家族紹介編
自分(または家族内)の常識と、他人の常識に差がある事って、あるよね!
皆さん、おはようございます。
水谷華、女子高生です。今日は、なんてことない我が家の一コマをご紹介します!
私からしたら本当にになんでもない日常なんですけど、他人からみたらちょっと変なのかな?
…主にパパの言動が。
まず簡単に家族構成。
我が家ははパパと私の二人暮らし。
ママは10歳の時に病気で亡くなりました。
パパは昔から愛妻家兼、娘バカだったけど、ママが亡くなってからもそれは健在。記憶にあるママは私にはいつだって優しかったけど、パパには割とあっさりしていた気がする。
2人から愛情いっぱい注がれて育ったせいか、子供のころは「私の天使」が私の名前じゃないかって本気で思っていた。常識人な周り(家族以外)のおかげで、まっとうな一般知識を身に着けられた事は、本当にありがたいと思う。
我が家は2階建てで、二人暮らしにはちょっと広いけど、パパは「お友達が遊びに来たらお泊まりできるよ」って言ってくれて、実際にお友達を呼んだこともある。「将来的に二世帯で暮らすには…」とか真剣に言っていたけど、よくわからないから放置しておいた。
ママが亡くなってすぐの頃は寂しくてパパと一緒に寝ていたけど、さすがに今は自分の部屋で寝起きして、着替えをしてからリビングに降りる。
自分の部屋で寝るって言った時のパパの動揺といったらすさまじかったけど、中学生になったら自分の部屋で寝るのって、当たり前だよね?
「おはよう、華。今日もかわいいね」
「おはよう、パパ。パパは今日もゆるふわだね」
リビングに入るなり抱きしめてきた柔らかい笑顔の男性に挨拶を返す。これが私のパパ。
一度ぎゅっと強く抱きしめられた後、「今日はスクランブルエッグだよ」って離れ際頭を撫でられるけど、私の目線はとっくにテーブルの上。今日も美味しそう!
椅子に座ると、ちょうどパパがホットミルクを目の前に置いてくれて、今日もサービスはばっちりだ。
「いつもよりちょっと熱いから、冷まして飲むんだよ」
染めずとも明るい茶色の髪が首を傾げた瞬間にふわりと揺れて、たれ目がちのはちみつ色の瞳が愛情たっぷりにこちらを見つめる。出勤前のパリッとしたシャツの上に淡いピンク色のエプロンが妙に似合っているのが、我が父ながらなんとも言えない。いや、見慣れただけなのかも?
「「いただきます」」
二人で一緒に手を合わせて声をそろえて食前の挨拶。
食卓はわりと静かなほうだけど、パパの視線だけはいつだってうるさい。ちらりと目線を向ければバチッと効果音が付きそうにかち合った。「美味しい?」、「火傷してない?」、「今日もかわいいな」って目線だけでわかるくらい、いや、むしろ視線で焼け焦げそう。でもいちいちそんな視線気にしていたらキリがないから、サクッと食事を終わらせて「ごちそうさま」。もしかしたら、ママも私みたいに思っていたから、あんな対応してたのかもしれない。
空いたお皿を持って立ち上がると、それを見たパパが慌ててパンを詰め込もうとするから、今度は私がコーヒーを入れてパパの目の前に置いた。
「慌てなくていいよ。今日は私がお皿洗うね」
キッチンにあるお揃いのエプロン(ただし私のは水色)を身に着けながら言うと、パパは感激したように目を潤ませて頬を染める。…いや、誤解を招きそうな表現だけど、頬が赤いのも目が潤んでるのも、無理やり口にご飯の残り詰め込んで苦しいからだと思う。慌てなくていいって言ったのに。
「今日帰りに友達とお茶してくるから」
「待ちなさい。パパはそんな話聞いてない。誰と何時にどこに行くんだい」
洗い物を終えてエプロンを外しながら何気なく言うと、コーヒーを飲みながら読んでいた父の新聞がブワサァッという音共にテーブルに沈んだ。
いや、だから今言ったんだってば。そーゆー反応するのがわかってたからギリギリまで言いたくなかったの!目をかっぴらいたその顔ほんと怖い。普段柔和な表情が多いだけに、真剣な顔をすると裏のお仕事してそうな顔になって恐ろしいのでやめてください。
「ともちゃんと駅前のスタバ。もしかしたら別の子も来るかも」
ともちゃんとは家にも泊まりに来たこともある仲の良い友人の一人だ。ともちゃんの名を聞いて緩んだ父の口元が、後半を聞いてまたへの字になった。
「別の子とは誰だい?可能性のある男どもの名前を挙げるように」
「男どもって…」
そんな、ただの友達だし、しかも男友達なんて一言も言ってないのに!
「もー!かもしれないってだけでしょ。学校行くからね!」
「あ、華!待ちなさい!」
これが始まると長いのはわかりきってるから、用意していた通学用カバンを掴んで、仏間に逃げ込む。
「ママ、行ってくるね!」
いつもより駆け足に、やさしく微笑むママの写真に挨拶して玄関に向かうと、そこでパパに追いつかれた。
あーあ!
「ほら、忘れ物だよ」
追いかけてきたパパの手には私のお弁当。
あ、お弁当忘れてた!
パパの顔はやっぱり納得してなかったけど、一応は飲み込んでくれたらしい。
「ありがと」
お礼を言ってお弁当をカバンに詰め込むと、しっかり靴を履いた。
「気を付けていっておいで。私の可愛い天使。」
「パパも良い一日をね」
ぎゅっと抱きしめられて、頬に軽いキスが落ちる。私もパパの頬に同じようにチュッと返して、手を振った。
そういえば、前にともちゃんが泊まりに来た時にこれ見て驚いていたの、なんでかな?
真っ赤になってて可愛かったな~。なんでか知らないけど。
なーんて事を考えながら、学校への道を急いだ。
これが、我が家の一日の始まり。
ちょっとパパが親バカすぎる気がするけど…
別になんてことない、普通の日常でしょう?