令和釣り日記(よどがわ)
ただの釣り日記です。
4月。
陽春の候・・・なんてビジネスメールを、日頃は使っているヤナギです。
さて陽春の真っただ中、ヤナギにおいては人生の目標の一つであったあるお魚を釣る目標を達成してしまいました。
その魚の名前はスモールマウスバス。
この魚の名を聞いて、眉を寄せる人達も、この世には存在するのではないでしょうか。まあ、そんな議論は、また別の機会に。いずれにせよ、ヤナギは、死ぬまでには釣ってみたい魚ランキング1位だったこのお魚を、今年のゴールデンウィークに釣ることができた訳です。
大阪のど真ん中を流れる淀川で釣ったことに、大いなる意味があるのです。
快挙達成の日時は2022年4月30日の午前8時過ぎ。私にとって正に記念すべき日となったのですが、このことに舞い上がり、すっかりお調子の助となったヤナギは、その日も含めて7日続けて、このフィールドに出向いたのです。40年以上もやっているのに、いまも一週間ぶっ続けで遊んでも、大の大人がまるで飽きることがない娯楽って、釣り以外にあるかしらと思います。
さて、この淀川河川敷近辺で出会った人々が、この7日間で垣間見せてくれた人間(いちぶ生物)模様のいくつか。勢いに任せて綴ることとします。
【黒ずくめウォーキングおばさん】
7日間とも出会ったウォーキングをしてる、やや小太りで年配の女性。
半袖シャツは黒。ぴっちりとしたタイツも黒。首に巻いたタオルも黒。サンバイザーやサングラス、そしてマスクまでも黒。髪も黒いが、少しだけ白いものも混じっていて、やや年配と推測したのは、そこだけが根拠。それがなければ、まるで年齢不詳って感じの奥方です。
必ず朝の7時過ぎに河川敷に現れるのですが、いつも背筋がピンとしていて、じつに若々しい印象。(おはようございます)と7日間毎日聞いた挨拶の声にも張りがあって、清々しい感じでした。
さてこの黒ずくめウォーキングおばさん(?)が7日目にして、脳天から鋭い声を発しました。
(キャ~~!!!)って悲鳴に振り返ると、大きな熊蜂が2匹、彼女の顔の回りを飛び回っていました。
・熊蜂はおとなしい蜂です。刺激しなければ、人に危害を加えることはありません。
・蜂という生き物は下方向への視界がほとんどありません。落ち着いて低い姿勢をとりましょう。
・蜂に遭遇する可能性のある環境に立ち入るのであれば、黒い服装は感心できません。
おそらく私よりはいくらか年配のこの女性が、いつまでも元気にウォーキングをしていて欲しいものだと思いました。
【タケノコ老夫婦】
なにやらゴソゴソ・ガサガサと、林の奥から聞こえる音に振り返ると、藪の中で姿勢を低くして土を掘る二人組の姿。初老のご夫婦と思われます。全くの勘ですが。
「あった、あった~~~!」
奥様の方が、嬉々とした声を上げます。どっこいしょって感じで腰を上げて、奥様の手元を覗き込む旦那様。
「あ~~、これは刺身にするには育ち過ぎてるな~」
刺身?刺身ってお魚でしょ。陸にはいませんよ、お魚。えっ、タケノコ?いや、ニョキっと土から頭を出しているのは間違いなくタケノコ。立派な大きさ。こんなところでタケノコが捕れるのですか?タケノコの刺身って、そんな食べ方あるの?
「こいつは焼くとするか。おっ!」
旦那様が何かを見つけたようです。丁寧に土を掘り掘りして旦那様が取り上げたのは、長さ25センチくらいの細身のタケノコ。奥様が手に持っているタケノコと比べて、二回り以上小さい。はい、私も先程それくらいのサイズのラージマウス釣りました。
(おそらく)長く連れ添っているご夫婦ふたりで、早朝の河川敷でタコノコ狩り。何とも風情があるな~なんて考えながら、私は次のポイントへ移動しました。
数時間後、特に目立った釣果もなく、タケノコ老夫婦を見掛けたポイントに戻ってくると・・・なんと炭火で皮を剥いたタケノコを焼いている。薄くスライスした生のタケノコもあるではありませんか。美味しそうに食べています。ゴザに2人で座して。
5月上旬の素晴らしい陽気。これほど贅沢な食事もないことでしょう。
いつまでも仲睦まじくいて欲しいものだと思いました。
【鯉捕り東南アジアの方々】
たぶん5月2日。淀川中流域にて初夏の陽気を受けたのか、一斉に鯉のハタキが始まりました。目にした鯉の大きさは、小さいものでもおよそ60センチ。岸際の水生植物周りでバシャバシャ、またバシャバシャ。こいつが始まってしまうと、鬱陶しいとでも思うのか、私にとっての釣りの対象であるバス君達が、皆揃って岸際から離れてしまうのです。そりゃそうでしょう。60センチを超える奴らが、10数匹集まってバシャバシャですからね。
そんなだから、バスアングラーにとって、この鯉のハタキ行動は厄介者以外のなにものでもないのですが、それでも毎年見るこんな風景に、私達釣り人は、初夏の訪れを実感するわけです。
「△%&“$##!!!」
夕方の5時をいくらか過ぎた頃でしょうか。いよいよ夕マズメのチャンスタイムに突入という時刻に、聞き慣れない異国語を私は耳にします。
振り返ると、グレーの作業服を纏った4名のおそらく東南アジア方面の方々。
ああ、確かにこの辺り、たくさん工場がありますよね。鉄鋼工場とか製紙工場とか。たぶん、そこの従業員の方達で、5時に仕事をあがった人達なのでしょう。
「△%#!!!・・・??◇〃++!!!」
なにやら、やたらとテンションが高いですね。もしかしてお国では、鯉のハタキなんて見ることがないのでしょうか?東南アジアって、河ばっかりの印象ですが。あっ、東南アジアの方々とは限らないですね。えっ、なに?じゃんけん???
