久しぶりの肉に力が沸いて仕方なかった。

もう寝るだけだが。

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