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雅と雅 (B)編  作者: 雅也
4/7

4話


                 4


 今、雅たちは、コンビニのフードコートにいる。

いつもの様にそれぞれの飲み物とスイーツなどを注文し、フードコートに二人で座っている、通常の光景だ。



「ミヤ、資格取る為に、講習漬けで、疲れない?」

「う~んそうだな、いつも広い屋外での仕事なんで、ああいう締め切った環境ってのは、慣れなくって疲れるかな」

「でも、最後は試験があるって...」

「そうだけど、普通に一日聞いてれば、問題ないって講師の人が言ってた」

「そうなの?」

「うん」

「実際、簡単だったし、もう最初の方の講習の資格証は貰って来た」

「見せて見せて!」

「残念、会社に提出してきた」

「自分のなのに?」

「ちがうちがう、資格証のコピーを取って、あと社員の資格リストに載せるためだって。だから、後で返してくれるんだ。だって、作業中は基本、資格証は携帯しないといけないから」

「へえ、じゃあ後で見せてね」

「写真は載ってないぞ」

「なあ~んだ」



「それはそうと...」


 心配そうにミヤが聞く。


「ミイ、今までOLやって来て、いきなり実家に入るって、なんて言うか、どんな気持ちなんだ?」

「多分、気が抜けると思う。だけど、あの会社での雰囲気の中で、あと数年やれって言われたら、とても無理かも」

「使い古された言葉だけど、“カワイイってのは罪”なんだな」

「なにそれ? ふるぅ~....」



 ふたりでクスクス笑い、飲み物を一口飲む。


「さっきもね、真由が来てて、その事でいろいろ話し合ってたの」

「真由、何て言ってた?」

「とにかく最初は怒っていたわ」

「はは。アイツらしいな」

「私だったら殴り返す...、くらいの勢いだったわ」

「やりかねないな真由なら」


 二人でちょっと笑い合う。

 その直後にミイの携帯が鳴った。メッセージだ。


「あ、お母さんからだ」


『雅、もう10時過ぎよ、そろそろ帰ってきなさい』


「だって、お母さんが」

「そりゃ心配だもの」


 と言っているうちに、さらにメッセージが来た。


「あ、また来た」


『ミヤくん居るの?』

『うん居るから安心して』

『ならいいけど、あまり遅くならないようにね』

『は~~い』


 とまあ、こんなやり取りだ。


「いつも一緒ね、このやり取り」

「ミイが心配なんだよ」

「でも、ミヤが居るって言うと、途端に柔らかい言い方になるの」

「オレ、けっこう信頼されているんだな」

「絶大よ!」


 ミイの手を取って。


「そんじゃ、かえろっか....」

「そだね....、うふ」


フードコートを出て、二人いつもの様に手を繋いで帰って行く。



        ◇ ◇ ◇



 新しい週が始まった。


 ミヤは今週も講習だ。

 今回の講習は2種類、それぞれ終了時にペーパー試験がある。ある一定以上答えが合っていると、合格である。


 問題に出やすい所は、あらかじめ注意して教えてくれるので、そこを重点に覚えておけば、いい得点は出せる。(いいのかな?)


「講習受ける人多いな、100人は超えてるみたいだ」


 色んな業者からここへ資格を取りに来ているのだが、ミヤの勤める会社からは、今回はミヤ一人だった。

 大体は、各業者数人づつで来るものだが、今回のこの資格はミヤだけが持っていないので、今回は一人で参加している。


 講習内容は2種類なので、今週も大きな会場を貸切っての、一週間箱詰め状態である。2種類受けるので、当然の事だが、2回終了試験がある。


 今の建設現場で働くためには、色々な資格が必要になってくる。むしろ、有資格者でなければ、殆ど仕事にならないのが現場での現状である。

 ミヤには会社から 

『お前は今年、資格取得の年だ。取得の為の条件がほぼ今年で満たしているので、出来るだけたくさん取らせてやるから、頑張ってこい』

 と言われているので、一つも落とすことが出来ない。 

 気の抜けない日々が続きそうだと思っていたら、先日の事、浩二が

『ま、だいたい滑るヤツはいないから、気楽に行ってこい。お前 記憶力いいから、まず大丈夫だな ははは』

 なんて言っていた。


               ◇


 ....で、ほぼ一週間を使った2つの講習は無事に終了して、しっかりと終了証も もらって会社に帰ってきた。


 部長が。


「ご苦労さん石仲くん。早速だが、再来週からは3つの講習に行ってもらうから頼むぞ」

と言われた。 

「今度は何ですか?」 

と聞くと。 

「小型移動式クレーンと、玉掛作業主任者それに、ローラーの締固め の資格だ」

と言われた。


(今年、いくつの資格を取らされるんだろう?)と思い、会社を出て、家路についた。

 

          △


「ただいま~」

「おかえり、雅 どうだった?講習は」


 帰って来るなり恭子が講習の結果を聞く。


「うん、案外簡単で、暗記すれば大体出来てるよ」

「あんた、暗記って得意だもんね」

「でも、再来週からまた3連続で講習だってさ」

「あらまあ、忙しいのね」

「って言うよりも、早く資格を取っておかないと、今のままじゃあ殆どの作業に影響が出るからだって」

「そうなの? 以外に現場の人って、資格がないと出来ないものなのね」


「ね、母さん」

「ん、なに?」

「あの....、ハラヘッタ!」

「あ、ゴメン。出来てるから。美沙とお父さん 呼んで」

「うん」


 と言っているうちに、美沙が二階の部屋から降りてきた。

 その音を聞いてリビングルームに居た雅人がキッチンにきた。


「雅、講習どうだったんだ?」

「うん、両方取れたよ」

「そうか」

 

