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4,魔術の授業をしてみました

自己紹介をした。

生徒たちは口々に嘘だ、生意気だ、おこがましいだ、浅ましいだと罵ってくれたが、リゼリアの口添えもあって最後には渋々信用してくれた。


個人的には渋々なのが理解できない。


色々あったが言うことは聞いてくれるようなので普通に授業をすることに。

あの地獄のような剣術の授業のせいでビビりまくっているのか、授業中で教室に入った瞬間、生徒たちが20センチ後退したのはかなり傷ついた。

極め付けは、


「誰を被験体にするんですか?」


恐る恐る切れたこの言葉。

俺はマッドではないぞ!

どうやら怖がられていることは嫌という程わかったので和ませる感じで授業を進めよう。


「お前らが俺を怖がっているのは痛いほどわかった。そこので、そのイメージを払拭しようと思う。」


そう言って片手を前に出す。


魔術において座標とは大きな意味を持つ。

手を前に出すのは距離感をつかむためでもあり、魔術の作用点の確認にもなる。


指の先に魔術の燃料となる魔力を収束させ、それぞれ元素を宿す。

小指に火、薬指に風、中指に雷、人差し指に水、親指に無の元素を宿し、小指から人差し指に純粋な元素を顕現させる一式の術式をを構築し、親指には形状操作の多元式の術式を構築する。


あとは魔力量を調整し、形状操作を行うと…




掌に4色の花が咲いた。



「「「「「おおおお!!!」」」」



生徒たちの間で歓声が上がる。

いや〜今までのこともあって少し嬉しいね。

そのまま形状を蝶に変化させ、空に向けて飛ばす。術式に込められた魔力が切れすぐに消えてしまうが、それもまた幻想的だ。


「どうだ綺麗だったろ?」


生徒たちは口々に感想を述べる、綺麗だとか、どうやったんだろうかとか、あいつがやると気持ち悪いとか。

ん?

おい誰だ、俺がやると気持ち悪いって言った奴。

まぁいい


「さて、授業に入ろう。まず今日は術式についてやっていく。このクラスは20人いるわけだが、今から順に系統を聞いていく。適合系統で手を上げてくれ。」



適合系統を聞いたところ、三系統適合者が三名、二系統適合者が十二名、一系統適合者が五名だった。



「ほうほう。三系統適合者が三名か。」


「先生、三系統だと何かいいことがあるんですか?」


真面目そうな顔をした眼鏡をかけた生徒が尋ねる。


「単純な話だ。適正系統が多ければ、戦術の幅が広がる。」


使える魔術の多さとは、戦場での生存率を上げる方法の1つだ。

使えて困る魔術はない。


「1つだけしか適合系統がないとダメなのかな…」


何処からかそんな声が聞こえた。


「そんなことはない。と言うよりも一系統だけの騎士に限って猛者が多かったりするものだ。奴らはその1つを磨き続けた、言ってみればプロフェッショナルだ。使い方も、弱点と長所に対する理解や、術そのものの練度も、他の比にはならない。」


