ピーナとお散歩
最近あったことをお互い話しながら、そこらへんを散歩することにした。
ロイディが守りたいと言った、この街のほんの一部。
ささやかな幸せに感謝したいと言ったから、ピーナに「お散歩に行こう」と誘われた。
「手をつなごうよ」
ピーナから普通っぽく言われ、戸惑う僕。
人生経験上、普段ひとと手をつないで歩くと言う習慣が僕には少なかった。
それを話した時だったから、ピーナが普通っぽく切り出してくれた。
一歩、進んだ、ってことになってしまうのか?
僕はジェンダーなだけで、おかまの類いではない。
ピーナもそんな僕との距離感に時々悩む、と言ってくれた。
昔のトラウマで、僕の手は少し震えていた。
ピーナが気づいて、「私はあなたを侵略しません」と言ってくれた。
少し震えがおさまって、小さく何度もうなずく僕。
「ピーナ・・・ありがとう」
「・・・うん」
そのあとはだんだんと慣れてきて、手をつなぎながら近所をお散歩。
茶色い橋の下が小ぶりなトンネルで、短いその道のりを出るとまぶしい。
ひなたが広がるなんともない、何も変わったことがないような風景。
階段には猫がいて大あくびをしていて、ピーナが「可愛い」と言い出した。
階段に座って、猫を愛でる。
「ワクチン接種とかしてるかなぁ?」
「なんで?」
「えぇっ?」
そんな時、橋の上から飛び降りてやって来た男が、「薬買う?」と話しかけてきた。
いりません、とはっきり言うと、案外とあっさりいなくなった。
「特別製の『新薬』なんだけどね」と男は言っていたから、ロイディに報告しなきゃ。