☆1話 記憶喪失☆理沙side
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『理沙…おちついて聞いてね??』
くぐもった声。
『斎藤くんが、事故で病院に運ばれたんだって。』
心臓が止まるかと思った。
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私は病院にかけこんだ。
急いで知らされた病室へ走る。
バンッ!
大きな音を立てて病室のドアをひらいた。
そこには、私に知らせてくれた美香と吉沢くんの姿。
「達也は…??」
つぶやくと、2人はためらうように顔を見合わせた。
そして、うながすようにベッドを見る。
私はかけよった。
ベッドの中で、3年前に離れ離れになってしまった、
今日ひさしぶりに会うと約束していた、
ずっとずっと待ち焦がれていた、愛しい人が眠っていた。
頬にガーゼをはって、頭には包帯がぐるぐると巻いてある。
「達也…」
私はその頬をそっと撫でた。
それでも達也は死んでしまったかのように動かない。
「ねぇ…達也は大丈夫だよね??」
美香の方をみないで問いかけた。
美香は何も言わず、変わりに吉沢くんの声がした。
「…体は全然大丈夫らしい。けど…頭を強く打ったらしくて…」
達也の目が少し動いた。
ゆっくりと、瞼をあける。
「達也!!」
私が名前を呼ぶと、達也はじっと私を見た。
そして、口を開く。
「おまえ…誰??」
「えっ…??」
時が止まった気がした。
何…それ…??
私が固まっているのを見て、美香が小さな声で言った。
「…記憶喪失だって。」
「きお…く、そうしつ…??」
それって…
今までのこと、全部忘れちゃったってこと??
私のこと…
忘れちゃったってこと…??
…そんなのウソだ!!
私はぼんやりと私を見ている達也の肩を揺さぶった。
「うそ!うそだよね!?ほんとは私のこと覚えてるんでしょ!?」
「…??」
達也はいぶかしげに私を見た。
「そうだ!みんなで私を騙そうとしてるんでしょ!?バカだなぁ〜!そんなのひっかかるわけないじゃん!!」
きっとそうだ!
ほら、きっともうすぐ、達也が笑いながら『ドッキリ〜!』とか言うんでしょ!?
わかってるんだからね!!
「理沙…」
美香が困ったように私を見た。
「ウソじゃないの…わかってるだろ??」
吉沢くんがはっきりと言った。
…わかってる??
わかってないよ!!
信じたくないの!!
「ねぇ、達也!覚えてるよね!?覚えてるんでしょ!?」
達也はじっと私を見て、サラっと言った。
「…悪いけど、全然覚えてない。」
本当に、他人を見るような目で私を見る達也。
やめて…
そんな目で見ないで…??
そんな他人みたいな目で私を見ないで!!
いつもの優しい目で私を見てよ…
「達也ぁ…!!」
吉沢くんと美香が病室をでていった。
真っ白な病室の中には、真っ白な達也と私の2人きり。
うつむいて、ベッドの隣に座る私を、達也は訝しげに見ながら言った。
「おまえ…オレの知り合い??」
何の感情もない声。
ほんとに、全部忘れてしまったんだな。と思った。
「…うん。私、達也の彼女だったんだよ??」
「彼女…??おまえが…??」
こくっとうなずく。
…ホントに、ほんとに私のこと忘れちゃったの…??
おまえなんて、言わないでよ。
まえみたいに、私の名前を呼んで??
あの笑顔で、私の名前を呼んでよ。
ねぇ?
あの日、約束したよね?
絶対にまた、戻ってくるって。
約束、守ってよぉ…
お願い…
帰ってきてよ…
達也…
なんというか…
終わり方が微妙です…