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黒の王子、灰の王子  作者: アロエ
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王妃の部



国王と上の息子が倒れたと知らせを受けた王妃は優雅に過ごしていた茶会の最中にも関わらず顔から色をなくし椅子を倒す勢いで立ち上がると狼狽え、慌てた様子で自室へと戻り気が狂ったように世話を焼くものらを怒鳴りつけ、王家のものとして借り受けた側仕えや護衛の兵を退け自身の家からともにとしてきたものらを掻き集めそのまま王城を抜け出そうとまでする騒ぎを起こしました。


はたから見れば彼女こそ犯人と言えるような怪しい行動に当然ながら国を司る大臣や兵も簡単には彼女を放つことはなく、それを受け彼女は怯えたようにガーネットの目を彷徨わせ、濃いルージュの引かれた唇を戦慄かせ、震えた声で訴えたのです。



「あの方が殺されたなら次に狙われるのは私。私なんですもの!私はあの子たちに許されたと思っていたけれども、そうじゃなかった。イヴェニルが帰る前に身を隠さねば私は、私はきっと殺されてしまう!ああ、ああ許して、私はそんなつもりじゃなかったの!助けて、許して!」



そんな言葉を放ち己の産んだ子どもたちに怯え発狂したような言動を続ける彼女を、国の者たちは困惑しながらに重要参考人として捉え貴族専用の牢にと押し込めました。


生死の境を彷徨っているも比較的助かる見込みのあるオベラディオの意識が戻るまで。もしくは国外に出ているイヴェニルの帰還まで安全を確保しまたおかしな行動をとらぬよう、見張る役割もありましたが夜も明けぬ内に王妃は首を吊って死んでいるのが見つかりました。


ドレスの裾を裂いてそれを首と牢屋の少し高い小窓に括り付け。見つけたのは番兵でしたが(かつ)て美貌を謳われた面影もなく一晩で何十年と年をとってしまったかのように皺や白髪を湛え、悲壮な顔を晒して逝った王妃に悍ましさと言いしれない恐怖を覚えて職を辞しました。


彼もまた王妃の死に絡んでいたのではと取り調べを受けることとなりますが、王妃の死は彼女自身が選びしたこと。彼は長く長く拘束されましたが罪も何も負うことはなく自由放免となり故郷への帰路に発ちました。



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