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四話 私と同じ転生者じゃないの?

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花の香りが鼻腔をくすぐる。それと同時に額にズキリと痛みを感じ、私はゆっくりと目蓋を開ろげた。

目の前に広がっていたのは……


「……知らない天井だわ」


なんて、おめでとうおめでとうなチルドレンの主人公のセリフを吐いて直ぐに飛び上がった。

此処はどこ⁉︎私、どうしてベッドに眠って……

額の痛みを感じながら私は記憶を辿る。

そうだ。私は魔族に襲われて、殺されそうになった時に仮面をつけた男に助けられて……

部屋を見回すと王宮にある部屋に似ていると思った。

すると、部屋の隅に誰かが立っているのが見えた。


「……メイド?」


そこに立っていたのはメイドだった。

黒髪のおかっぱ頭に新雪のように透き通った白い肌のそのメイドはまるで人形のように美しく、そしてまた人形のように目を閉じてそこにじっと立っていた。

すると、私が目を覚ましたのに気づいたかのようにメイドがゆっくりと目を開き、黒い瞳が私を捉えた。


「…お目覚めになられましたか?」


ペコリとお辞儀をする様はまるで王宮で働く侍女のように所作が洗練されていた。

という事は此処は王宮?でもどうして……?


「では、旦那様にお知らせして参ります」


と、メイドが部屋から出ようとしたので私は思わず彼女を呼び止めてしまった。

くるりと私の方に向き直る彼女に対し、何て声をかけたら良いか考えていると、彼女の胸元に何かの刺繍が施されているのが見えた。

アレは……名前?でも何で刺繍なんかを?

その瞬間、頭に痛みが走り、脳裏に何かの光景が過ぎる。


ーー分かったわ……貴女…名前は……


「ディ…アナ……貴女、ディアナというの?」


私は刺繍に書かれている文字を見てそう告げた時だった。

それまで見た目同様人形のように無表情だった彼女の目が大きく開いた。まるで何かに驚いているかのように。


「あ、ごめんなさい。勝手に名前を……もしかして、違ってた?」


「いえ、どうぞ私の事はディアナとお呼びください」


そう言った彼女はまるで天使のような柔らかい微笑みを浮かべた。

思わず見惚れていると、天井から奇妙な笑い声が聴こえてきた。


「ウケケケッ、あのディアっちが笑うなんてねぃ。嬢ちゃん、アンタ只者じゃないねぃ」


視線を向けると、そこにいたのは黒いローブを纏った男だった。

耳元まで裂けるほどに口角を吊り上げて不気味に笑う男は、サメのようなギザギザした歯を持ち、天井に張り付いて私を見下ろしていた。

そして、服の中からヒューヒューという不気味な音が漏れたかと思うと、男の腕がチラリと見えた。

腕が異様な形に盛り上がり、無数の口のような物が見える。

それを見た瞬間、私はこの男が人間じゃない事を察知した。


「魔族⁉︎いけない、ディアナ逃げて!」


私はディアナを逃そうとベッドから飛び降り、彼女を守るようにして男の前に立ち塞がった。

すると男のは下卑た笑みを浮かべながら天井からベッドの上へと降り立つと、ローブを脱いで見せた。

異形の姿を持つ男の身体は灰色の肌に無数の口のような物が腕だけではなく、身体中に存在し、それらが呼吸するかのようにヒューヒューと音を立て、手のひらにある口がガチガチと不気味な音を鳴らしていた。

男の姿に足が竦んだが、ディアナを逃さないといけないという思いから私は自分を奮い立たせる。

これでも冒険者として魔物とはそれなりに修羅場を潜ってきた自信がある。

あるけど、目の前の男は今まで対峙してきた魔物とは比べ物にならないほどのオーラを纏っていた。


「ヘェ〜、俺っちの姿を見ても気絶しない辺りは流石だねぃ。だけど、いつまで持つかねぃ?」


「クッ……」


額に嫌な汗が流れる。倒せないまでも何とかディアナが逃げるまでの時間を稼がないと……そう思った時だった。


「餓鬼丸、これ以上のソフィア様への粗相は許しませんよ?」


ディアナが私の前に立ち、鋭い目つきで男にそう告げる。

危ない!と、そう止めようとした時だった。男がそれまでの下卑た笑みとは違い、大口を開けて豪快に笑い出した。


「ウキャキャキャキャッ!冗談だよ冗談!本気にすんなって。おっと、来ちまったか」


と、部屋の扉がゆっくりと開かれ、鬼の仮面をつけた男が入ってきた。

男は私達を見るなり深いため息を一つついた。


「餓鬼丸、失礼のないようにと申し付けた筈ですが?」


「ケケケッ、挨拶代わりの軽い冗談だろ?何もそこまで…」


「………」


「……分かったよ、悪かった。嬢ちゃん、すまなかったねぃ。俺っちの名前は餓鬼丸。よろしくねぃ!」


仮面の男がひと睨みすると魔族の男は私に対して慌てて頭を下げてきた。

いったい何がどうなってるの?

状況がよく分からずにいると、仮面の男が柔らかい笑みを浮かべた。


「ソフィア様、仲間がとんだ失礼を。申し訳ありませんでした。私はこの館の主で、名を夜叉丸、紅 夜叉丸(くれない やしゃまる)と申します」


膝をつき、頭を垂れるその姿に私はどこか懐かしさを感じていた。けどそれより……


「紅…夜叉丸?」


仮面の男の名前を聞いて私は眉を寄せた。

まるで日本人のような名前。それに、男の格好はこの世界で見ない和装だった。

それに、さっきの魔族の男も餓鬼丸って名前だったし、もしかしてこの人は日本からの転移者、もしくは転生者なんじゃないかしら?だから私は尋ねた。


「貴方達、ひょっとして日本人?」


「ニホン…?聞いた事ないねぃ」


「申し訳ありませんが、そのような国は存じません」


え?違うの?絶対にそうだと思ったのに。

彼らの返答に何故か私はがっかりしてしまった。

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