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二話 私に貴族令嬢って無理なんじゃないの?

私の名前はソフィア・アイン・ベリックス。

このイグドラシルという世界のグランロードという大陸にある6つの国の一つ、温暖な気候と肥沃な土地が広がる赤の国『ヴルーム』において名家と言われているベリックス公爵家の長女。


私には前世の記憶がある。

地球という星の日本という国で女子大生をやっていた記憶だ。

ある日、交通事故に遭って命を落とし、目が覚めたらこの国の公爵令嬢ソフィア・アイン・ベリックスに転生していた……って、ラノベか!

それが私が前世の記憶を取り戻した時、最初に頭に浮かんだ言葉だ。

しかもこの世界、私が前世でプレイしていた乙女ゲーム『イグドラシルの聖女』の世界だった……って、ラノベか!

おまけに私が転生したソフィアは、ヒロインと攻略対象がくっつかないように数々のイベントでお邪魔虫をし、最終的には断罪されてしまうという所謂悪役令嬢なのだ……だから、ラノベか!

……さっきからそれしかツッコミしてない。語彙力欲しい。


お分かりいただけただろうか?

そう。私は前世で大学まで行ったとはいえオツムの方はあまりよろしくない。頭の回転だって早いわけではない。

何が言いたいのかというと、とどのつまりラノベによくある前世の知識を活かしてチート的な事がほぼ望めないのだ。

だってさ、これまたラノベでよくあるけど前世の世界にあった製品の精製法とか普通知らないよ!何なのあの人達⁉︎まぁ、私がそういうのに全く興味関心を抱いていないのが悪いんだけどね。

でも、自分が異世界…しかも乙女ゲームの世界に転生するなんて現実に思う奴なんているわけないじゃん!



時を戻そう。

『イグドラシルの聖女』は、学園に通うヒロインが様々な攻略対象と交流し、聖女の力に目覚め、悪役令嬢(ソフィア)が目覚めさせてしまった魔神を彼らと共に討ち倒すというストーリーだ。


ソフィアは自分の婚約者であり、攻略対象でもあるこの国の王子とヒロインが親しくしている事に嫉妬し、数々の嫌がらせをした事により卒業パーティーで断罪され国外追放を受ける。

そして、自分から何もかもを奪ったヒロインへの逆恨みが頂点に達し、何をとち狂ったか魔神の封印を解いて世界を破滅させようとしてしまう。

マジでなんてはた迷惑な奴なのソフィア(悪役令嬢)

そして、ヒロインに嫌がらせして断罪からの国外追放ってなんてテンプレな展開……っていうのはラノベや漫画によくある設定で、実際の乙女ゲームって悪役令嬢が出てくる物なんかなかったりすのよねぇ。

元々は主人公のライバルポジションにいた令嬢キャラが何やかんやを受けて悪役令嬢という形になったみたい。

何やかんやってどういう意味かって?何やかんやは……何やかんやよ!


で、この『イグドラシルの聖女』は、とあるゲーム制作会社が「そう言えば、悪役令嬢モノのゲームって実際無いよね?じゃあウチで作っちゃう?」みたいなノリで制作されたモノだ。

おまけにそのゲーム会社は乙女ゲームを作るのは初めてで、ストーリーや設定をどうするかが難航し、その果てに自社で作っていたカードゲームとそのアニメの設定を盛り込んでくるというやらかしをしてきた。

アタシはそのカードゲームをやってたし、アニメも観てたからネタゲーだなぁと思いながらプレイしてたけど、一般の乙女ゲーユーザーには受け入れられないだろうと思っていた。

特に攻略対象の一人、白の国の王子のルートでは乙女ゲームではありえない攻略対象とライバル令嬢をくっつけるのがトゥルーエンドとされる超展開ぶっ込んでくるし!

