黄色いニンジンのスープ
雨の中傘をささずに外出したら、風邪をひいた。
ピーナが心配して来てくれて、何か食べたいものはあるかたずねた。
通じるかどうか分からないけど、「黄色いニンジンのスープ」だと言うと、困惑顔。
そうだ、と思って、レッドに頼んで書き出してもらう。
なるほど、と、ぱっと顔色を明るくするピーナ。
買い物に行ってくれて、咳止めの葉っぱがないと言う。
ベランダで自家栽培していることを言って、食材はそろってスープができた。
よろめきながらの食事だったけど、なつかしくてしみじみした。
そう言えばアサヒおばちゃんがあながち近くに引っ越してきたじゃないかと思う。
黄色いニンジンのスープを教えてくれたのは、アサヒおばちゃん。
なんだか急に泣き出してしまって、声を噛みしめた。
ピーナがホームシックなのね、と言うけれど、その逆だ。
家に帰りたくない・・・それがなぜなのかよく分からない。
ピーナがアサヒおばちゃんに連絡を取ってくれて、おばちゃんが来てくれた。
最近はあまりキッチンにいなかったわ、と手料理をふるまってくれた。
今日はここに泊まっていくから、安心して眠りなさい、と言われた。
――・・・翌日、風邪はどこかに去った。
アサヒおばちゃんは、思いのほか早く手が離れそうなアカツキ君が心配らしい。
その話をぽつぽつして、指先で涙をぬぐっていた。
彼女の立場を考えると、アカツキ君の存在は大きかろう。
突然やってきた伝説のボディガード花猫三世を、ためそうとした身内がいる。
返り討ちにされたらしいが、おばちゃんの立場が心配だ。
◇アサヒおばちゃんが作ってくれた特別な思い出メニュー◇
*ベビーホタテのトマト煮込み