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プロローグ

以前投稿した作品をリメイクしています。


手探り状態で執筆していますので誤字脱字があるかと思いますが、何卒宜しくお願いいたします。


矛盾、改善点等些細なことでも構いませんので、感想をお待ちしております。


※ハーメルンでも同作品を投稿しています。

「なんだこれは…」


日本国陸軍、特戦群に所属するサトウ1等陸佐は、眼下に広がる悲惨な状況に唖然としていた。


東京23区上空

サトウが搭乗するティルトローター機の真下では、建物が、車が、街路樹が盛んに燃え、灰色の街が赤色に染まっていた。

さらに時折何かが爆発する音が聞こえ、それに合わせてサイレンも響き渡る。


その業火の中で目を疑うことに、何万と数え切れないほどの市民がまるでゾンビ映画を再現したかのように、危機察知能力が欠落したのかビルの間を縫って行軍を続けていた。

訓練など受けたこともないはずだが誰に命令される訳でもなく統率を図り、正規軍にも劣らない整然とした、通常であれば賞賛に値する隊列を組んでいた。

ただし、当然そんな集団がまともであるはずがない。

団体は絶望の淵から脱出しようと散り散りに逃げる外れた個人を捕縛すると、それが自然の摂理だと言う風に殴る蹴るの暴挙を繰り広げていた。

どうやら道徳の授業は効果がなかったようだ。

1佐の眼下で1人また1人と人がただの物へと成り下がる。

善良な市民があらん限りの悲鳴を上げ許しを請うが、無表情で機械的な群衆は一切の躊躇を見せずに、死神の如く命を刈り取る作業を続けていく。

サトウが守るべき自国民が、同じ守るべき自国民を攻撃して道路に血の海を拡散させる。

さらに悪いことに、そこへ銃火器を所持する警察や同業者も加わり、阿鼻叫喚の様に拍車がかけられた。


本来であれば先人を切って助けに行かなければならない1佐の部隊は、最早救助不可と苦渋の決断を下していた。

それでも彼らは所属する習志野へ、なんとか状況を挽回できないかと最高速度で飛行していた。

「隊長…」

「何も言うな、言い分は分かる。しかし、お前達を無下に死なせることも出来ない」

心身の疲労でくたびれた顔をするサトウが、憎悪を全身に滲ませている部下を何とか諭していた。



事件発生前

元々この部隊は、富士山麓でAIチップを含めた全ての無線を封鎖して1週間の定期行軍を行っていた。

精神的、肉体的疲労感に負けず、予定通り7日目の昼には目的地に到達した。

ただそこに隊員達を迎えるはずの別の隊が到着を待っていなかった。

何かの手違いで集合地点を間違えたのではないかと、サトウは無線封鎖を解除して基地との通信を試みるも通じず。

訝しみながらも改善の余地なしと独断して、酷使された体に鞭を打ち、富士演習場へ再度行軍を行った。

しかし、事態は改善されなかった。

それどころか不可解なことに、普段であればどこかしらの部隊が駐留しているはずの演習場はもぬけの殻で、いよいよ非常事態が発生しているのだと焦燥感に駆られた特戦群は、駐機してあったティルトローター機を誰の許可もなく拝借した。


一刻も早く習志野へ向かわなければ

一同戦闘も視野に入れ、万全の態勢で首都へと向かった結果判明した事象

それが自分達の想像を遥かに上回るこの世紀末の混沌とした世界であった。


「あぁ…」

1佐は、普段の自分からは考えられないほど、悲観的な思考が漏れていた。

現状も未来も真っ暗で、全く展望が窺えない。

真下に広がる光景は、普段感情を表に出さないよう厳格に訓練を行っている特戦群をもってしても耐えられないものであった。


「警告、警告、ロックオンされました」


首都を通過し、部隊が所属する習志野へ近付いた頃

突如、機内に機械的な声とアラート音が響き渡った。

「ブレイク!ブレイク!」

パイロットは瞬時に反射神経でもって急旋回、急上昇を行い、同時に妨害レーザーを射出した。

隊員を乗せた4機の機体がそれぞれ列を崩して散開する。

一体どこから放たれた?

…は? 習志野だと!?

サトウ達は、AIチップで自身を亡き者にしようとするミサイルの出処を探った。

その検索結果に、サトウ達はさらに頭を抱えることになった。


ミサイルの発射地は、自身が所属する基地から。

敵味方識別コードがあるのだから誤射などありえない。

明確にこちらを敵と判断して撃ってきているのだ。

あいつらは何を考えているんだ!?

サトウは心臓を掴まれたような苦しみを感じた。


警告通り、白い雲を曳いた大量のミサイルが機体に接近した。

しかし、それらは射出したレーザーに反応してあらぬ場所で爆発した。

代わりに付近で発生した轟音と振動、破片が機体を襲う。

カンカンカン、と甲高い音が爆発音に遅れて外側から聞こえてくる。

それでも難なく飛行できていることから幸い機体が削がれることは免れたようだ。

が、しかし、隊員達の神経をすり減らすのには十分な効果はあった。


ふざけるな、と厭悪の眼差しを向ける者

どうすればいいんだ、と悲観に暮れる者

生き残りを助ける、と戦意に燃える者

三者三様の想いを馳せて、機体は進路を変更した。

サトウは不可抗力とはいえ、家族を捨て、仲間を捨て、国民を捨てた自分達の向かう未来が霞んで全く見えず、自身の死さえ脳裏を過っていた。

「…隊長、とりあえず箱根ですかね」

「なんで箱根なんだよ」

まだ余裕があった1人の部下がそんな隊長を何とか元気づけようとふと思い付いた冗談を口にしたが、余計に機嫌を悪化させるだけだった。


娘は無事であってくれ


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