ドールハウスの箱庭
「そろそろ誰かにゆずろうと思っているのだけど、ひとり分たりないの」
今回のバイトの依頼内容は、小背より小さいと言われる種族について。
種族名は『指丈小人』、身体が小さい分、僕たちとは少し思考回路が違うらしい。
事前に色んな姿がいることと、背丈は指の大きさくらいだと聞いている。
依頼人の家の玄関門が開いた時に、つんのめった。
そしてそこに、指丈小人を見つける。
女性型でアンティークなドレスを着ている、可愛らしい容姿だ。
「助けて。もうこんな所にいるのはイヤよ。仲間と子供作れって命令されたのっ」
「それはご法度だ」
助ける約束をして、胸ポケットの中に指丈小人を隠し、依頼人のもとへ。
一室に案内され、豪華なドールハウスが何件も飾ってあるのを確認。
実際に火が使えたり、タイルの部分がひんやり冷たかったりする。
まず長は禿頭で白いヒゲをたくわえていて、僕に丁寧に挨拶をした。
息子は鼻の辺りが赤く、ずんぐりむっくりしているが気さくな感じ。
全部で五十人いるらしいが、その代表としてスーツを着た青年が声を透した。
「おいでませお客人!お茶でおもてなしいたしたい。テディアオーレ!」
カーテンコールのような仕草をしたそいつを示して、長の息子がそでをひっぱる。
どうしたんだろう、と思ってそちらを向くと、「あいつおおげさだから」と一言。
依頼人の名前はキャサリン、引っ越し先に彼らを連れて行く気はないそうだ。
それから、交配命令を出したことを隠蔽したい、と言い出してきた、
いなくなったひとりを探して、殺して欲しいとも言われた。
僕は少し考えて、キャサリンに「僕が無料で引き取ってあげる」と提案。
それでいいわよ、とキャサリンが言うと指丈小人たちから歓声が沸いた。
そして僕の住んでいる家では手狭なので、彼らは今、寿魔法学院に住んでいる。
そのあと寿学院経由で、彼らから「ありがとう」と手紙をもらって嬉しかった。