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6,どうやら体育祭があるらしいです

教師になってから2週間、季節はすでに秋を迎えていた。

剣術の授業中、その事件は起きた。


「何度も真正面から切り込んで、馬鹿かお前は?」


「くそっ!全然当たんない!!」


ツーマンセルで切り掛かってくる生徒。

片方は女子、もう片方は男子になっている。

この組み合わせは適当にくじで決めたが、男子の方は女子に気があるのか、見てくれだけはいい感じの大雑把な攻撃を仕掛けていいところを見せようとしている。

けっ!気に食わん!!



「女子にいいとこ見せたいんだったら、このくらい出来るようにならねぇとな!」


剣を手放し、縮地法で一気に距離を詰める。

気に食わない青春野郎は真心30パーセントのボディーブローと決めているのだが、今回はちょっと格好をつけることにする。


男子生徒の剣の柄の部分を握り捻る。

するとあらおどろき!今まで剣を持っていた男子生徒の手には何もなく、こちらの手には剣が!!

太刀取りという技法で、普段ならまず使わない、見栄えだけはいい技。


「ほーれ、どうすんだ?あ?」


男子生徒はオロオロして作戦を必死に考えている、女子生徒は男子生徒の指示待ち。


「はい時間切れ。ふんっ!!」


真心30パーセントのボディーブローが炸裂。

男子生徒はうずくまって震えている。


それを横目に生徒たちに声をかける。


「おーいそこまでー。一旦集合してくれ〜。」


生徒たちが集まったのを確認し、総評を行う。


「まず男子。女子にいいとこ見せたいのはわかるが、何でもかんでも技の見た目を意識しすぎだ。形を覚えるのは大切だが、それ以前に体の動きを意識しろ。お前らが思春期なのはわかったし、我流に改造したくなる気持ちもわかるが、そういうのは自分の家の鏡の前でやってくれ。」


「そんなんじゃねぇし!」


「そうだし!ちゃんとやってるし!」


「出来てねぇから言ってんだどアホが!」


たしかに、なんか見た目とか気になるのはわかる。

動きはかっこいいほうがいいよな。

俺の時も、必死に自己流の技を考えて、校舎裏で叫んでるやついたもん。


「女子も女子だ。いつまでたっても男子のフォローに回ろうとしやがる。」


「ですが男子の方が攻撃力は高いのですからフォローに回るべきではないんですか?」


そう噛み付いてきたのは嘲笑金髪娘ことイリス。


「あほか。戦場は平等だ、男だから先に殺すとか、女だから後で殺すとかはない。同じだけ死ぬ確率が転がってんだ。いざって時まで男に頼ってどうすんだ?戦場は社交パーティーじゃねぇんだぞ?リードしてくれる男なんてろくにいねぇよ。」


たしかに女性が男性のフォローをするということはある。だがそれは、男性が女性よりも強く、決定力に長けている場合だ。女性が強ければ男性はフォローに回る。いつでもフォローに回ろうとするやつほど早死にするのは戦場におけるセオリーだ。



「だいたい甘いんだよ。戦闘訓練中にイチャコライチャコラしやがって。お前ら体育大会で痛い目見るぞ?」


そう言うと、生徒たちは頭に?浮かべた。


「何で体育祭で痛い目見るんですか?」


「?何でって、体育大会は2クラス合同の同時演習だ。魔獣を解き放って四時間ぶっ通しで戦い続ける。そんで四時間たったらそこから六時間かけて行軍訓練して、そんで馬車で帰ってくる。この悪魔のような訓練を体育大会と言うんだ。」


生徒たちは顔を見合わせて…



「それなくなりましたよ?」










「リゼリア先生どういう事ですか?」


授業が終わり次第、リゼリアに詰め寄った。


「まてまて何のことだ?」


「合同演習だよ!!何で無くなってんだ!」


「あぁー…」


リゼリア曰く、



『金がない、生徒が危ない、時間と労力がかかり過ぎる。だから無くなった。』



いやいやいやいや。

金がない?

学校綺麗になってんじゃん!!!!

生徒が危ない?

騎士道ってそういうもんでしょ!?!?!

時間と労力がかかり過ぎる?

お前ら面倒くさくなっただけだろうがぁぁぁ!!!!



「断固抗議します。」


リゼリアは呆れたように返す


「なぜそこまであの演習にこだわる。お前も大嫌いだっただろう。」


あぁ確かに大嫌いだ。

あれをやらせる教師陣は悪魔か何かに憑かれてると、本当に疑った程度には嫌いだ。

だから…

だからこそ!!