 と言って、席に着いた。次に入って来た美沙からは。


「お兄ちゃん、お疲れ様、どうだった?」

「オッケイだったぞ」

「さすがだね」

「落ちるヤツって居ないみたいだぞ」

「そうなの?」

「そんな講習みたいだ」


 それを聞いて、雅人が

「雅、それでも講習は真剣に聞きなさい、お前にとっては新しい知識なんだから」

「そうだね、分かった」


「さあさあ 食べましょ。美沙 マヨネーズ出して」

「は~~い」


「じゃあ、いただきます」


「「「いただきます」」」


 一家四人の楽しい夕ご飯が始まった。


「母さんの カラ揚げ は、相変わらず美味しいな」

「うん、美味しいね、実は私もさっきまで手伝っていたんだよ、お父さん」

「そうか、美沙もだんだん料理が出来るようになってきたんだな」

「うん、お母さんのおかげだよ」

「結構助かっているのよ 美沙、ありがとう」


「美沙ホントに美味いな」

「えへへ、ありがとう、お兄ちゃん、いっぱい食べてね」

「おう」


 いつもの楽しい食事が進む。


          △


 晩御飯が終わって、お茶を飲んでいると、ミヤのスマホが鳴った。

「ミイ姉ちゃんから?」

「そうだな.....。はい、もしもし...」


 ミイからの電話はだいたいいつもこの時間にくる、今日はコンビニのフードコートに行く日だ、ほぼ一日おきに行くようにしている。


 電話が終わり、ミヤが恭子に。


「母さん、後で出かけるから」

「ミイちゃんね、分かったわ、気を付けてね、ミイちゃんによろしくね」

「分かった」


 そう言うと、美沙が

「ねえ、お兄ちゃん、今日わたしもついて行っていい?」

「あ、ああいいよ、おいで」

「やった~!」


 と言っていると、恭子が。


「雅、ちゃんと美沙に付いていてね、夜だから」

「うん、分かってるよ」


 その後も雑談をしていると、行く時間が来た。


「美沙いくぞ」

「は~い」


 と言って、二人で家を出て行くと、玄関先でミイに会った。

「ぴったりだね、いつもの事だけど」

「そうだな。じゃ、行こうか」

「美沙ちゃん、ちょっとだけ久しぶりね」

「うん、今日はね、お兄ちゃんに無理やり行きたいって我儘言ったの」

「あはは...、いいのよ、私も楽しいから」

「ありがとう、ミィ姉ちゃん」


 喋っていると、じきにコンビニに着いた、いつもの様に飲み物とスイーツを購入して、フードコートに座った。


 すぐにミイが。


「ミヤ、お疲れ様。講習漬けで疲れたでしょう?」

「さすがに覚えることが多くって、体じゃなくて、頭が疲れた」

「でしょうね。さすがの暗記王のミヤでも、苦戦かな?」

「王 じゃないからな。でも、講習中に、寝てるヤツも居たからな、ソイツどうなったんだろ?」

「そんな人も居るんだ、みんな資格を取りたくて必至なのに」

「知らないよどうなっても。その人の自業自得なんだから」

「でも、それって、会社に講習料金払ってもらって来ている訳なんだよね」

「もちろん、そうなんだけど」

「会社に申し訳が立たないのかしら?」

「さあね、分らない、資格要らないんじゃない?」

「困った人ね」

「迷惑な人だ、周りの人も気分が悪くなるから」

「向いてないんじゃない?仕事」



 こんな話しても仕方ないと思ったミヤは


「今週で会社の出勤は終わった訳だけど、周りの態度とかはどうだったんだ?ミイ」

「別に....、って感じだった。周りの目のせいかな、何か今までで一番疲れた一週間だった気がする」

「そんなもんだったのか、何だか悔しいな」

「いいのよ、私の為に怒らないで。それだけで嬉しいから」

「でもなあ.......」

「それでも、あの当事者と会わなくて済むって事は、これからそのストレスが無くなるって事だから、安堵する自分も居るの」

「そっか...。ミイがそう言うなら、オレからは何も言わない」

「いつもありがとねミヤ、私の為に...、ホントに好きよ みやび」

「はは、照れるな、オレだって この好きは変わらないぞ みやび....」


「..........」

「..........」



「チョ、ちょっと!お二人さん、私が居るって気が付いてました?」

「「あ!忘れてた」」

「うわ! 失礼ね、もう!  お姉ちゃんもそれはないよ~」

「あはは、ごめ~ん」




 ※ 閑話休題 ※




「ねえねえ お兄ちゃん」

「なんだ?」

「このまま周りに付き合っている事をいつまで黙っているの?」

「う!.......、痛い所を突いてくるな」

「ホントにタイミング逃した感はあっても、伸ばし過ぎだと思うけど」



 そうだ、もうすぐ二人は24歳、いい加減にしないと、タイミングよりも絶好の機会を逃してしまう事になるかもしれない。ちょっとした不安を感じ始めた二人は。


「そうだな....、じゃ、近いうちに皆を集めて、発表する。いや、しなければいけないと思う」

「お兄ちゃん、やっと言ったね。ミイ姉ちゃん、どう?」

「美沙ちゃん、何か私も吹っ切れた感が湧いてきた。ミヤと話し合って、近々

発表します」

「お姉ちゃん、覚悟が出来たのね」

「うん、出来た!」

「お兄ちゃんは?」

「やる! 近々公表するぞ~」



 店内に、身内だけ(3人)の拍手が静かに起こった。








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