ピーナとお買い物
人間界にある自宅に戻ると、そこにはピーナがいて、「お帰り」と言ってくれた。
ピーナは料理中で、長い白髪をうしろに束ねている。
「何を作っているの?」
「学校で習ったやつ。ベーコンとズッキーニの入ったカルボナーラだよ」
ピーナと一緒に昼食を済ませて、ロイディからもらったキューブを見せる。
惑星豆の収穫の話もして、ピーナは目を輝かせている。
「アールと出会えなかったら、私、『そんな世界なんてない』って言ってたわ」
僕は少し笑ってしまう。
人間界には、魔法の類を知らないか信じない者が多々いる。
だからって妙に、麻薬にからめて話をして決着しようとするからイヤだ。
お腹を休めてピーナと買い物、ついでに金色のブレスレットをプレゼントした。
かざしてみているピーナは満面の笑みをこちらに向けて、「嬉しい」と言った。
帰りは雨で、街の小ドーム市場だったところで雨宿り。
するとそこに楽隊がいて、「お嬢さんたち踊ってみなさい」と言われた。
ピーナは買い物袋を座る所に置いて、僕の手をとってリードした。
ぎくしゃくしていたけど、楽しもうと思うと、自然と動きもなめらかになった。
手をつないでターンをして、ドームの中はなかなか盛り上がった。
ピーナの、ダンスは私のほうがうまいのよ、って顔が可愛い。
僕はピーナが大好きだ。
まだ女性としてなのかは分からない。
でも、ピーナと同じ時代に生まれて、それから実際に出会えてよかった。
護りたい、ってこういう時に思うのか。
何気ないかもしれない自分的な特別の場面で。
だから皆、護りたいものをぽつぽつとしか言わなかったんだ。
◇普段家を任せてるピーナにも、楽しんでもらうための注文が帰宅後届く◇
*もう実がなった橙レモンの苗鉢