ニコルの成分
思いのほか復帰は早かったな、とロイディは『ペール』のメンバーに言われたそうだ。
ニコルは生命力と精神力もしくは魔法力を回復する癒し系植物。
他の国とかでは架空のものや伝説とされているシュアザローナだ。
そのニコルの成分を他のシュアザローナの薬酒に入れたから。
それが早期回復につながった、らしい。
意外だ。
シュアザローナであるラフィーの実を栽培している農家の生まれの僕。
その薬酒の作り方を普通に知っていて、珍しがられたのがなんだか意外。
みんな知っていて手に入らないのかと思っていた。
だから市民農園で栽培してみたんだけど、シュアザローナの薬酒自体を知らないらしい。
もしかしたら、別の名前として一般には広まってるのかな。
そこらへんは深入りしないほうがいいかも。
その件で商いをする気はないし、小さい頃はその知識に怖がられたから。
覚えの速さに、両親にもいぶかしがられたりした。
「兄さんの子供じゃないよね?」と父。
「そんなわけ、ないじゃない?機会があったら彼ともしてたけど」と母。
僕の父は『天才ミヤビ・ロクウィル』の実の弟。
容姿が麗しいひとで、髪の毛は長く、女性と見紛うばかり。
そんな自分が大好きなひとで、最近老けてきて、僕への風当りは増すばかり。
母は、「パパのことを顔で選んだの」と言ってはばからないひと。
正直、そんな両親と思春期手前って理由であまり会いたくない。
ミヤビおじさまの妻であるアサヒおばちゃんのことも、陰口を叩くから。
僕は両親より、アサヒおばちゃんがのことがひととして好きだ。
今度アカツキ君にそのことを話してみようかと、青い板チョコを食べながら思う。
このままじゃ、いっぺんに一枚食べちゃうな・・・。