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脳筋不器用元貴族のやり直し  作者: ゆめのなかのねこ
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【第13話】薬草採取(2)

4人のもとに向かうと、かなりの薬草の束が大きな岩の上に並べられていた。


「戻ったぞ。 ・・・かなり頑張ったな」


「えへへ」


「驚かそうと思って頑張ったの」


「もう少し遅く帰ってきてもよかったのに」


「ナイフがもっとあればなぁ」


4人がニコニコと口々にそういった。



チェックしてみると、すべて10枚づつ1束になっており、21束、210枚の薬草が採取されていた。

それらすべてが丁寧に重ねられ束になっていた。



「問題ない。よし、納品に行くぞ」



「うおおー!」


ほかの3人もホームズに負けないくらいのうれしさを表現した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




4人を連れて町に入る。



「しっかりこの人の言う事を聞くんだぞ」


「「「「はい」」」」


入口に立っていた衛兵(えいへい)が子供たちにそう声をかけるのを横目にギルドの位置を思い出す。


4人はそわそわしている。

そしてそれぞれには薬草の束。


町を歩いている子供をじっと見て、ほっとしている姿からすると

なんとなくこの町にあるという孤児院の子供とは顔を合わせたくないように感じた。

今歩いていた子供はよく見れば母親が近くにいた。


観音開きになっている冒険者ギルドの入り口をくぐる。


「さて、買取窓口はあれだな」


大きく”買い取りカウンター”と書かれた木の看板が高い場所に吊るされているカウンターへ向かう。

買い取りカウンターには誰も並んでいなかったのでそのままカウンターの前に立つ。


「む、お疲れ様。 買取品はトレイに入れてくれ」


古傷だらけのおじいちゃん、おそらく元冒険者は新聞をたたみながらトレイに視線を送った。


「ああ。おい」


「「「「はい」」」」


俺がトレイの前から場所を譲ると、すぐ後ろで話を聞いていた4人がそれぞれ持っていた薬草を丁寧(ていねい)にのせていく。


「全部だな?

 そのボードにこの札と同じ、8が掛けられたらまたこちらへ来てくれ」


「わかった」


8と書かれた木札を受け取り、みんなで長椅子に移動する。

4人ともソワソワしておりほほえましい。この姿が見れるのも今だけだろう。


「クロードさん、お金貰ったら何買うの?」


クレアが聞いてきた。


「まずはナイフだな。

 まあ今日の分だけでは無理だろうから、今日はナイフの値段だけ見て帰ろう。それまでは貯金だな」


「ナイフがあればもっといっぱい取れるよな」とホームズ


「そうだね」とエドワード


ククイもうなづいている。



コンコンコン


小気味(こぎみ)のいい音が聞こえたのでみんなでカウンターの方を見ると、制服を着た若い男性職員がボードの横に吊るされた木の板を、同じく吊るされた木槌(きづち)で叩いたようだ。


ボードには8の木札が掛けられていた。


「あ、クロードさん、8!」


「そうだな、行こう」


カウンターに向かうと、先ほど木槌(きづち)をたたいた若い男性職員が手を上げてこちらを誘導してきた。

若い男性職員のいるカウンターの前に立ち、8の木札を渡す。


「ご苦労様でした。

 薬草が21束で2100円になります」


そう言って若い男性職員はお金が乗った小さなトレイを差し出してきた。

500円玉4枚に100円玉1枚を確認し受け取る。


「1束、100円」


クレアがささやくようにそう言った。


俺はお金が入っていたトレイをカウンターの中に返す。


貢献(こうけん)ポイントですが、1ポイントづつとなります。

 1人づつこの箱の上のくぼみに証明書を乗せてください」


長さ15cm、幅8cm、高さ5cmほどの鉄製の箱の上に証明書を乗せる。

鋼鉄の箱の横にあるランプが光ったのを確認し、若い男性職員がスイッチをパチンと押した。


「では次の方どうぞ」


俺は自分の証明書を取り、その場を譲る。

俺のやっていたことを見ていた4人は同じようにして、エドワード、クレア、ホームズ、ククイの順番で同じようにポイントが付与された。


「全員、あと21ポイントでEランクに昇格です。がんばって。」


「ありがとう、世話になった」


「「「「ありがとうございました」」」」


(全員という事は、今まで1ポイントさえも・・・まあこれからだな)