言ってしまえば他の系統にかけている時間を、1つの系統に当てているのだ。中には適正であるのにそれを放棄して、一系統だけを極めるなんて奴もいる。


「三系統の奴らは、魔術の授業の使い方が大切になる。使える系統が多い分、しっかりと目標を決めなければならないからな。」



三系統だった三名は嘲笑金髪娘ことイリスと、大人しめなイメージのルル、そしてガキ大将のアレスだ。

それぞれ緊張した面持ちでこちらを見る。


「なぁーに心配すんな。俺も似た様なもんだったから勝手はわかってるし、いざとなればリゼリア先生がいるからな。」


「結局人頼みですか…」


呆れた様にアレスがつぶやく。

だってしょうがないじゃん。

リゼリアが俺に魔術を教えてくれたんだもん。


「先生って何系統だったんですか?」


ルルが聞いてくる。


「ん〜五系統。」


「「「「え??」」」」


クラスから疑問の声が上がる。

まぁそうだよね。

本人である俺だって驚いたもん。



「じゃぁ問題だ。俺がさっき作った花には何種類の系統が使われていたと思う?」


「「「「五」」」」」


クラス全員が答える。


「正解。じゃあ次だ、俺の使った術式の式番号は何番だ?答えられる人〜?」


これには少し悩む様子。

おそらく無系統の多元式『形状操作』は分かるだろう。特徴的で覚えやすい魔術の1つだ。


「おそらく無系統は、多元式でしょう。他の式番号は…顕現された元素の様子を見るに…」


眼鏡をかけたザ・真面目な女子生徒がそう呟き、議論が周りに広がっていく。

いいところまできてるぞ。

ここでヒントを与えることに…


「さっきの魔術で俺は必要なだけの元素を顕現させた。魔術において必要のない情報は結果に対し悪くしか影響しない。このことを踏まえると…」


「一式…」


誰かがそう呟いた。

頷いて肯定を示す。


「その通り。これをすぐにできる様になってもらう。術式の見極めは戦闘において重要な技能だ。」


アレスが質問する


「ですが先生、術式が分からなくてもジャミングはできますよね?それって知る必要はないってことでは…」


「これだからアレスは…」


ここで1つ煽りを入れる。

理由?

特になし。


「なっ!?」


「期待通りのリアクションをありがとう。だがいい質問だ。たしかにジャミングはできるが、相手の戦略は読めない。」


「「「「?」」」」


理解してない生徒がいることを確認して説明に入る。

意外と先生らしいことができてることに若干の喜びを感じる。


「例えば剣術の授業のとき、イリス、お前になんて言ったか覚えてるか?」


「五式は火力が高いが式の構造が弱いから、数人でダミーを張ってジャミングを防ぐのが定石だと…」


お、意外と覚えてんじゃん。

嫌いな奴の話は絶対に聞かないとか言うタイプだと思ってたのに。


「その通り、この場合逆に考えれば五式を使う奴には仲間がいると言うことだ。この特性を考えると、こいつらは五式に特化した部隊だと考えられる。それが効率的だからな。となると懐に飛び込めば、高火力の五式は使いにくくなるのでこっちも同数で懐に飛び込んで切りにかかるのが適策となるってわけだ。」


魔術を使った戦闘は相手との読み合いだ。

何をどう使ってくるか、それを知れば活路となり、また知られれば隙となる。

偽装と読み合いの魔術戦闘において、魔術を読みの速さは割と馬鹿にできない。その分勝利が近くのだから。



「こんな風に戦術を読み解く鍵となるのが術式の解析だ。これを戦闘中にやるのだから猛特訓をするしかない。」


なるほどと頷く生徒たち。



「それからもう1つ。イリスが俺に魔術を打つときに剣を手放したな?これからは剣を持って魔術を発動してもらう。」


「ですがどうやって…」


「今から説明する。」


そういって黒板に剣と、それを持つ手を描く。


「通常、魔術を使用するとき、作用点は手を起点にする。」


指に魔力を収束させ火の元素を宿す。


「しかし戦闘中いちいち剣を手放してちゃ戦いどころの話ではない。」


指の魔力を解除してカタナを抜く。

そしてカタナの切っ先を作用点に魔力を収束させ、火の元素を宿し、顕現させる。


「こんな感じで作用点を自分の剣の先に指定して魔術を構築する。こうすると手を離さず、魔術を行使できるってわけ。」


なるほどと頷く生徒と、悩ましげな表情を浮かべるのが半々。


「今悩んでる奴はおそらくだが魔術をある程度習ったやつなんじゃないか?」


生徒たちが頷く。


「魔術の作用点を最初手で教えるのは、手というものの長さを感覚で理解しているからだ。どこまでなら届くとかだいたいわかるだろ?だから作用点で教えてるんだよ。」


なるほどーと頷いてくれる。

こいつら意外と素直だぞ?



「まぁ今日は初回だ。ここで講義は終了。ちゃんと復習しとけよ〜。」


名簿を持ってひらひらと手を振って教室を出る。

意外とちゃんと授業ができたことに安心感を得る。


教室を出ると、リゼリアが待っていた。


「昼食を食べに行くぞ。」


うぇぇー

何が悲しくてこんな鬼教師と飯を食わにゃいかんのだ。


「拒否権はない。無理矢理にでも連れて行くからな。」


横暴だ。

許されざる悪に立ち向かうこともできず、俺はリゼリアに連れられて昼食を取りに行った。

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