錬金釜フェア
西方寿学院では、半年に一度のペースで錬金釜フェアを開催している。
錬金釜は意思を持っているとされていて、中は黄緑色の液体が時々弾ける泡を作る。
焚火の火力で加熱していて、大きな黒い釜からは段ボール箱みたいな匂いがしている。
フェア期間中は誰でも参加ができるけど、見世物感覚の発表でイベント化している。
僕とロイディもエントリーしていて、順番待ちの間、前のひとたちの出来栄えを見る。
釜は少し高い所に設置されていて、参加者は舞台に上がる形式。
優勝とかはないけど、なんとなくすごいものを作れたら学校内で名が知れる。
混ぜ合わせる具財は基本自分で調達せねばならない。
もしくはそのフェアが用意したチャリティー価格具財を買わないと参加できない。
チャリティー価格具財は、どれを掛け合わせても無難に役にたつものが出来る。
『グレープ』たちは、言霊玉と森の精霊式一匹を釜に入れた。
錬金された金色のビー玉みたいのを冷まし、飼ってる鳥にやると喋れるようになった。
通常、鷹は喋れないので場内がざわざわした。
ロイディは、丈夫な編み上げブーツと強力磁石と
少し抜いたA10の感覚部分を釜に入れて、『マグリー』と名付けた。
どうやら、自分の意思により磁場が足元で操れるブーツらしい。
前々からあったのか聞くと、ロイディは自分で考えたと言った。
僕の番が来て、錬金釜に手甲と小盾と自分のバリアと、あとフラワドエルを入れた。
さびしいけど、フラワドエル達が昨晩夢の中に出てきて、錬金釜フェアを言い当てた。
そして自分達を錬金しろ、と言う要望があって、呼び出してみるとうなずかれた。
もしかしたら少し先、何か起こるのかもしれない。
そんな不安の中完成したのは、『雪月花盾』・・・僕が名付けた。
見た目は普通の黒い革手袋だけど、フラワドエルの意思を感じとって、泣いてしまった。
ロイディは事情を知っていたので、肩を掴んで抱き寄せてくれた。
「きっと大丈夫。僕は君のことも護りたい」
護られるだけじゃいやだよ・・・そう言って僕は泣き疲れて、眠ったらしい。