共感、してほしいだけ
また、夜がやってきた。
私は缶ビール片手に、ベランダへと続く窓を開ける。
むわっ、とした、むせかえるような空気。
雨上がりの、夏の夜風。
ーープシュッ!
片手で栓を開け、
片肘をつきながら、
器用に指でつまむように持って、
缶ビールをあおる。
闇の空と、
車のテールランプの赤、
街灯の白……
世界がまるで三色になったようで、
私の心の雨は上がらない。
ーーゴクリ、とまた一口、『現実』を呑み込む。
叱ってほしいわけじゃない。
諭してほしいわけでもない。
責めてほしいわけではない。
ーーただ、共感してほしいだけ。
「それはつらいね」
「大変だったね」
「がんばったね」
って、言ってほしいだけ。
足元に擦り寄ってくれる、私の大事な愛猫のように。
「にゃあん」
とひと鳴き、寄り添ってほしいだけ。
私はベランダにぺたりと座り、
缶ビールを床にゴトンと置いて、
全身で愛猫を抱きしめる。
こうして私の、夜は今日も過ぎていく。
愛しい猫に、支えられてーーーーーー