突然に始まった4人のじゃんけんは、意外と早く勝者が決まりました。決まったのは敗者かも知れませんが。
勝者か敗者かは分かりませんが、いきなりお一方が履いていた作業着のズボンを脱ぎ始めました。そして、いまも鯉がはたいている水辺にドボン!
もしかして、鯉を捕まえようとしている?
素手で魚を捕えるって、それほど簡単じゃないんですよね。当然のごとく、鯉達は沖へ逃げて行っちゃいました。
「◇〃++!~~~~((+_+))」
先のテンションが嘘のような悲し気な声。
次は最低でも網くらいは準備しておきましょう。
本当のところを言うと、生物の子孫繁栄のための行事は、そっとしておいてあげて欲しいんですけどね。
異国の地でのお仕事、色々とご苦労があるかと思いますが頑張って下さい。
お疲れ様でした。
【将軍】
このゴールデンウィーク中に、鯉の産卵活動が始まったのは前記の通り。
ハタキとは、メスが産み落とした卵に、オスが精子をかける行為です。
せっかく生んだ卵が流されないやや淀んだ場所で、さらに日当たりがよければ条件としてベスト。
淀川水系中流域にも、そんな場所が数か所あり、まさに条件の整った入江の奥で、お腹の卵を落としながら泳ぎ回る一匹のメスの鯉を、7~8匹のオスの鯉が追い掛け回している場面に遭遇したのです。どうか次の命には、我の遺伝子を使って下さいってところなのでしょう。
メスを追っかけるオス鯉の中に、一匹だけ黄色の個体がいることを私は発見しました。
淀川水系に生息している野鯉の大部分は日本鯉とオランダ鯉のハイブリッドで、体色は黒いやつが圧倒的に多く、ごくごく稀に白や黄色い個体を見掛ける程度です。
この黄色い鯉、体長は目算でおよそ70センチ。他のオス鯉と比較して、決して見劣りしていない巨体です。
メスを追いかけるオスの順位は刻々と変化しています。ついに追いついたかと思ったら、くるりと向きを変えたメスにいなされ、コースをスピンアウト。2番手につけていたオスのインをついて、3番手だったオスが首位に浮上します。
注目を集める黄色いやつは5~6番手をキープ。虎視眈々とチャンスを伺っている模様。
メスを先頭に各馬一団となって、私の立つ岸際に突進してきます。
おやっ?
私はみとめました。この黄色いやつの頭部に存在する黒い模様を。
かなり昔、お堀かどこかに生息していて話題になった人面魚。※若い人はもう知らないか。
まさにそんな感じの模様が黄色いやつの頭部に。
う~~ん、どこかで見たことあるぞ、こんな鯉。さて、どこだったっけ?
私は頭の中のメモリを検索します。あっ!
それはN○Kでやっていたテレビドラマ。原作はあの山○豊子。題名は『○麗なる一族』。主演はあのキムタクだったような気がします。
○麗な大金持ちの家族が住む屋敷を囲む堀の中に、この堀の主のような位置づけで、金色の巨大な鯉が悠然と泳いでいたのでした。この鯉は、ドラマの中で、たしか(将軍)と呼ばれていました。
見れば見る程、あの(将軍)とそっくりです。古い記憶なのであまりあてにはできないですが。
何だかこの(将軍)に感情移入してしまった私は、竿を振ることも忘れ、この(将軍)を応援し始めていました。
1匹のメスを、将軍を含む7~8匹のオスが追っかけます。入江の周辺をすでに5周は回ったでしょうか。
このとき、先頭を泳ぐメスが、これまでと違う動きを見せました。激しく体を震わせたのです。
やや速度を落としたメスとの距離をオス達が詰めるや、一気に水中が白く濁りました。一斉にオス達が精子を放出したのです。
このとき、将軍は先頭でこそありませんでしたが、2~3番手を堅守していたので、いくらかの精子を卵に振りかけることはできたでしょう。
来年とか再来年、もしこの水域で黄色い鯉を見掛けたなら、私は今日の風景を思い出すことでしょう。
このゴールデンウィークの釣果は、7日釣行してバス10匹、うち一匹がスモールマウス。
愚作『百夜釣友』(100話にもおよぶ釣りを題材にした大作です)にも記載がありますが、私は年間バス40匹を釣ることを、自分のノルマにしています。
あと30匹。2022年5月9日。