3話
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週が変わり、ミヤは今週は五日間連続で講習である。
テキストでの講習は慣れているものの、実技の講習は.....、実は得意だった。
(会社の機械に乗ってたからね、ホントはいけないけど)
そして、よく現場の人たちに言われた。
「ミヤ、お前って、機械一般の カンがいいよな。それに センスもいい。これは結構 短期間でマスターしてしまうかもな」
確かに、重機を含む機械一般は、カンがイイ人は覚えも早いが操作にも無駄がない。後は、その人の性格が仕事の良し悪しを決める。コレでいい と思ったらそれまでだが、“さらに”と思う者が、最後の仕上がりの見た目に相当な差が出る。
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ミヤは、テキストによる講習は得意だ。修了試験でもほぼ満点に近くは確実に分かった。....で、これはもちろん合格した。
(殆ど滑る人はいないんですよ (作))
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後半は実技だ。これは実際に機械に乗って、ちょっとした操作と作業染みた事をするが、ミヤはこれも得意で、実技試験の時に、乗ってましたか?と聞かれて、ちょっとだけ...、と、若干の嘘をついた。
(てへ!)
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今回受けている講習は、終了するまで一週間かかるので、終了試験が終わるとそのまま週末になる。
この講習の間にも、ミイとは連絡を取り、事の進捗状況を確かめていた。今日は朝からミイの部屋に行き、話を聞くことにしていた。
「で、どうなったんだ、あの男どもは」
「それなんだけど、人事部の人と話し合いをして、私が事を大きくすると、当事者に迷惑がかかるから、私の退職で事を収める事にしたの」
「そ! そんなのあるか!!そんなんじゃ、その会社ずっと変わらないぞ。いいのか?」
「うん、私はもう辞めちゃうから、もうどうでも良いの....。でもね、今その人達が大事な商品を取り扱っていて、ここでその人達が居なくなると、納期のズレとかで、損害がそこそこ出るから、私が身を引けば、事が鎮まると言う事で、そうしたの」
「うわ~~!! そんなんあるか、そんなのやられ損じゃないか!」
「でもね、その交渉が成立出来たら、その二人は何らかの処分が与えられる事になるらしいの」
「どんな?」
「あまりはっきりは言って無かったけど、減給30~35%で、3ヶ月って言ってたかな?」
「成功報酬無しの減給か~、それもかわいそうだな、でもホントは何処かの支社に飛ばされれはいいのに」
「さすがに家族が居るから、左遷は許したわ。でもね、もう噂は広まっているみたいだから、この後はどうなるか、分からないかな」
「いいのか? ミイは、それで」
「いいの、だってコレで 私、毎日ミヤに会えるから」
「う!!.....、ミイ....、か、かわいい....、けど、いつ退職なんだ?」
「えっとね、明日から一週間は引き継ぎで、その後は有給消化で退職日を待つの」
「って事は」
「再来週からは家に居るから、と言っても、暫くはお店に出てアルバイトするの」
「実家の店でアルバイトか....、暫くはそれでいいと、オレも思う」
「おじさんとおばさんは、何て言ってるんだ?」
「『そんな会社、ホントなら来週から行かなくていい!』とかいってお父さんは随分と怒っていたわ」
「そりゃそうだろ、オレだって将来の “嫁”が 色んな事されたら怒るし、コレを聞いた時から、会社まで怒鳴り込んでいきたい気分でいたからな」
「..........」
「........?」
「ぽ..........」
「.......?....、ミイ...、何 赤くなっているんだ?」
「え?...、ミヤ、気が付いていないの?」
「なにが?......、あ!!」
自分の心の内に秘めて置いた言葉が、何げない拍子に出てしまった事に、羞恥するミヤ。
「でしょ?」
「うわ~~!! 恥ずかし~...!!」
「こっちもよ...、でも...、うれし~~!!」
「うわ!!」
どうやら、雅たちは抱き合っているみたいです。
△
「ホントに、私だったら徹底的に戦うけどな~」
「やめてよ真由、今はコレで良いと思っているんだから」
「でも、なんか悔しんだよな~」
「ミヤも納得してくれたし、もういいの」
「W雅は優しすぎるんだよ、ホントにぃ...」
真由がミイの部屋に来ている。 先日の事を電話で聞いていた真由が、一部始終を聞いて、ご立腹である。
「いいから、もうこの話は終わりね」
「まあ、ミイがいいならいいかぁ.......、うん。でも悔しいな~」
雅の為に本気で怒ってくれる真由とは、大学卒業後も良い友人で、こうして頻繁に連絡を取り合っている。
「....で、この事について、彼氏くんは何て言ってるの?」
「ミヤ最初はね、すごく悔やしがって、怒ってた」
「当然よね、愛しい愛しい彼女だし」
「茶化さないで(そうだけど....)」
「.......で?」
「最後は オレが会社に怒鳴り込んでやろうか なんて言ってた」
「けど、宥めたんだね、ミイなら」
「うん、落ち着いてもらって、私がもういいからって、何回も言って、宥めた」
「その男たちの処分はないの?」
「人事に相談したんだけど、左遷はしないって...、でも、この噂は社内とか業界内に広がっているみたいだから、その後はし~らない。でも、それなりの処分は出るみたいだよ」
「どんな?」
「減給だって言ってた」
「かる~.....、自分たちがどういう事をしてたって事が、男目線だから、分かってないのね」
「でも私って、ほかの一部の女子社員からも、いい目では見られてなかったんだよね、後で知ったんだけど、何かキツかったなぁ」
「みやびってスーパー容姿だからなぁ~....。そっか、嫉妬かぁ....、そっちの方がキツイかも」
「うん。でも最後は泣いた」
「そっかそっか~....」
「でも、ミヤが全部受け止めてくれたから、落ち込んでいた気分は大分晴れたかな」
「うわ! いいな~彼氏....」
「真由だって しっかりと聞いてくれるじゃん。ありがとうございます」
「ん~~~~~~、テれるなぁ」
女子トークはコイバナが多い。
真由が帰り、その後ミヤとの待ち合わせがある。
ミイにとって、大好きな時間だ。そろそろ9時半になる、玄関に出ると、ミヤが待っていた。そのまま手を繋ぎ、コンビニに向かう。