表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脳筋不器用元貴族のやり直し  作者: ゆめのなかのねこ
11/30

【第11話】ごはんのグレードアップ(2)

元気よく返事をする子供たちを見回していると、調理場にある積まれた枝を見つけた。

わざわざ森に入って枝を取ってきたが、ここに積まれているんだった。


恥ずかしくなり血流が上がりそうになるのを全神経を総動員させ抑える。

俺は本気で恥ずかしくなると顔が真っ赤になるのだ。


そうこうしているうちに5匹の魚はあっという間にほぐし終わり、頭と大きな骨は鍋に入れられた。


「では火をつけよう」


「はい、どうぞ~」


「俺がやる」


ホームズが火打ち魔石を使い薪に火をつけた。

それを見てククイが鍋に手をかざす。


すこしすると鍋の中に空気のつぶが出来始めた。

半分どころの速さではない。


「本当に早いんだな」


「はい、結構役に立つでしょう?」


「ああ、とっても役に立っているな」


「ふふふ」


「もしかして出汁も早く出せるのか?」


「そうなんです。それと私がスキルを使えば灰汁(アク)も出ません。

 草の苦みもなくなります」


「それはすごいな」


「えへへ」


「ククイ、その力はあまり言わない方がいいかもな」


戦闘力がなく、便利なスキルを持っている子供がどういう扱いを受けるか想像に(かた)くない。


「はい。両親からもそういわれていました。

 クロードさんに話したのは、信頼しているからです」


「そうか、ありがとな」


「いえいえ~。

 そろそろ出汁が出切りますので、これ、上げてくださいな」


「本当に早いな」


俺はククイがスキルで水面にまで持ち上げてくれた魚の骨や頭を網目のお玉を使い取り出した。

これなら骨の取りこぼしもなさそうだ。


「じゃあ草入れるよ~」とクレア


「はい~」とククイ


クレアが草を投入し、ククイが草を水魔法で優しく混ぜていく。


「・・・完成しました」


「わかった、じゃあ先によそってから、ほぐした身を均等に入れてやってくれ」


「えっと、クロードさんのも?」


「ああ、俺もみんなと同じ量にしてくれ」


「足りる?」


クレアは俺のおなかを見ながらそう言った。


「俺だけたくさん食べてもしかたないだろう」


「みんな気にしないとは思うけど、オッケー!」


俺はそう指示を出してから、取り出した魚の頭と骨を持って畑に向かった。

後ろからホームズがついてきた。



「この畑、放置されてそこまで時間がたってないようだな」


「うん、去年ぐらいに最後の収穫をやったのが最後かな~」


「なんで今は使ってないんだ?」


「種が無いんだ」


「そうか」


俺はとりあえず畑の栄養にと、魚を畑に埋めた。



「さあ戻って朝ごはんにしよう」


「おう!」


「おじさん、はやく」


「おじさんー」


「わかったわかった」


「よーし、みんな揃ったな。 では・・・っと。」


エドワードが何かを言いかけてこちらを見た。


「ん?」


「クロードさん、いただきますのあいさつ、やりますか?」


「いや、そういうのは今まで通りで良い」


「分かりました。 ではみんな、お手々を合わせて下さい」


ぱちん!


「「「「いただきます」」」」



「おいしい!」


「うまーい!」


「なんだこれ!」


「うまいじゃん!」


あちらこちらから朝ごはんを絶賛する声が聞こえてきた。


俺もいただく。

スプーンで魚の身を持ち上げてかじってからスープを飲む。

ククイが言った通り、苦みなどが一切なく、とてもおいしい。

ククイにかかれば雑草も普通の料理に変わるようだ。


顔を上げて見回してみると、みんながとてもいい笑顔をしていた。


「おじさんも笑ってるー!」


言われて気づいた。

確かに俺は笑っていた。

いつぶりだろう、心から嬉しくなったのは。


ふと気づくと猫のヤグラがこちらを見上げていた。


頭をなでると膝の上に乗ってくる。

沈んでいた魚の身をスプーンですくい、口の間に持って行くと、「にゃん」と鳴いてから食べ始めた。


「あちゃー。 ヤグラの分も次からよそわなきゃ」とクレア。


「そうだな・・・少なくていいから悪いが頼む」


「はーい」


「わるいなヤグラ。俺もうっかりしていた」


「にゃん」


俺は残りの魚の身をヤグラへあげた。


「お話してるみたい」


「ククイも、少し減ってしまうかもしれないが、よろしくな」


「いえいえ。ただの水に草ですから・・・ふふふ」


俺が申し訳なさそうに言うと、ククイがそう言った。


「そうですよ。それにもうヤグラも俺たちの家族です、ね?みんな?」


「そうだよ!」


「うん、かぞく!」


「いもうと!」


「にゃん?」


エドワードがみんなにそういうと、温かい言葉が返ってきた。

ヤグラもしっかり子供たちにも認められたようだ。


スープは薄味でちょっとお茶みたいな味だったが、魚が入ったことでかなりグレードアップしているようだった。


魚自体も味付けはしていないので、薄味同士でけんかもしていない。

もう少しだけ言えば、魚の身をおかずにお茶を飲んでいる感じだ。

雑草も()むとほんのりうまみが出てくる。ニラっぽい味がしている草に当たった。味がバラエティ豊かだ。


調味料があればもう1段階グレードアップが可能だろう。

余裕が出来たら揃えたいが、一度使ったら戻れなくなるのでタイミングを見ないといけないな。



グレードアップした雑草スープを飲んだ後、子供たちはなぜか俺の周りから離れず、

幸せそうな顔をしながらまったりしていた。


邪魔するのも悪いかなと思い、静かな声で年長組の4人を呼ぶ。


「はい」


「どうしましたか?」


「ああ、今日のこの後の予定なんだが、お前たちに薬草の探し方と採取の方法を教えようと思う」


「「!」」

「「おお」」


4人が出かける前に捕まえようと予定を伝えると、思ったより好感触でほっとする。


少し休憩していると、子供たちは各々遊び始めた。


とりあえずミミズを取ってきて、また罠を沈めようとみんなで川に移動する。

広い川なので当分はこの罠で、そのうちは大きな魚も狙いたい。


「おじさん、おじさん」


「なんだ?」


「これ、庭にもいるよ」


罠の中に残ったミミズの残骸を見たチビ達からそんなことを言いだした。


「本当か?」


「うん、こっち」


チビ達に引っ張られていくと、庭のはじっこにいい感じの枯れ葉が家に沿ってまっすぐ吹き溜まっている場所があった。


軽く掘ってみるとミミズが出てきた。


「うそ、知らなかったわ」とクレア


「お手柄だぞ、チビども!」とホームズが子供をなでた。


「役に立った?」


「ああ、お手柄だ」


俺の服を引っ張って連れてきてくれた子供が見上げてきたので抱っこをして頭をなでてやる。


最年長の4人もこれは知らなかったようでうれしい発見となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