「こんにちは!」


入口へ向かって歩き始めると同時に元気な声に呼び止められる。

振り返ると俺の冒険者登録をしてくれた受付のおばちゃんが立っていた。


「クロードさん、この子たちに薬草採取を教えてくれたんだね、ありがとう」


「いや、まあ」


「あはは。

 ほらお前たち。この人なら大丈夫だから、しっかり言う事を聞くのよ?」


「「「「はい」」」」


「これからも応援してるわ」


「ああ、ありがとう。そうだ、薬草採取用のナイフで安いところがあれば教えてほしいんだが」


「安いの・・・しっかりしてて、長く使えるっていうんなら、そこの売店でも売っているんだけどね」


売店の方を見ると、2400円の薬草採取用と書かれたナイフが売られている。

将来を見据えればこれを買った方がいいのは分かるが・・・。


ぶっちゃけナイフなら何でもいいとも思っている。



「色々見て決めるよ」


「うん、みんな頑張るんだよ」


受付嬢さんは入口まで見送ってくれた。

帰りに寄った金物屋で一番安いナイフを見せて貰うと、むき出しの刃先4~6センチの長さ不ぞろいのものがかごに入れられていた。


1本1000円だったので2本買った。

薬草程度であれば十分だ。


ただしどうみても研ぎが甘い気がしたので帰ったら砥石(といし)で刃先を整えようと考える。


「待たせたな、行こう」


俺は店の外で待っていた4人に声をかけ歩き出す。


「ナイフ買えたんですか?」とホームズ。


「ああ、2本な」


「おお」


「明日からはもっと沢山採れるようになりますね」


「そうだな。しかしそれだと手に持てなくなるだろうから、袋が欲しいところだな」


「あ、じゃあまたカゴを作りますか? あのワナのような」とクレア


「そうだな、じゃあまだ日は高いから、みんなで作るか」


「楽しそう!」とクレア


「あれまたやってみたかったの」とククイも乗り気だ。


俺は帰りがけにツタ状の植物を刈り取りながら帰った。

薬草ぐらいなら切れることなく使えるだろう。


ツタが思いのほか沢山採れたので大きめの30cmのツタバッグを作った。

編み方は魚の罠の時と同じザル編みだ。

ザル編みさえ覚えておけば何でもできる。


持ち手も作って取り付ければ完成だ。


「明日もやるんだよな」とホームズ。


「もちろんだ。明日からもずっとやるぞ。

 そしてどんどん必要なものをそろえていく」


「そしたら焼き串も買えるかな?」


「ん? 買えるぞ」


「そっか」


なぜか半分は期待しないよう自分を(いさ)めながらホームズはそういった。

俺の見立てでは半年もあれば焼き串なんか目でもない位の肉が・・・でもそれはホームズにならって言わないようにした。


ホームズ、クレア、ククイ、その少し下の子もなぜか口を閉じて残ったツタで今度は魚用の罠カゴを編んでいる。

いつ壊れたり、流れて行ったりしてもいいように予備を作っているのだ。


肉の話はタブーなのかもしれない。



「クロードさん、出来ました。どうですか?」


「いい出来だと思う。優秀だな」


多少不格好であっても役割さえ果たせれば問題はない。

出来上がったものは予備として軒先にぶら下げておくことにした。


次に見たとき、クレアが吊り下げられた自分が作った罠カゴをじっと見て、手直ししていた。


日が暮れたのでみんなで雑魚寝をする。


こんなに大勢で寝ている状況に少し胸がふわふわとしてしまう。


子供たちは一瞬で静かになり寝息が聞こえてきた。

時折風が木の枝を揺らす音がかすかに聞こえる。


このまま冬を迎えると大変だ。

それまでに何か対策を考えなければ。


俺は隣で丸くなっているヤグラを撫でながら考えた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「おじさん、おきてー!」


「あさー!」


「ぬう・・・」


今日も今日とて子供に起こされる。

そしてそのまま家の裏の川まで引っ張っていかれる。


「おはようございます、クロードさん」


「おはよう」


今日も魚が罠に掛かってくれたようで、大盛り上がりだ。

キャーキャーとうるさいが、近所に家はないので問題ない。


既に魚の罠は集められ、魚が並べられていた。


「今日は6匹も入っていたか」


「はい、こいつとこいつ、穴より小さいんですけど、逃がしますか?」


みんながこちらを見てくる。


「いや、かかったんなら仕方がない。食おう」


そういうとわっと歓声が上がった。

戻してもほぼ死にかけなので、これなら食べたほうがいい。


俺はホームズから果物ナイフを渡され、川の下まで降りてきて鱗と内臓を取り、

血などを洗ってからかまどまで向かう。


チビ達は年長組の言いつけを守って川の方までは来ていなかった。

かまどでは年長組を含めた子供たちが串を持って待っていた。


串打ちは4人に任せて、調理場から(まき)を持ってくる。

かまどを直し、串を立てていく。


「では私たちは草を取ってきますね」


「ああそうだ、スープに入れる草だが、薬草があるようなら、それも少し混ぜるようにしてくれないか?」


「私はいいですけど、いいんですか?」


「まず、自分たちが元気でいられる事が、後々の為になる、ですよね」


クレアの疑問にエドワードが答えた。


「そうだ」


「ああ、肉食いてえな~」


魚を焼いていると想いが爆発したのか、ホームズがそういった。

エドワードは苦笑いをしている。


「ホームズは昨日町で通りがかった串焼きの匂いにやられたみたいで」


「ああ、あれは凶悪な匂いだったな」


「そうですね」


エドワードから事情を聴いている間もホームズは肩を落としていた。


「食うのはチビたちも一緒だ。先は長いぜ」


(ほう)


ホームズの吐き出した言葉に感心してしまった。

薬草で稼いだお金でこっそり食べようと言ってこないあたりから、ここの子供はえらいなとは思っていたが。

俺はホームズの頭を撫でた。


「うええい?」


突然頭を撫でられたホームズは変な声を上げた。



実は肉に関して、すでにアタリは付けてある。


今思えばこの情報もあの受付のおばちゃんが意図して教えてくれたのかもしれない。

俺は冒険者の再登録をした時に聞いたことを思い出した。


この森には食用可能なモンスターが複数いて、そのうちどんくさい(と俺が勝手に思っている)方のモンスターがここ数年大繁殖しているらしいのだ。

つまり俺たちの準備ができて、条件さえ整えば、食べ放題なのだ。


子供たちへは伝えていないが今はその条件を達成するための準備を行っている。

小さな子供が多いため。あまり早いうちに説明してしまうとどう反応されるか分からない。

準備ができれば話す予定だ。


それまでは、もう少し耐えてほしい。

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