でも、この白の王子ルートが意外にもユーザーに受けてしまった。

とんでも設定とは裏腹に、王子とライバル令嬢の切ないラブストーリーな展開に加え、それを後押しする為に奮闘する主人公の姿が感動を呼んだのだ。

かくいうアタシもこのルートは何度もやって泣いてしまった。





時を戻そう。

3歳の頃に前世の記憶を取り戻した私はそこから一心不乱に魔法の勉強を始めた。

この世界での魔法は火、水、風、土、闇、光という6つの属性に分けられ、人はそのどれかの属性の魔力を宿して生まれる。

そして、それとは別に魔を打ち払うと言われている『聖』属性というのが存在するけど、その保持者は滅多な事では現れない。

普通は一人一つの属性の魔力しか宿らないけど、中には複数の魔力を宿して生まれる者がいる。

そして私ことソフィアは、その中でも超稀少とも言える6つの属性の魔力を宿していた。

ただ、どんなに優れた力を持っていても、それを使わなければ宝の持ち腐れ。

ゲームのソフィアは、自分が特別な存在だという事に胡座を掻き、父親がこの国の宰相である事を笠にすっかり絵に描いたような我儘娘に成長し、あまつさえそれを利用してこの国の王子と無理矢理婚約までしてしまった。

でも結局、何の訓練もしてこなかったからあっさり周囲に見限られてしまった。自業自得だよね。

だから私は幼い頃から魔法の訓練に励んだ。そうすれば魔力も高まり、色んな魔法が使えるようになるから。

前世でも頭を使うより身体を使う事が好きだった私は、ソフィアの魔法の才能もあってかメキメキと魔法の腕を磨いた。

この世界の魔法というのは、術式がどうのこうのというよりは、術者のイメージ力が必要とされているのでバカな私にも難なく使えた。

いやぁ、作品によってはまるでコンピュータープログラムみたいな感じに術式組まなきゃいけないやつもあるから焦ったわ〜!

大人達からは神童と言われる反面、どうしても前世の自分に引っ張られてしまうので何というか貴族令嬢らしからぬ行動が目立ってしまった。



それは初めて貴族のお茶会に参加した時の事。

私は堅っ苦しい雰囲気にげんなりしていると、とある貴族令息達が一人の貴族令息を苛めているのを目撃した。

どうやら下級貴族の子息で親の力関係で逆らえないみたいだった。

見るに見かね、見た目は子供、頭脳は大人な私はとりあえず子供のする事だからと彼らに『苛めカッコ悪いよ?』と諭すように言った。

すると、「おんながでしゃばるんじゃねぇ!」とリーダー格の貴族令息が私を思い切り突き飛ばした。

その瞬間、プツンという音と共に私は切れた。

自分で言うのもなんだけど、前世でも私は口より先に手が出てしまうタイプの人間だった。

だから「目ぇ食いしばれ!」と怒声をあげて、リーダー格の貴族令息の額に思い切り頭突きを喰らわしてやった。

しかし、いくら名家の貴族令嬢と言えど、人に手を出しては問題になる。だけど、彼らが苛めを働いていた事と、私も一応突き飛ばされたという事、それから子供同士の喧嘩という事でその場は丸く収められた。

そしてこの一件以降私は陰で『お転婆令嬢』、『激突姫』なんて呼ばれるようになっていた。

『頭突き』じゃなくて『激突』なのは何故?

まぁ、前世でもプレイスタイルから『激突娘』なんて呼ばれてたけど、まさか今世でも呼ばれる日が来るなんてね。




時を戻そう。

ラノベだと悪役令嬢に転生した人のだいたいが断罪阻止しようと動いていたけど、私は違う。寧ろ国外追放ウェルカムって感じ。

だって、貴族の義務とか面倒くさくない?

そういったのに縛られたくない私は国外追放を受けて自由に外の世界を見て回りたい。だって、せっかくゲームの世界に転生したんだもん!

前世のような文明の利器はないけど、それとは別の未知なる世界が広がっている。それを考えるとワクワクしない?

もしかしたら、前世にあった文明の利器を作り出せるヒントが見つかるかもしれないし!

だから私は積極的にストーリーに介入し、そして断罪されて国外追放を受ける。

全ては未知なる冒険の旅に出る為に!






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