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人間になりたい動物達  作者: 空翔猫
3/6

黒猫と狼と商売

黒猫が辿る転機の1片。


今理解する言葉の裏側達。

黒猫はやってみたい事が有りました。

他の動物と同じ様にオシャレをしてみたかったのです。


しかし、おねだりをしても手に入れる事はできません。

かと言って、皆が見せてくれる本を読んでもシックリ来ません。


一つの節目にピアスを開けようと思いました。

そして、誰よりも早く実行しました。


安全ピンで。


『ピアッサー使えば良いのに!』


他の動物達は言いました。


黒猫にとって、目的を達成する為の手段はどうでも良かったのです。


ただ、耳に穴が有って、ピアスをを付けられるのなら。


(安全ピンどころか、布団用の太い物を使っている者も居るのに、何故?)


やはり、他の動物達が言う言葉を理解する事はできませんでした。


次に他の動物達が言うピアッサーを探しに行きましたが、やはり欲しいデザインも無く、太さが太くて一瞬で痛みが終わるだけ。

これだけの値段で、ただコレだけの価値。

何が良いのかよく解りませんでした。


ピアスを買うために稼ぎに行きました。

しかし、仕事は合いませんでした。


言葉が覚えられないのです。

言ってる意味を理解できないのです。


どれだけ働いても手順を覚えられても、レジは遅く聞き返すばかり。

よく怒られていました。


外国の動物達はお店が終わる頃によく来ていました。

黒猫はそんな時間が好きでした。


『よく閉店間際に来るんだよなぁ・・・ホント、迷惑だけど、店が開いてる以上はしゃぁないけどさ(汗)』


他の動物達はそう言いますが、黒猫は必死に駆け込んで来て嬉しそうに買っていく彼等が好きでした。


(何故お店の開店している時間に来る事が迷惑なのだろう?)


黒猫はまた他の動物達が言う事が理解できませんでした。


そのお店は、ある程度品物が無くなったら閉店時間前でも閉めるようになりました。


黒猫は理解ができず、仕事も上手くできず、その仕事を辞めました。



黒猫はオモチャ屋で働くようになりました。

猫じゃらし、爪研ぎ、遊び道具から武器、賭け事の道具まで揃ってる、レトロなゲームと新しい物、光と闇が入り混じったお店でした。


そこで出会ったのはキラキラと輝く動物と、頼もしくも怪しい不思議な犬と紳士の皮を被った狼でした。


不思議な犬は同級生の姉でした。

担当が違っていたので、殆ど顔を合わせる事は有りませんでしたが前の職場で同級生と働いていました。

しかし、不思議な犬の家で同級生と合う事は有りませんでした。


(一緒に住んでると言ってたのに何故?)


その不思議な犬は不思議な動物に変わりました。

宗教にハマって居ました。

様々な物が視え、占いが得意だと言うのです。


黒猫はタロットが得意でした。

雑ですが、大体の事は当たります。


不思議な動物よりも当たるのです。


(なんだ、確かに上手いけど私のほうが上手いじゃん。

 ハズレが多い。)


不思議な動物は怪しい動物に成り果て、1度だけ付き合いで入りましたが集会に行く事は有りませんでした。


御先祖様を敬う気も無い、親に感謝する気持ちも無い、我が身に痛みばかり植付けてきた者達に何を感謝するのだろう?


御先祖が繋いだ糸の結果が地獄だろ?

御先祖もカミサマもクソくらえ!


黒猫の一匹狼が吠えたのはこの時でした。

声は聴こえずとも、それはそれは大きな遠吠えでした。



そのお店の客には薄汚い狼が居ました。

同級生と働いて居ましたが、その雌猫は薄汚い狼が好きだと言うのです。

そして『黒猫ちゃん、狼に気を付けて、狼さんは喰べまくるから』と誰かが言っていたのです。

雌猫も怪しい動物も、口を揃えて。



黒猫は家に帰るのが嫌になりました。

狼が『泊まってく?』と言うのです。

一晩部屋を借りました。

誘われましたが、特に興味が無いので全拒否で。


遠くの友達に会いに行く時の手伝いもしてもらいました。

終電逃してしまって、自分では帰れないので途中まで迎えに来てもらいました。

最悪、野宿するつもりでしたが、その狼は紳士だったのか、優しかったのかは、今でも解りません。


その狼は言いました。


『黒猫ちゃんがいつ死んだと聞いても僕は不思議に思わないし、悲しいとも思わないよ。

 だって、やりたい事をやって死んだんだって思うから。

 ただただ、黒猫ちゃんらしいな、って思うよ(笑)』


今思えば(嘲笑と苦笑いと警告、そして黒猫らしさにお手上げだ。)

そう言う意味が込められた言葉なんだろうと思います。


それからも狼はお客として来ていましたが、あまり会話する事は無くなりました。

噂では、同級生ともトラブったりと忙しかったようです。


黒猫はキラキラとした輝き、底の見えない暗闇が嫌でお店を辞めました。



黒猫は大好きな物作りのお店で働く事にしました。

資格も無いのに、先生を任されました。

資格を持ってる店主は講師をしません。

黒猫は意味が解りませんでした。


オリジナルとして売ってるキットとして販売してる物は雑誌のコピーばかり。

オリジナル性が無い。


ソレを作ってお作り代を載せて量産して売っていた。


(パクリばっかりじゃん)


黒猫は遅くても沢山の物を作り、作り方を教わりました。

ミスは多かったですが、売上に対しての発注方法を理解しました。


ある日『娘にバレッタを娘にあげたいんだ。貴女に作って欲しい。』と言われました。

店長に許可を取り、作り始めたものの、お店で有る物では足りません。


他のお店で買ったら怒られました。

時間が掛かったら怒られました。


ソレでも黒猫は持てる技量で心を込めて作りました。

『いくら時間がかかっても、いくらお金がかかっても良いから、黒猫ちゃんの作った物を娘にあげたいんだ。』

そう言われたから。


黒猫はそのお店をクビになりました。

『貴女はこの仕事に向いてない。』

そう言われてクビになりました。


(貴女は商売を理解していない。)

今黒猫はそう言われたのだと思っています。


その後直ぐに手芸屋は潰れました。



オモチャ屋さんも数年後、潰れました。



黒猫は塀を歩くよりも綱渡りが上手いのかも知れません。

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