「だからこそあいつらにやらせたいんじゃないですか!!!」


「最低だな。」


「だって俺はやったのにあいつらやらないとか、なんかムカつくじゃないですか!」


「それを何というか教えてやろう。私怨と言うんだ。」


天を仰ぎ開き直ってみる。


「そうですよぉぉぉ!!私怨ですよぉぉぉ!!何が悪いんですかぁぁぁ⤴︎」


「うるさいぞ。ちゃんと代行措置は用意してでだな…」


リゼリアの机に手を思いっきり叩きつける


「聞きましたよ!体育祭とか言うやつでしょ!?」


「おお、聞いていたか。」


「ぬるすぎでしょ!?なに?あのぬっるーい競技の数々は!?パン食い競争?初等部かっ!?」


「まぁ確かに甘くはなったが、昨今は騎士の需要が少なくなった影響で保護者から、学生としても生活させてほしいとの要望があって、大幅な見直しがあったんだよ。」


とっさに中指をたてて反論する。


「こないだ俺に戦場に戻れとかかっこいいこと言っといて、需要が少ないだぁ?都合のいいことばかり言いやがって。ちくしょう!こうなったらあいつら引き連れて西の魔獣林にでも潜りに…」


「何だこの指は?」


べきっという音ともに指があらぬ方向へ曲がる。


「いってぇぇ!離して!折れてる折れてる!!」


リゼリアは存外素直に手を離した。


「勝手に魔獣林に連れて行ったりするなよ?お前が誘拐犯として指名手配に合う分にはいいが、学校に迷惑をかけてみろ。ただで死ねるとは思わんことだ。」



リゼリアの殺意のこもった視線に冷静さを取り戻す。


「わかったわかった。ならせめて、騎士科同士のエキシビションマッチにしてください。あと魔術の使用の許可も。」


「それくらいならできるかもしれんが…何をする気だ?」




ニヤリと笑う


「決まってるでしょ。優劣をつけるなら褒美と罰がないとつまらないでしょう?」














翌日、魔術の授業の時間。

いつもなら術式の判別をやる所だが、今回はカットした。



「おはよう諸君。」


「どうしたんですか急に改まって。気持ち悪いですよ?」


「何かいいことでもあったんですか?」


「バカッ!あの笑みはやばいことを考えている時の笑みだ!!どうせろくなことじゃない!」


おいおいずいぶんと滅多なことを言ってくれるじゃないか。

先生傷ついちゃう。



「お前らがぬっるーい体育祭とやらに対していかに楽しみで、甘くイチャイチャ出来るイベントなのかはよくわかった。」


「そんなんじゃねぇよ!」


「確かに楽しみだけどそんな風なイベントじゃないわよ!」


口々に反論を述べる生徒たち。


「ほほぉーう?そうなのか?別にイチャイチャイベントというわけではなく、あくまで楽しく、かつ真剣に勝ちに行きたい。そう言うの心意気なんだな?」


そうだそうだと肯定を示す生徒たち。


自然の口がにやけてくる。



「なるほどなるほど。確かに勝負事に対して真剣になるのはいいことだ。騎士としても、依頼された仕事に対して、結果で返すのは常識だからな。」


「そこでだ…」




「俺はリゼリア教頭に頼んで、今年の体育祭は騎士科は、2クラスによるエキシビションマッチ。いわゆる見世物試合をしてもらうことにした。」


生徒たちがざわめき出す。


「さらに魔術の使用あり、特別に用意された競技に臨んでもらう。」



さらにざわめきは大きくなり、そのうちの何人かは気づき出す。



「これはいわゆる、全校に対しての騎士科2クラスの格の見せ合い。負ければもちろん。」



「罰を受けてもらいまーす♡」


「「「「「嫌だぁぁぁ!!!!!」」」」」


「負ければ俺と一緒の放課後居残りレッスン三時間コース3週間だ!勝てば…まぁなんか考えとく。」


「横暴だ!!」


「この鬼畜め!!」


「人外!!」


「ろくでなし!!」


口々に罵詈雑言を吐き出す生徒たち。

貴族や王族の紳士、婦人には見えませんなー。


「何とでもいえ!騎士道に入ろうってのに、普通科の奴らみたいに青春エンジョイできると思ったら大間違いだ!!!!せいぜいあがいて勝率を上げるだな!!」





高笑いと断末魔が講義室に響く。


体育祭まであと3週間。


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